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「ユーザーが行動をおこす条件」の話

新入社員のこばかなさんが、「こばかなスケッチ」という自分企画を頑張っている。THE GUILDでの日々の仕事と、読書で学んだことを、一枚のスケッチにまとめるチャレンジだ。


彼女のスケッチが溜まってきたので、復習とサポートを兼ねて、解説を書いていきたい。第二回はこの絵。


行動 = 動機 × 実行能力 × きっかけ

今回のこばかなさんのイラストは、「フォッグの消費者行動モデル」という概念モデルだ。ざっくり言うと、ユーザーが行動を起こすために必要な3条件を示している。

このモデルでは、「ユーザーが何かアクションを起こす」条件を、

B = MAT

という、とてもシンプルな式で表現する。

その意味は、「行動(Behavior)」には、「動機(Motivation)」と「実行能力(Ability)」があるタイミングで、「きっかけ(Trigger)」が訪れなければならない…というものだ。

動機(Motivation): 行為を行いたい理由。
実行能力(Ability): 行為を実行する諸条件。
きっかけ(Trigger): やろうと想起する瞬間。 

この3つが揃っていれば、ユーザーは行動を行う。こばかなさんの図では足し算だが、3つとも必須なので掛け算(論理積)が正しいと思われる。

逆を言えば、ユーザーが行動をしてくれない時には、この三要素が揃っていないかを確認する必要がある。


「動機」がなければ、やる気にならない

物事を実行するには、ユーザーの中に動機(Motivation)が必要である。モチベーションはざっくり分類すると、以下のような3つの軸に分類される。また、それぞれポジティブな動機と、ネガティブを解消する動機がある。

楽しい、痛いなど「快楽の追求」「 苦痛の回避」
安全や将来の見通しなど「安心の獲得」「 不安の解消」
尊敬や軽蔑など「承認の獲得」「 孤立からの脱出」

これらのモチベーションは等価ではなく、それぞれ特性が異なる。例えば「苦痛を回避」をするモチベーションは、「何かを獲得」するモチベーションよりもはるかに強い。同じように、「現在」に関するモチベーションは、「未来」に関するモチベーションよりも優先される。 また、金銭のモチベーションは価格が上がるにつれて鈍化しやすく、社会的な賞賛は想像以上に強い力を発揮する。


「実行能力」がなければ、意味がない

どんなに強い動機があろうと、実行能力(Ability)を持っていなければ、行動は発生しない。ユーザービリティなど「○○ビリティ」と言われる要素は、この実行能力に属すると考えて良いだろう。マーケティングにおいて「フリクション」や「バリア」と呼ばれる考え方も、同じようなものだ。

実行能力には金銭、時間、物理的制約、精神的制約など、多様な軸が存在する。これらの障害が全てクリアとなって初めて、実行可能となる。以下は、「実行能力」の例となる。

時間: 時間があるか? すぐできるか?
金銭: 気軽な価格か? 無料か?
身体/物理的: 手がとどくか?
精神 / 認知的: 簡単か? わかりやすいか? 考えずにすむか?
倫理性: タブーを超えていないか
非日常性: 初めてか?, 自分だけ行うか?


「きっかけ」がなければ至らない

十分に強い動機があり、簡単に実行可能である瞬間に、「きっかけ」が訪れると、ユーザーは行動を実行する。

この「きっかけ」は、「誘惑」や「想起」と言っても良い。それは広告や、目の前のご馳走や、Push通知、脳内麻薬の欠如であったりする。

繰り返しになるが、「行動」を発生させるためには、事前に動機と実行可能性が担保されていなければならない。多くの広告やキャンペーンでは、「きっかけ」だけに着目をし、大量の広告で接触頻度を最大化しようとしている。だが、誰も必要としないものを売ったり、購入できないものを勧めても、それだけでは行動は発生しない。


実例を見てみる

この行動設計の実例としては、インスタグラムなどは非常にスマートに設計されており、わかりやすい。

1. インスタグラムの動機は「いいね」であり、ソーシャル上での社会承認である。これは金銭報酬のアクションに比べて、極めて強い誘引力やリピート性がある。

2. カメラはワンタップで撮影でき、エフェクトも即座につけることができる。気軽に投稿できるため、実効性は極めて高い。

3. きっかけに関しては、アプリの内側ではなく外側にあるのがポイントである。美味しい料理や、イベントなど、ユーザーのリアルライフの節目そのものが、アプリを起動し、投稿するためのきっかけとして定期的に訪れる。

このように、良いサービスや機能、広告は、ユーザーが行動を実行してくれるための3要素を丁寧に満たしている。もしも自分のサービスが、ユーザーに実行してもらえないなら、一度サービス全体を俯瞰して、「動機」「実行能力」「きっかけ」の3要素がしっかり満たされているかを、確認してみると良いだろう。


まとめ
・人に行動を起こさせるには、B=MATが満たされている必要がある。
・必要要素は「動機(Motivation)」「実行能力(Ability)」「きっかけ(Triggr)」
・行動を起こしてもらえない時は、この3要素を常に確認すること


…というような話をタクシーの中で、こばかなさんに吹き込んでる。講義やワークショップを、大学やお客さんのところでやったりもしている。最近はDMMさんで開催させていただきました。

もっと詳しく知りたい人は、ニール・イヤールの「ハマるしかけ」という本をオススメします。



いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。