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小説の下練り

 昨日と今日の間あたりで、うっすら目が覚めて、雨がざあざあと降っている音に気がついた。昨晩、夕飯を食べながら細野晴臣のドキュメンタリーを観ていた影響で夢に細野晴臣が出てきていた。目覚めてすぐは、具体的な内容を夢の記憶から探り出すことができたが、朝正式に目が覚めた後では、その内容を思い出すことができなかった。半分寝たまま夢をたぐっているうちに、昨日の昼頃に干した洗濯物をそのまま外に出していると、急に気がついた。非常に惜しい気持ちになる。最近は雨予報の日が続いていたので洗濯物が干せる日を待ち望んでいて、ちょっと面倒くさかったが、きちんと干したのに、回収まではできなかったという惜しさである。しばらく、その惜しさで寝られなかったが、諦めて寝た。家人はその間もぐっすり眠っていた。

 正式に目が覚めてからも家人は寝ていたので、先にリビングへ降り、のんびりシャワーを浴びたり、昨日の皿を洗ったりした。最近外見のことを考えるのが楽しい時期がやってきているので(普段はどちらかといえば無頓着で、時期が来ると細かく考えたいような気持ちになる)、平日にはしないような丁寧なスキンケアをして、悦に入る。
 家人もぼちぼち降りてきて、昨日買ったパウンドケーキを朝ご飯にした。近所にずーっとあったのだが、なんだか敷地の中の道から遠いところに店が構えられていて、あまりに遠いので行ってみたことのなかった店に気まぐれで入った戦利品である。
 食後、家人は風呂を溜め音楽をかけて優雅に湯船での時間を過ごし、わたしはゼルダをやった。クリアした後も、セーブデータを遡ってロードし、プレイし続けているのである。わたしは地図を全部オープンにする作業を躍起になってやっており、あと一歩というところまで辿り着いた。手に負えない強い敵が見えたら依然として逃げることはするものの、始めた頃は全くの初心者だったわたしも、見かけた敵をアイテム欲しさにわざわざ倒しに行くことさえあり、地図を広げるだけではなくて、そのようなベーシックなプレイもちまちまと続けている。

 昼も二時間程度過ぎた頃に、家人から昼食の促しを受け、自分の空腹に気がつく。集中していると、空腹であることを頭が認識できないのか、ご飯は二の次でゲームをしたり、ぼーっと漫画を読んだりしてしまう。
 パスタをちゃっちゃと作り、映画を観ながらご飯を食べて、ぼちぼちしている間に家人は夜の用事に向け出発した。
 家で一人になったので、わたしは先週半ばくらいから密かに今日の主役に据えていた小説の下調べをすることにした。

 親しくしている友人が仕事で遠くに行ってしまったので、それを口実にその友人にメールで短篇の小説を送ることを宣言しており、それに手をつけようというのである。
 演劇に参加したり、自分が二度も熱を出したり、映画を撮ったり、フジロックに行ったり、今度は家人が熱を出したり、と、日々がそもそもままならなかったのだが、ようやく家の荒れなども落ち着いてきて、文章などのんびり書く気持ちが芽生えていていたので、まとまった時間を使って本腰を入れて作業することを少し前から楽しみに待っていたのだ。
 家に一人でいる時の方が、こういう作業が手につきやすいのもあって、今日ははなから諦めて前半をゼルダに明け渡し、一人になってからゆっくり作業を始めた。
 まず友人の行った土地について調べ、その中で小説にしたい内容を考えていくことにした。百科事典で国名を調べて、そこから気になるキーワードをネットで調べていく。植生や動物、神話などについて調べる。
 思ったよりも、その国の植生には幅があり、想像していた気候とは違った気候にいることがわかった。どうやら向こうも、時期によっては蒸し暑いらしい、など。知らない生物や知らない果物の情報も貪るようにして読んだ。面白いことが多く、すごく楽しい。行為の内側で楽しさを噛み締める。種のようなものはある程度集まった感じがしたので、今週はこれを捏ねてみようと思う。

 気がつくと、全く関係ないことをむちむちと調べており、夕飯を食べた方がいい時間だったので、適当に調理して食べる。たまに調理すること自体が面倒くさく、食べることをスキップすることがあるが、今日はさすがにお腹が空いていた。食べることは好きなのだが、そういえば子供の頃から本を読むのに熱中すると、空腹であっても本を読むのはやめられず、親に何度も呼ばれてやっと渋々食卓についていたのを思い出す。今はご飯を出してくれる親がいないのでありえない時間にまで食事の時間がずれ込むか、スキップの選択になってしまう。昼は家人の空腹感によって食べることになったが、家人がいないとまず立ち上がるということもしない。日常の多くを仕事が占めていていいことの一つは、仕事は夢中になってやることが少ないし、早く息抜きをしたくてちゃんとご飯を食べようと思いやすいところかもしれない。
 さておき、調理してとても適当なものを食べるのと、外に出て何か外食するのだと、外食の方が億劫なので、家人がいないとすごく適当なものを食べることが多いな、と思いながら適当なものを食べた。
 これを書いて寝る。

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