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【Voice!】 第3回 FW13 髙貝 樹幹選手

2022、23シーズンの北信越フットボールリーグ1部で2年連続得点王。
福井ユナイテッドとの対戦では3年間で6試合4得点を挙げた
”福井キラー”が、宿敵アルティスタ浅間より加入した。

どこからでもゴールを狙える万能型ストライカーは、すでにチームにもフィット、今季もリーグ開幕3節で4得点を決めている。
”3年連続”を狙うスコアラーの思いは? 古巣浅間との対戦前に聞いた。

プロフィール
FW13 髙貝 樹幹(たかがい いつき)
1999年1月15日生まれ 北海道札幌市出身 
2024シーズンから福井ユナイテッドFCに加入したストライカー。
選手歴:旭川実業高校→大阪体育大学→アルティスタ浅間

ー 出身地と家族構成について教えてください
北海道札幌市の出身です。
家族は、両親とお兄ちゃんと妹の3人兄弟で5人家族です。

ー サッカーを始めたきっかけは?
3歳上のお兄ちゃんがサッカーやっていたので、それで始めた感じです。幼稚園のときに、お兄ちゃんと一緒にボールを蹴ったのがスタートだったのかな。最初に所属したチームは北郷サッカースポーツ少年団で、小学1年生から始めました。中学生では北海道コンサドーレ札幌のU-15に入りました。

兄の影響もあってサッカーを始めた幼稚園時代 ※本人提供

ー 北海道コンサドーレ札幌U-15を選んだ経緯は?
小学6年生の時に右膝を怪我をしたんです。なにかしらの菌が入って、手術をしないといけないっていう状態になりました。
本当は小学卒業後は親元を離れようとしてたんですよ。北海道のいくつかのクラブチームから声をかけてもらいましたけど、怪我のこともあって家から通える距離でって。その中で札幌U-15が1番かなって、選んだ感じです。

ー その後は旭川実業高校に進みました
6年生のときに始まった怪我は中学になっても多くて、ほとんどプレーできていない状態でした。だから、もちろんU-18には上がれなくて。それで、そのとき北海道で一番強い旭川実業なら”高校サッカー選手権”に行けるかなあって。
なぜかわからないですけど、父親が家を出ろっていう親なんですよ。冒険しろみたいな。それで小学校卒業のときに出ようと思っていたけど、怪我とかいろいろあって出れなくて。でも"中学卒業したら、もちろんどこかへ行くよな" みたいな。まぁ、多分そんな流れもあって、旭川実業高校にしました。実業だったら寮ですし、父親の希望も叶えられるみたいな。

ー 旭川実業での思い出は?
1、2年生の頃は特に怪我はしてなかったんですけど、3年生になる前の3月ぐらいに練習で左膝の前十字靱帯を切っちゃって。なので、3年生のときは全然プレーできていないんですけど、ただただ "選手権に出たい" っていう思いから、無理矢理にでも早めに復帰しました。大会ではたいしたプレーもできず、米子北に敗れて1回戦で敗退しました。

ー 続く大学生、大阪体育大学へ進学しました。大体大を選んだ経緯は?
大学でもサッカーがやりたくてどこの大学にするか探していたところ、順天堂大学OBの高校の監督から順大を勧められて受験しました。僕はあんまり勉強できないんですけど、一応試験はあったんでちょっと勉強して。
でも普通に落ちたんです(笑)。めっちゃ焦りました。そのあと、一年上の寮も一緒だった先輩が大阪体育大学に行ってたので受験しました。やっぱり大学サッカーって関東、関西じゃないですか。今は関東一強みたいになってきたんですけど、そのときは関西リーグも相当強かったので。どんなサッカーをやるのかも特に分からずに、本当に飛び込んだ感じでしたね。

大阪体育大学時代(1) ※本人提供

ー ここまで怪我に悩まされてきましたが、大学では?
それがめっちゃ偶然ですけど、大体大に入ったことがめちゃくちゃよかった。体育大学なんで身体とか体育について専門的に学べる授業があるんです。それで、今まで怪我してきたし身体のことについて学ぼうと思って自分で図書館に行ったり、授業の資料とかで詳しく勉強しました。そこからは本当に怪我をしなくなりました。
それと、怪我をして走る能力がめっちゃ落ちたんですよ。で、走り方とか、動き方とかも自分で学びました。陸上部の先生のところにも一人で通ってましたね。
一番良かったのは、一つ上の先輩に林大地(元日本代表、現ニュルンベルグ)がいたことですかね。大体大って、大地くんみたいなセンターフォワードとセンターバックがよく育つようなサッカーをしていました。ほんとたまたま入った大学だったんですけど、いろんなことが学べて、ザ・ストライカーみたいなところに磨きがかかったと思っています。

ー どんな練習をするんですか?
まず、体の使い方から始まるんですよ。基本的には、人とぶつかるための技術や、人とぶつかってる状態でのボールタッチとか。その上で、狭いスペースでの、ゴール前のところにフォーカスされて全てのことが進んでいくので、センターフォワードとセンターバックのような、時間がない・スペースがないっていうところの選手が育ちやすいかなって。これはもう僕の自論ですけど(笑)。でも本当にそういう選手たちが今プロの世界で活躍しているんです。

大阪体育大学時代(2) ※本人提供

ー 大学での成績は?
僕が入った年から関西リーグで4年連続優勝しています。すごいですよね。
インカレは、ベスト4とかベスト8でしたが、それが多分2個上の代だったかな。菊池流帆さん(現神戸)とか、末吉塁さん(現岡山)、浅野雄也さん(現札幌)、立川小太郎さん(現いわき)とか、すごい先輩たちの代です。そこに、林大地(現ニュルンベルグ)くんとか田中駿汰くん(現C大阪)とかがいたり。あとは僕らの代だったら、林尚輝(現東京V)とか5、6人はプロになっています。たまたま、そんなときに入れたっていう刺激は多かったですね。

ー 大学卒業後はアルティスタ浅間に入団。浅間時代を振り返ると
大学時代は、いろいろとあったんで(笑)。紹介されたのが北信越リーグのアルティスタ浅間さんでした。結果的には良かったと思います。一番は、大学に行ったときもそうですけど、自分次第と思って飛び込んだ世界で素晴らしい出会いがありました。アルティスタ浅間で言えば、もちろん監督の梅さん(梅山修氏:現新潟アカデミーダイレクター)に出会えたのが一番です。今となっては、梅さんに会うために浅間に行ったんだと僕は思っています。

ー では、今までのキャリアの中で影響与えた人は?
一番は間違いなく、父親ですね。

ー お父さんからの言葉で印象に残っていることはありますか?
「サッカー選手とかである前に、ちゃんと一人の人間でいろよ」って言われました。それは覚えていますかね。「ちゃんとした人でいろ」っていうのは常々言われています。ちょっとやんちゃなところもあったんで(笑)。

ー サッカーの指導者で恩師はいますか?
間違いなく梅さん。梅さんって教えることはないんですよ。一緒に学んだりとか、基本的に上下関係じゃないんですよね。選手と常に対等な感じでした。梅さんが言ったことで、すごい覚えてるのは「選手は成長するもので、(梅さんが)教えたことは特にない」って言うんですよ。「ただ、唯一言えるとしたら、みんなが成長することを妨げなかったんだろう」って。面白いですよね、そういう感じが。常に成長を促進させるような、伸びていく力を促進させるような助けをするって、多分捉えてると思うんですよね。もちろん、必要とあれば助言もされますね。人間的なところだけじゃないプレーのところ、僕に関しては、本当に点を取るというところも学びました。「まず、良いフォワードとは得点が取れて守備ができる」って定義をしたんですよね。それと、理論的ですが一番大事なのは「自分たちがサッカーをプレーしたいという気持ちで、勝ちたいという意欲だ」っていうところは、絶対に忘れないです。だから、理論的になってアグレッシブさを失うというようなサッカーには絶対ならないんです。自分たちの気持ちが一番に生きて、その上にちゃんとした理論とかが乗るっていう形がある。その上で、選手一人ひとりが、僕なら「点を取るためにはどうしたら良いか」「よりパワーを発揮するためにはどうしたらいいか」という助言をくれる人でした。

ー 自身のプレーのストロングやこだわり
こだわりは、特にないです。自分で自分自身を評価することはないんで、何も言えないですけど。チームが勝つために自分ができることをやる。勝利という結果に直結するのが、チームとして点を取るってことなので。僕が点を取るっていうより、チームとして点が取れればいいと思っています。結果として、ここ2年間は北信越リーグで得点王を取りましたが、あくまでもチームとしての得点なので。チームとして点を取るための貢献ができればいいなって思っています。
一般的に、サッカーの得点ってやっぱりペナルティエリア内が一番多くて。なおかつ、ワンタッチのゴールが比較的多いんですよね。だから、そこで取るためにその可能性を上げるための動き方、いるべき場所、そこに伴うスキルっていうところについては、その他のポジションの選手よりは特化して勉強したり、練習したりしています。

浅間在籍時代、北信越フットボールリーグ1部で3季連続2桁得点。通算33得点を記録 ※本人提供

ー プロフィールには、憧れの選手にレバンドフスキとありますが
一番代表格で分かりやすいかなと思って選びましたけど(笑)。特にこの人っていう選手はいなくて。でも、本当にワントップで多く得点を上げてる選手のプレー動画や、色んなチームの得点シーンは日頃から見るようにしてます。

ー 今シーズンより福井ユナイテッドに加入しました。移籍を決めた経緯は?
基本的には、浅間から来年も残って欲しいと更新の話は頂いていました。その他にもいくつかのクラブから話があった中で、自分が一番チャレンジしてみたいという魅力のあるクラブだったので、福井ユナイテッドに決めました。

ー 福井との直接対決では6試合4得点。対戦相手としてプレーしたときの印象は?
僕は北信越リーグで対戦して一番厄介な相手だと思っていましたし、非常にめんどくさい相手だなと思ってました(笑)。それは、いろんなところに要因があったんですが、チームに入ってみて一つ一つにちゃんと理由があるんだなって感じました。プレーが細かくて、ここでこうされたら嫌だなぁ、こういう理由があるんだなぁって。逆に、対戦して福井のサッカーを知っていたからこそ、チームとしてのやり方を理解するのにはそんなに時間はかからなかったです。なおかつ、今シーズンは常に早く前へ、ゴールに向かっていく部分でそれを促進する選手の一人として、このクラブに来たんだと思っています。そういったプレーや得点にチームを助長させるような、マッチしているような手応えは感じています。

今シーズン、北信越フットボールリーグ開幕戦で2ゴールを決めた高貝選手(左)

ー 同じ北信越リーグを戦うライバルチームに移籍したことで、周囲の反応はどうでしたか?
どうなんですかね。でも福井に行くって決めて、いろんな人に僕が移籍するっていうことが伝わったときには、たくさんの方から反応をもらいましたけど、基本的にはみんな応援してくれましたし、前向きな反応が多かった印象です。

2023.6.18 浅間vs福井。マッチアップしている16番池庭選手とは今や一番の仲良し。※本人提供

ー プロフィールからは、綺麗にするとか整えるとかが印象的ですが、自身のキャラは?
そうですね、結構気にしがちです。潔癖とかではないですけど、常に身の回りを綺麗にしておきたいというのは、あるかもしれないです。もともと、ビビリみたいなところがあると思うんですよ。いろんなことを気にしたりとか、怯えたりとか、人の目が気になったりとか。そこにはいくつか要因はあるとは思うんですけど、そんな人間なんだと思うんですよ、本当は。

ー 個人的な印象として大胆なプレーとは対照的に、キャラ的には非常に細かいというか、繊細な印象を受けます
まず、そういう風に見えてて良かったなって思いました。嬉しいです(笑)。周囲からは、大雑把で大胆みたいに見えていて欲しかったんで。自分としてもFWなら「こいつ何かやんちゃだな、バカだな」って、見られた方がいいと思っています。

ー 具体的に教えてもらえますか?
少し話が長くなっちゃうかもしれないですけど良いですか?(笑)
本当は元々小心者なんですよ。なんですけど、小心者であればあるだけ、FWとしては、クソみたいなプレーになるんですよね。
実は僕、めちゃくちゃ本を読むんですけど、本を読んでいろんなことを学んで、最終的にさっきお話ししたみたいに、外からは大雑把で大胆に見られる方がいいなと。でも、内側はぎっしり詰まっていて、やることやって、整えたりだとか、ちゃんとできるっていう状態で、外からは大胆な人に見られる方がいいんですよね。それが、サッカーではワンタッチゴールってところに繋がるんです。ゴール前での注目、緊張と緩和とか、注目からの離脱とか。つまり、マジックで言うミスディレクションですよね。何かを見せておいて、見えないところで何かをやってるっていうような、この状態がすごくいいんですよ。いろんな面において、分かる人には分かるような状態でいたいんです。
例えば、ピッチの中にいる選手たちは、何が起こってるか分かんない状態でも、一人だけ違うものを見てたりだとか。ゴール前での「時間」「空間」「隙」、そういうものをあの一瞬で取りたいので、そういう風に見せることが必要なんですよ。

ー 考えてのことなんですね。本はどんなジャンルを読みますか?
なんでも読みますけど、小説とかはあんまり好きじゃないですね。ドラマとか、そういう人によって作られたものっていうのはあまり好きではなくて。
経験とか、考え方とか、そういったものの方がより自分に入ってきやすいです。それと、自分たちが生まれる前から残ってるような昔の情報はできるだけキャッチしたいです。歴史はあんまり読めてないんですけど、昔の人たちのことはちょこちょこつまんだりしていて。そこにはいろいろとヒントがあるんだと思います。

ー ちなみに、最近読んで心に残る本はありましたか?
最近は「葉隠」ていう本を読みました。武士道は非常に学んでいます。武士道ってめっちゃ学べるんですよ。

ー 結構意外でした(笑)
いや、いいです、それが僕にとってはいいので。

ー では、ピッチ外のことを少し。就業先について聞かせてください
電話をかけての営業を担当しています。長野にいた頃は、スポンサー企業で営業の仕事していたんです。なので、福井に来たときに営業の方がやりやすいかなと思って選びました。勤務先は、チャンスメーカーさん(club福井法人会員)。いわゆる販促ですね。お客さまの販促物制作のお手伝いと、ノベルティーの販売がメインです。

ー 電話営業をやってみてどうですか?
面白いですよ、非常に。電話は顔を見れないんで難しいですけど、その中でも結局は人と人とのつながりなんで、いろいろとやれることがあるんだなっていう印象ですね。それと、何事にも面白さはありますし、人生の経験と思っていて学べるものはあったりするんで、前向きに捉えていますね。

ー 最後に、オフの過ごし方について聞かせてください。
  例えば、最近ハマってることは?

家の前に桜がめっちゃ咲いていて、春先は散歩したりしてましたね。僕、プロフィールにオフの過ごし方なんて書いてましたっけ?(笑)

ー 映画鑑賞です
あー、映画は見ますね。映画館に行くこともあります。いまはもうサブスクで見れちゃうんで(笑)

ー インドア派ですか?
はい、本当にインドアですね。家で映画見たり、本読んだり、あとはちょこっと外出るぐらいで、あんまり何か外で何かをやるっていうのは好きじゃないんです。

ー チームには釣りが趣味の選手がいたりしますが、一緒に行かれたりとかは?
ないです。話はしたりしますけど、「絶対やんないな」みたいな。ゴルフ行ったとかも聞くんですが、自分は絶対行かないなみたいな(笑)。
サッカーであんだけ外に出てるのに、なんで外で気晴らしできるんだって思います。逆にそういう人がいてビックリしてます。ずっと前からインドアです(笑)。

ー この記事の公開は、5/19 浅間戦前のタイミングですけど、古巣との対戦について思うことはありますか?
いろいろ思いもありますし、一応3年間在籍していたので。そういうのを含めると試合で感謝とか恩返しとか、「ない」って言ったらちょっと人として欠けているみたいですけど。正直、特別な思いがあるかって言われたら特にはないんです。

ー 周囲が勝手に煽っているだけ?
そうそう、本当そうなんですね(笑)。僕自身は、どのチームも対戦相手の一つでしかないです。北信越リーグの相手のひとつで、勝たなきゃいけない試合のひとつ。点を取らなきゃいけない試合のひとつ、っていうだけでしかないんです。きっといろんな方から注目はされるんでしょうけど。でも僕は福井ユナイテッドの選手のひとりとして、チームの勝利のためにプレーしたいって思っているだけです。まあ、それを言うと、逆に意識してるみたいな話になっちゃいますし(笑)。難しいですね。

事務所でインタビューでは、ピッチ内とは違う表情を見せてくれる

(ライター/細道 徹)