東リベのタイムリープってどうなんですかの時間

さてお久しぶりの考察タイムです。

今回はタイトル通り、一年前に完結した『東京卍リベンジャーズ』におけるもっとも重要な“タイムリープ”について考えていきます。
いまだに読み返して「ここはアツいな…」とか、「当時の流行りって確かこうだったよな…」と振り返る彼らとほぼ同期のオタクですが、同時に「ここはどうしてこうなったの?」と設定厨が暴れだす回です。

なおコミックス最終巻までのネタバレを多く含みますので、アニメ派の方は回れ右でよろしくお願いします。文句言わんといてや。





まずはこの東京卍リベンジャーズ(以下、東リベ)における基本的なタイムリープに関して、みんな大好きWikipediaさん“タイムリープ”より抜粋。

・time leap=直訳で「時間跳躍」
・1995年の小説『タイム・リープ あしたはきのう』では「自分自身の意識だけが時空を移動し、過去や未来の自分の身体にその意識が乗り移る」と定義
→「タイムリープ」において有名なのは『時をかける少女』だが、この作品は“身体ごと”時間を跳躍する、いわゆるタイムトラベル・タイムスリップ…簡単に言ってしまえば現在も放送中のアニメ『ドラえもん』のタイムマシン、あるいは1985年の洋画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』におけるデロリアンを利用し、のび太やマーティが過去や未来へ行くことと同義である。

ここで大事なのは、“過去や未来の自分に意識が乗り移る”というところ。

さてここからは肝心な本題である東リベのタイムリープに関する設定を書いていく。

① タイムリープの能力保持者(以下、タイムリーパー)は“やり直したい過去”の自分に意識が乗り移る
② 現代へ戻るためには、初回のタイムリープ時に設定された“やり直したい過去”における同じ願いを持った者(以下、トリガー)と握手しなければならない
③ また、2度目以降のタイムリープをするためには②でトリガーとして設定された人間と握手しなければならない

以上の3つが基本要項となる。
また、それぞれの要項における細かい前提条件がある。

▼タイムリープ能力を得るための条件
① タイムリーパーから譲渡される
② タイムリーパーを殺すと能力が自動移行する

この①は主人公である花垣武道、②は佐野真一郎となる。また、特殊な例として以下のように

③タイムリーパーが死ぬ間際任意の譲渡(①)をトリガー相手に試行し、同時に施行された次代タイムリーパーが先代タイムリーパーへ無意識の譲渡(①)あるいはトリガーポイントとして設定する

というものがあった。
この結果、互いに能力を譲渡し合うという形=どちらも保持し合うという形となり、作品のいわゆる「最終軸」に双方がタイムリーパーとして過去へ戻ることができた、とする。

なお、初回タイムリープ(現代→過去)時の発動条件として、自殺しなければならない。自殺=自分を殺すことにより、自分へとタイムリープ能力の譲渡が自分へ行われる。
→トリガーが設定されない限り、自死し続けることによってタイムリープし続けることができる可能性がある。(ホームレスはこのパターンだったんじゃないかな)

▼トリガーとして設定されるための条件
・タイムリーパーと同じ願いを持つこと
→佐野真一郎と明司春千夜であれば「佐野万次郎を助けたい」から新たに設定された「佐野万次郎と仲良くしてほしい/仲良くしたい」という願い
→花垣武道と橘直人であれば「橘日向を助けたい」
→花垣武道と佐野万次郎であれば「きみ/おれを助けたい/助けてほしい」
→佐野万次郎と花垣武道であれば「武道/万次郎に生きてほしい」という互いへの願い(※これはかなりイレギュラー)

なお、このトリガーは「願いが達成した」瞬間に役目終了する。
→ここでのポイントは三途春千代がトリガーとしての役割を終了していないこと(後述▼黒い衝動について)

現代を銃身、タイムリーパーを弾丸、同じ望みを持つ者をトリガー(きっかけ)として目標の過去(的)へ

?タイムリープにおける疑問点
☆花垣武道の初回タイムリープ時、“千堂敦によって線路に突き落とされている”。これは殺人によって②の譲渡条件クリアにならないのか?
 おそらくこれはならなかった。はたから見れば“投身自殺”であり、また死亡に際する直接的な原因として“電車による轢死”の為、②の譲渡条件に至らなかったとする

☆稀咲・鶴蝶による銃撃によりその世界線では死亡が確定するが、能力は鶴蝶へ自動移行されないのか?
 おそらく、される。だが花垣武道が既にタイムリープしていることに加え、鶴蝶が自死を選ぶことはない(し、黒川イザナが命じるとも思えない)ため、タイムリープすることなく過去が改変された

☆ボウリング場で佐野万次郎に撃たれたのち(この時点で重傷)、投身自殺を試みた佐野万次郎が新たなトリガーとして設定され、タイムリープしたのはどういうこと?
 この後の過去において、タイムリーパーである花垣武道の直接の死因はおそらく銃創からの失血性ショック死。
 そのため②の自動移行が発生するがその直前に既に先代タイムリーパーが過去へタイムリープしており、その後万次郎も転落による頸椎あるいは頭蓋骨折により死亡。
 中途半端に継承された結果が「来たか」というセリフにつながるのではないか?

☆タイムリープ後の肉体が仮死状態となる、という設定は何だったのか?
 これはおそらくタイムリープ直後~過去が改変され始めるまでの間のことではないだろうか。
 というのも過去→現代に戻ってくるまでの間に花垣武道が反社東京卍會の幹部になっていたり、佐野真一郎が過去→現代に戻るまでの間にS.S.MOTORSに出勤していたりするので。

 橘直人によるタイムリープ後の報告で「仮死状態になる」ということが判明したのは、現代に影響のない範囲でしか改変をすることができなかったことによる、同現代軸への帰還が理由と推定。

☆上記を踏まえて過去が改変されて現代に戻るまでの間、花垣武道や佐野真一郎はどうなっていたのか?
 これもあくまで推定だが、元人格に類似する人格が形成されて「最も花垣武道/佐野真一郎に近しい行動・発言をする」ようになっているのではないか

?トリガーにおける疑問点
★トリガーに記憶はあるのか
→まず前提としてトリガーに設定された人物において現代→過去改変→現代の流れでタイムリーパーが戻ってきた際、記憶にずれが生じる。

★トリガー以外に過去改変の記憶が引き継がれることはあるのか
→例を挙げるならば松野千冬。可能性としては「自らタイムリープという超常現象に気づいた者」は、過去に改変されてきた世界が、バグとして夢などに現れるのではないか。
→同様に、今牛若狭。三天戦争後に佐野万次郎に対して佐野真一郎がタイムリーパーであったことを告げているが、佐野真一郎のトリガーは三途春千代であるため、前述した「自らタイムリープと言う超常現象に気づいた者」である可能性が高い。なおこの記憶の適用は、タイムリーパーであるという確信を持った佐野真一郎が生きている間のことに関してのみと思われる。

★トリガーはタイムリーパーが過去へとタイムリープしたことを感じ取ることができるのか
→おそらくこれは違う。佐野万次郎が気づくシーンの直前のタイムリープは特例パターンであったため、リープの際に花垣の意思として何かしら佐野万次郎に感覚として影響が出たと思われる
※トリニティランドにて龍宮寺堅が花垣武道と瓦城千咒の目の前に現れたのを目撃した直後、佐野万次郎が「嫌な予感がする」と言っていたシーンもそれに含まれる可能性

▼黒い衝動について
東リベにおいて最大の敵(?)として現れる“黒い衝動”。元々は佐野真一郎が能力を獲得するために②の方法を用いたことから始まる呪い。

神道の場合。
日本最古の呪いはイザナミが約束を破って醜い姿の自身をみて逃げ出し、地上と黄泉を隔てる大岩を挟んで交わした言葉から始まる。たいていの人は知ってると思うが「毎日1000人殺す」ってやつ。それによって人間に寿命という概念がついたと言われている。

仏教の場合。
仏教には具体的に“呪い”の概念は存在しない。それは言葉が少し変わって“煩悩”となり、その中でも克服すべきものが“三毒”と言われるものだ。簡単に言えば貪欲、憎悪、愚鈍。おや、西洋の七つの大罪にも通ずるところがあるぞ。わかりやすくていいね。

で、じゃあなんでたかが言葉が“呪い”として変化してしまったのか。

これはすごくいい例があって、夢枕獏の『陰陽師』における“呪”のくだりがとてもいい。ざっくりまとめると“呪”とは「根本的な在り方を決めるもの」で「目に見えぬものをも縛るもの」。これは作中の例えであったけど、名前とかがこれにあたる。
ほかに例を挙げるなら、「ブス」や「デブ」。周囲に自虐するタイプの友人・知人は居るのならば、おそらくだがその人は過去、誰かしらからそういう“呪”をかけられているのだと思う。

話を戻して、佐野真一郎がかけられた「呪われろ」という漠然とした“呪”。これがいわゆる”因果応報”として、佐野真一郎がホームレスを殺した時と同じように、羽宮一虎が佐野真一郎を殺す描写として描かれた。
悪いことをしたら罰が当たる、というのは誰しも一度は聞いたことがあるはずで。

今作において黒い衝動による影響があったキャラクターは以下の通り

・佐野万次郎
→いわずもがな。
・三途春千夜
→本来は大人しい性格であった。
 なぜ彼にも影響がでたのかというと、前述のとおり“トリガーとしての役割を終えていない”からであると推察。そのため「仲良く」の願望が歪み、もともと友人思いであった一面を偏執的なものへと変化させ、結果「佐野万次郎という存在をこの世に知らしめる」というものに変わったのではないか。
・羽宮一虎
→呪いの影響により強迫観念が強くなった。なによりも幼馴染でなく敵でもなく、両親の不和の元育ち(両親不在の佐野家とリンク)、選択を強いられる人生を歩んでいる(弱くあることを選ばなかった佐野万次郎とリンク)ことから、佐野真一郎を殺すための相手として選ばれたのではないか。

・寺野サウス
→おそらく寺野サウスのこの衝動は佐野万次郎を取り巻くなにかしらとは無関係のもの。可能性としてはディノあるいは母親に関連するものであると推察。

また、描写されてこそいないが少なからず影響があったと思われる人物

・佐野真一郎
→喧嘩が弱い、という描写がありながら、花垣武道と邂逅した際街灯が歪み拳の跡が残るほどの力があった。魅せシーンだとしても違和感があるため、少なからず影響があったのではないか
・黒川イザナ
→基本的に斜に構えており、物事を一歩引いて判断する癖がある割には血が繋がっていないという事実だけで見せた混乱が強すぎる。羽宮一虎がいなかった場合の佐野真一郎を殺す役目として衝動の影響が出たのではないか

さてじゃあどうして黒い衝動を終わらせることができたのかというと、クソ安っぽい言葉に置き換えるなら無償の愛…だな…

本来花垣武道がタイムリープをする際に変えたかった過去というのは「橘日向を死なせない」というものだった。橘直人がトリガーとしての役目を終えたタイミングで、その願望は終わったはずだった。
それでも佐野万次郎を諦めることなく救おうとしたことは、本来の欲から生まれたものではなく、花垣武道が生来持ち合わせている善性からくるものであり、なによりも。
佐野真一郎と同じくチーム内最弱で、佐野真一郎と同じく負けない意志があり、佐野真一郎と同じく女に弱く、佐野真一郎と同じく優しい花垣武道が、佐野真一郎から能力を譲渡されたからこそ 解呪できたのだと思う。

▼追記 “未来視”についての考察
花垣武道が突如として使えるようになった未来視についてだが、あまりにも突飛すぎてまったく理由が思いつかない、というわけでもない。
それまで計9回に及ぶタイムリープをしてきた花垣武道だからこそ覚醒した能力と言っても過言ではないだろう。なぜならば、その未来視では「こうしなかった場合こうなる」というものが見れるからだ。
もしかしたら、別の世界線(並行世界)での出来事なのかもしれない。

前述した「タイムリーパーとなったかもしれない人物」たちが、もしも花垣武道と同じようにタイムリープしたとしたら、(それは花垣武道が改変しようとしている世界を仮にαとするならば)β世界で限りなく近い過去を辿ってきた花垣武道の運命と言うことだろう。
花垣武道が何度も過去改変をしたことによって生まれた現代の世界線は少なくとも9つあるはずだ。その世界で花垣武道は何者にもなれないままだったり、反社会的勢力の構成員になったり、既に死んでいたりするわけで。そのうえでβ世界線の過去を改変する何者かが現れたのだとしたら、またそこから違う改変された現代世界線が生まれるわけだ。
そうなればいくつもの「選択肢」が生まれる。その中の限りなく近しいものを花垣武道が未来視としてみているのではないだろうか。
まぁこれは、あくまで考察であるからして。真相は定かではない。

▼独り言
先日、年表を作るためにリベを読み返していたんですけれどもね。
ボウリング場のくだりを読み返しながら、実写映画の主題歌になったSUPER BEAVER『名前を呼ぶよ』がずっと脳内で流れてたんです。
初めて聞いた時はタケミチとヒナの曲だ~って思ってたんですけど、撃たれたあとタケミチが「何度だって助けに行くよ」って言うコマで涙が止まらなくなって、また最終戦争編の刀が刺さった後のはサンボマスター『ロックンロールイズノットデッド』が流れ出して。
いやー、年表作ってる間月齢があってないところとかいろいろカチキレたこともあったけど、やっぱ読んでてムネアツになる作品はいいですね。

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