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企業が社会課題・地域課題に向き合うために大切なこと【前編】

徳島県三好市で孤独・孤立対策支援の実証実験を開始


富士通Japanの濱上です。
買い物難民を救うため、「移動スーパーとくし丸」を立ち上げた株式会社Tサポート(以下、Tサポート)の村上稔(むらかみみのる)さんと一緒に、本年11月から徳島県の西部に位置する中山間地域、三好市で孤独・孤立ゼロを目指したゴーサポート事業の実証実験を始めました。

ゴーサポート事業は孤独・孤立の危機に当たり、買い物が困難な高齢者に対して、「おつかい」と「見守り」を兼ねた訪問をするサービスです。サービスを提供する側と受け取る側双方の「元気」を練り上げていく、新しい社会貢献型ビジネスモデルです。
高齢者には孤立・孤独や買い物困難の解消にとどまらず、コミュニケーションの楽しさ、安心感と生きがいを感じていただけます。
見守りサポーターにとっては、子育てなどとの兼業がしやすいなど、働き方が自由な社会貢献型の仕事創出をします。地域の見守りというやりがいも感じることができます。

『ゴーサポート事業』提案資料より引用し編集

移動スーパーとくし丸は、スーパー等へ買い物に行けない方々へ、食料品などを搭載したトラックで運びます。軒先へ訪問し物品を届けるだけでなく、買い物体験そのものを提供する移動スーパーです。

これまでの移動スーパでは、スーパーよりも値段が高くて利用を控える人がいたり、分刻みの販売のため、見守りとしての機能が十分に果たせない状況でした。これでは、ますます進む高齢化に対して十分な対応ができません。

そこでTサポートでは、介護サービスなど暮らしのサポートを利用されていない一般高齢者の中でも特に中山間地域に住む方々への支援をすることにしました。実際に現場でサービスを提供する方を公募した「見守りサポータ」が事前に利用者から買い物のリクエストを入手し、その内容に沿って、三好市中心地にあるスーパーマーケット「サンシャイン池田」で購入した食材を直接おとどけします。その際に依頼主さんと15〜30分ほどの雑談をしたり、体調をお聞きしたり、次の御用聞きをしたりと対話をして頂きます。訪問後には、その様子を三好市役所の職員の方民生委員さん、遠方に住む子供さんなどへ、体調や買い物の内容、現地の様子が分かる写真を添付しレポートします。必要に応じて行政のサポートにつなげることも想定しています。

実証実験を始めてから、対話を求めている独居の方々は多いことが分かってきました。富士通Japanは、訪問する見守りサポーターが現地でお聞きした対話内容を市役所職員の方などへレポートしたり、写真を共有したりするアプリケーションをスマホ上に実装したり、技術的な支援をすることになりました。

今回は、実証実験を開始して1か月たったころ、三好市の高井市長、Tサポートの村上さんと対談を行いましたのでその様子をお届けします。

三好市の中山間地域の風景 2022.10
(photo by Minoru.Murakami)

行政で目指すことは「最小不幸社会」

濱上:この度、三好市で実証実験を村上さんと一緒に行うことになりました。始まって1か月たちましたが、今のところ、いかがでしょうか?

村上社長:1日、数件の訪問先がありますが、ご利用いただいている方から好評をいただいております。お買い物金額も数千円になる方もいたり、訪問した際に雑談をして満足いただける方もいらっしゃいます。またそれを都市圏に住む子供さんにもお伝えすることもありますが、ご安心いただけていると思います。

濱上:今回、三好市としても産官連携での地域課題への取り組みをすることになりましたが、まずは、ご出身である三好市への思いやご自身の活動で大切にされていることをお聞かせください。

高井市長:私は三好市のことは隅々まで分かります。人口減少、災害、感染症という3つの国難ともいわれている課題の縮図がこの三好市にはあります。一方、三好市は、自然と共存して生活してきており、昔からすでに持続可能な社会SDGsを実践してきています。私は政治がすべきことは何か考え続けてきましたが、三好市民の幸福度を上げることを目標にしています。そのためには、不幸を減らして「最小不幸社会」を作ることが必要です。

濱上:「最小不幸」の社会とは具体的にどういう社会のことでしょうか?

高井:人はそれぞれに自分の悩み苦しみを抱えて生きています。よく、自助共助公助と言いますが、公平性平等性を重んじる行政(公共)ができることは限られていて、様々な要望に対し、どうすれば解決策が見つかるか悩みながら知恵を絞っています。難しい課題ばかりですが、悩んでいる方を孤立させず、生きる活力を失わないようにしたいのです。

村上:私たちのこの活動は、高井市長の理念に直結しているんですね。

構想中の事業イメージ図(協議中の案)

産官連携をすることによって持続可能な活動となる

高井:今回のような産官の連携での企業の活動にも期待をしています。行政では予算、人員に限界があり、ビジネスベースでできることはぜひ力を借りたいです。民間企業と連携することはとても大事で、我々自治体も助かるし、住民も喜び、企業にとっても社会貢献ができる。三方にメリットがある連携をしていくことで持続可能な活動になると思います。

村上:この活動を通して思っていることは、「大きい声を上げている人の課題が本質とは限らない。小さな声に耳を傾けていけるかが大切」ということです。山間地域に一人で住んでいるかたに食材をとどける、対話をする、そういう活動を大切にしていきたいと思っています。

濱上:私たちも今回の実証実験では、技術的なサポートをさせていただいております。富士通Japanへの期待をお聞かせください

高井:今回の見守り実証実験ではICTで支えていただきたい。富士通Japanさんのような大手企業には人脈と知恵と資本力があります。どの自治体でも、人口減少・災害対策・感染症対策は避けられない課題です。三好市で実践したことは必ずほかの地域でも活かされると思いますので、全国での活動を期待しています。

濱上:有難うございます。しっかりと期待に応えて参ります。本日はありがとうございました。

サポーターが使用するスマホ画面イメージ

高井市長も村上さんも同じ徳島ご出身ということで、楽しくも自由な雰囲気で対話することができました。また高井市長の熱い想いをお聞きすることができ、あっという間の一時間の対話となりました。

後編では、企業の活動と社会課題・地域課題解決について、村上さんとの熱い対話をお届けいたします。

三好市 高井 美穂(たかい みほ)市長プロフィール
徳島県生。早稲田大学進学とともに上京。大学卒業後、ダイエーに入社。2003年に衆議院議員選挙で初当選し2012年まで3期務める。文部科学大臣政務官、文部科学副大臣などを歴任。2015年に徳島県議会議員に初当選。2021年三好市長選挙当選 三好市長就任。

Tサポート 村上 稔(むらかみ みのる)社長プロフィール
1966年、徳島県生まれ。大学進学で京都へ。卒業後も京都で就職、活動するも、父親の事業継承のため、徳島へ帰郷。2012年に買い物弱者を支える移動スーパー「とくし丸」を創業メンバーとして立ち上げる。現在はTサポートの代表として「移動スーパー」研修事業にも携わる。2022年から孤独・孤立対策支援事業を企画。その年の秋より三好市で実証実験をスタート。著書:『買い物難民対策で田舎を残す』(岩波書店)、『移動スーパーとくし丸の挑戦』(緑風出版)他。

株式会社Tサポート
2016年に徳島県・香川県で31台の移動スーパ「とくし丸」を運営する会社としてTサポートを創業。事務所は徳島県鳴門市。


左から、村上社長、高井市長、濱上