企業アニメのコンテ制作 ~構図の背骨を作る~
ラフコンテを作る際には、モチーフと同時に構図の軸を考えることで、メリハリのある画作りにすることができます。この軸とは、構図の背骨とも呼べる、とても重要な部分になります。
カットを考える目的
動画では1枚の画からいろんな感情やメッセージを伝えることができます。
感情やメッセージと、画の印象が正反対…ということになってはいけません。
例えば、登場人物の悩みのシーンで、明るい印象を出してはいけませんし、
期待感を感じさせたいシーンで、情緒の安定した画を作れば、目的とは大きく離れてしまいます。
そうならないようにラフコンテを作って、カット毎に役割を与えておくことが、監督/ディレクターとしての役割だと考えます。
例題
例えば、何か「向上していくイメージ」を伝えたいカットを作るとして、次の内どのようなラインが適切だと感じるでしょうか。
もちろん明確な答えはありませんが、見ていただいた様にラインの配置や方向や質などによって、受ける印象は違ってきます。
普通に映像を見ていても気付きませんが、良い映像には必ずこういったラインが考えてあります。
モチーフを考えるのは後回しでもいい
ラフカットを作る際、おそらくモチーフを先に考えると思います。
(モチーフとは、キャラクターや、背景、図形、文字要素...など画面に収める被写体のことを、ここでは指します。)
モチーフばかりに気をとられると、画面の空いたスペースにモチーフを埋めていく"作業"に陥りやすくなります。これでは「視聴者に何かの印象を与える」という目的からずれてしまいます。
それを避けるため、構図の背骨となるラインから、カットを考えていくことも有効です。
モチーフは利用するもの
一つ例として、簡単なシーンを作ってみます。
主人公が何かに悩み 、 → 挫折するが、→ 再起を決意し、→ 何か達成させる
というストーリーだとして、ラインを考えてみます。
(よければ、皆さんも考えてみてください。)
如何でしょう。皆さんはよりいいラインを見つけ出すことは出来たでしょうか。
(ちなみに、このラインは構図を考える一つの要素でしかありませんので、「納得のいくまで..」と気張る必要はありません。)
ラインがある程度決まったら、次にモチーフを考えていきます。
ここで重要なのは、「モチーフは構図を作るために、利用するもの」と考えておくことです。あくまでも、一枚の画から印象を操作することが最大の目的です。
先ほど書いたラインから、ラフを描いてみます。
最初に設定したラインが活かされ、モチーフをうまく配置できているでしょうか。
もし、全てが同じような印象になっているのではあれば、何かを修正すべきです。
構図が一辺倒にならず、カットの役割が果たせているのであれば、グッドです!
最後に
ラフを考えるときはこのライン以外にも考える要素はあります。
例えば、明度/シルエット/図形/動き/疎密... このように色々な要素はあるのですが、構図の背骨である「ライン」をまずは押さえておけば、大きく崩れることはないと思っています。
最終的に描き起こすのは別のメンバーであっても、監督として、どんなイメージでカットを作りたいかは、持っていなければいけません。
ラフコンテの段階で、このような要素の土台を丁寧に作っておくことで、クライアントだけでなく制作メンバーにとっても、ゴールが明快になっていくのではないかと考えています。
何かのヒントになってもらえれば嬉しいです。
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