夏に捕らえられた街

高温に熱せられた街はいつまでたっても鈍感なままだ
横になった道端に吐き出した情緒というものがへばりつく
大きく振動するように心臓は不規則に疼いている
わたしの穴ぼこに放り込んだ陽炎をこの街は知らない

道徳に反した答えよりも汚らしい汗を舐めとれる
季節の死んだ街に木の葉が舞う幻を共有したい
古ぼけて所々が欠けた現にため息を共有したい
どこからともなく聞こえる怒鳴り声が赤子の泣き声に変わる

まっさらに溶けてしまった
この街はわたしと共に
穴ぼこから漂う不快な空気だけが
震えた肩を支え続けてくれるはずだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?