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10月読んだものみたもの

古事記(岩波)
 書き下し文の古事記と、レ点付きの漢文の古事記が載っている。訳註に頼ってギリギリ読めるか読めないかのラインだった。町田康と角川クラシックとを参照しながら読んだ。
 ある程度天皇の威光を強める方向の話もあるんだけど、なぜこの変なエピソードがここに?みたいなのもあり、日本書紀と読み比べるとそこらへんが色々違うのかもと思った。あと、研究書読んだら面白そうだった。

町田康『口訳古事記』
 結構本家『古事記』から大胆に削られたり膨らませられたりしていた。実際に、古事記のここまでからここまでが、町田康のここまでからここまでの範囲だな、というのを比べると、かなり町田康の訳の方の分量が多いのがわかって面白かった。
 原文の古事記では、〇〇はこうした。みたいな結果とか、こうなった、ということしか書かれておらず、唐突な展開がおおいのだが、なんで原文の古事記ではこんなことになったのかということを、行為した人の感情がどうだったか、だとか、こういう雰囲気があったのではないか、とか、そういう解釈をして実をつけて書くみたいな書き方になっていた。話の順序なども、適宜調整されているので、ゲラゲラあっという間に読める感じだった。神々の話なのだが神々しさというよりは神であることの異様さみたいなものが前に出ていて、何もかもが馬鹿にされているようで可笑しい。

古事記(角川古典クラシック)
毎度のことながら一部しか訳されておらず後はあらすじなので補助線的に利用。

ロバート・アルトマン『ショート・カッツ』
 映画。カーヴァーの作品が原作として使われているので、これは、カーヴァーのどの話でしょうかクイズ大会、みたいな見方をしてしまった。あんまり良くなかった。
 どうしても、下敷きがカーヴァーであるということを考えると、いや、カーヴァーの方が上手いし……みたいな気持ちになってしまうところが多かったのと(というかカーヴァーの作品はその作品単体が絶妙なバランスで成り立っているので、そこに何かを足しても引いても微妙になるから、別のメディアで作品に落とし込み直すのはそもそも難しいと思う)、PTAの『マグノリア』が同じ形式でもっと面白かったことを思い出してしまい、んむ〜〜となった。
 マグノリアは全く違う人々たちがなぜ同時に描かれなければならないのかの必然性がまだあるけど、この作品にはそれがあんまりないのも微妙に感じた理由の一つな気がする(マグノリアは恩田陸の『ドミノ』の爽快感みたいな感覚もあるので)。
 めちゃくちゃに長いし、話を追うのも大変なので、人とぺちゃくちゃ喋りながら観てよかった。

アンゲロプロス『永遠と一日』
 映画。最後の方寝てしまった。
 観てる間に小説を書きたい気持ちになった。好きな感じの映画だった。
 少し前にみた『見上げた空に何が見える?』の質感に近かった。あと一つの画面の中で変な風に時間や空間が動くのは『エンドレスポエトリー』を観た時の感覚に少し近かったような気がする。
 ショットを繋いで繋いで時間をジャンプさせて流れを作るのではなくて、ショットをものすごく長くしてその中にものすごく長い時間の経過を内包させるというのが観ていて変な気分になり心地よかった。

町田地蔵尊
ライブ。高円寺に観にいった。
生で聴けてよかった〜〜おもろかった〜〜。

小津安二郎『お早よう』
 映画。面白かった。めっちゃコメディだった。
 人のめちゃくちゃ嫌なところとかが出ていて、その辺は都度、わりと、いややーと思いながら観はしたが、その嫌さがずっと緊張感を保たせていて、楽しく観た。子どもがよかった。特にフラフープをまわすシーンが一番笑った。
 東京国際映画祭のイベントでの上映で、まぁまぁな量の人と一緒に観たので、みんな結構笑っていて、笑える映画は知らない大勢の人と観ると楽しくっていいなーと思った。
 あと、ずっと色が綺麗で(今まで小津は2本しか観ていなくて、確か両方白黒だった)、この間神奈川文学館でやっていた小津の展示の時に、赤が好きで小道具にも拘った、というようなことが書いてあったのを思い出した。

ギャレス・エドワーズ『ザ・クリエイター』
 映画。自律思考をするアンドロイド(見た目はほぼ人間)と、人間の対立、とか、ロボットの権利を叫ぶ、みたいな疑義はSFの中でも擦り切れるほどに繰り返されているので、今回も観に行く前はまたそれか〜〜と思っていたのがいい意味で裏切られたのが一番よかった。世界的な規模で見たら、アンドロイドの撲滅を進めようとする国と、そうしない国というのがあって、地域差による受容の違いが物語の大枠になっていく、というのは新鮮だった。
 そして、その国による受容の違いと、それへの対応方法の違いが現実的な政治批判にもつながっていて、一緒に観た家人と、低予算の映画だったがあれだけのエンタメ大作として仕上げたことで、広く普及する作品でありながらアメリカへの批判をきちんと表現できたというのは、すごいことだ、という話になった。観ながらそのことは全然考えていなかったけど、この映画の良かったところの一つだと思った。
 アクション映画とか、話の筋の面白さという面で観ると、諸々全ての作戦においても、あらゆる展開においてもご都合主義すぎるしガバガバすぎるので、ガバい〜〜〜、いい話演出にするためにキャラが殺されたりしがち〜〜〜なんやねん、とはなるけれど、そういうのを楽しむものじゃなさそうだな、と思って観ていたので、そこは大きな問題にはならずだった。SF作品で自分が割と楽しみにしているメカニックのかっこよさとか、衣装の良さとか、そういう部分はそこそこオリジナリティがあったので、個人的には割とよかった(映画の評価サイトとかだと、観たことある映像ばっかり、というような書かれ方をしていたけど、SF作品って大体どの映画も既視感の塊なので、それを鑑みるとオリジナリティの方が強かったと思う)。子供の服が中国の穴あき服を連想させるような感じで面白かった。あと、既視感の方向性としては最近のSFっぽい、みたいなところはあり、音の感じとか、ノマドの照準とかは最近ぽいなーとおもった。でも、仏教とアンドロイドのコラボは割と観てえて画として気持ちがよかった。アンドロイドの仏像可愛い。
 シュミラントという呼び名割とよかった。レプリカントに対するシュミラント。

ギャレス・エドワーズ『ローグ・ワン』
 映画。面白かった。スターウォーズ456.123のみを視聴しており、これを観た。
 この話に出てくる人々は誰もエピソード4に出てこないので、そりゃ、そうなんですけどもさ……となりながら、終盤厳しすぎて悲しかった。
 エピソード4〜6の感覚で観ていると厳しすぎて慌てる。ザ・クリエイター観た後なので、やっぱりザ・クリエイターはかなりデザインや絵作りにオリジナリティがあったし、ローグワンはちゃんとスターウォーズだと感じる、という面白さがあって、スターウォーズらしさってなんだろうね〜〜と家人と話していた。中東っぽさとか砂漠のイメージとかが大きいという話をしていて、ぼんやりと『ホドロフスキーのDUNE』のことを思い出した。

ガザを知る緊急セミナー
https://youtu.be/-baPSQIgcGc
 友人の勧めで観た。岡真里先生による講演で、今まで、今、ガザに起きていることについてが話されている。人から教えてもらってみることができて良かったな、と思ったので、皆さんも観てみてください。
 現在起きていることの理解の一助にもなるし、中で書籍の紹介や記事の紹介などもされています。
 パレスチナの関連で、わたしが過去読んだことがあるのは『シャティーラの四時間』だけなのですが、現実にどのようなことが起きていたかということを知ることにおいて、こちらもよかったのでおすすめします。

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