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完全V睡マニュアル:Quest3で毎日熟睡しているVR睡眠環境をさらす('24/4追記)

[2024/1/21] Quest3の改造と、V睡時に使うソフトの内容を追加
[2024/4/3] 赤外線ライトの設置場所についての解説を追加

おはようございます(昼)
VRChatを初めてはや1ヶ月半。かつては「誰がわざわざこんなんやるんだよ」と思っていたV睡ことVR睡眠にハマった。
いうまでもないがVR睡眠とは、わざわざVRヘッドセットを被ったまま横になり、オンライン上のVRChatのワールドで寝るという当代最先端の奇行のことを指す。

V睡をする理由は割と人それぞれのようで、多いのは人といっしょに寝ることで落ち着くという意見。「MPは回復するが体力は回復しない」というコメントが端的に表すように、普通に寝たほうがいいのは分かってるんだけどねーという人の方が多いらしい。
まあヘッドセットなんて明らかに邪魔なもの着けてるんだから当然ではある。

ただ、自分は普通に寝るよりV睡する方が良いと感じ始めた。もちろんヘッドセットは邪魔だが、それ以上に寝付きがいい。前まではベッドに入ってから、うとうとして眠りにつくまで1時間以上かかることがザラだったが、V睡だと10-15分で寝落ちする。同じことを言ってるフレンドも数名観測している。
スマホやYoutubeを見ない(物理的に見られない)というのが一番の理由な気はするが、人と軽く喋ってリラックスしてベッドに入れること、睡眠ワールドのチルな空気感や薄暗さ、控えめなBGMが「寝ろ」と全感覚に訴えてくるのも大きいと思う。

そうはいっても眠り浅いんでしょ?と思われるかもだが、スマートウォッチで見るかぎりバッチリ快眠。アラームが鳴るまで爆睡。深い睡眠も概ね目安となる1時間以上で、寝覚めも普通に寝た時と変わらない。ならV睡するわな。

ただ素人にはおすすめできない。もとい、環境やギアの向き不向きは確実にあり、不適な環境だとこりゃ絶対疲れるなと思う。
そういうわけで、同じようなことを試みる奇特なご友人のために、3ヶ月でそろそろV睡が500時間を超えそうな自分の快眠環境を共有しようと思った次第である。


①ヘッドセット(ハードウェア編)

いうまでもなく一番大事。自分はMeta Quest3を愛用してる。こいつはかなりV睡に向いてる。

なんといっても重要なのは軽さ。仰向けになると重量がモロに頬骨~額にかかるので、100gも違えば別物だろう。500gと重くも軽くもないQuest3だが、700g超のVive ProやValve Indexとは雲泥の差がある。ただ正直これはもっと軽くなって欲しい。
あと重心の位置(顔からどれだけ遠いか)も大きい。寝る時はヘッドストラップを緩めるので、軽く寝返りを打って顔が横を向いた時、重心が遠いとモーメントでヘッドセットがズレやすく不快。パンケーキレンズで本体が薄いQuest3はここが快適。Quest2と寝比べるとよく分かる。

インサイドアウト(ベースステーション不要のやつ)なのも重要だと思う。寝る時はとにかく心労を減らしたいので、寝返りや布団の位置次第でトラッキングが飛ぶストレスなぞ抱えたくない。やはりQuestだ。

ただ、Quest3でも吊るしだと不満な点はある。なので4点ほど簡単な改造を入れた。①充電コネクタ ②レンズ ③接眼部カバー ④ストラップ

①Quest3はケーブルの接続が横向きなので、そのままだと左に寝返りを打ったら壊れる。なのでこういうL字アダプタでケーブルを後ろ方向に逃がしてやる。下が枕ならこれで十分。

L字コネクタ+充電ケーブルの通し方。ヘッドスラップ内側を回すとコネクタを痛めにくい
横向けに寝た時の様子。意外とコネクタに負荷はかからないので寝返りもうてる(3ヶ月使っているが故障なし)

②また自分はメガネが手放せないのでQuest3用の度付きレンズを入れた。メガネをかけてHMDを被るのも、メガネを付けたまま寝るのも御免だからだ。下手すりゃレンズも傷つく。この辺、純正もサードパーティ品も充実しているQuestはありがたい。

③の接眼部カバーはVRCoverを使っている。純正クッションよりも面圧が分散し、肌触り、通気性も良くなって寝心地がよい。

AMVRなど装着感の良い互換フェイスクッションに交換することも検討したが、毎日つけて寝る関係上、汗や皮脂汚れなどが気になるので、外して洗濯できることが決め手となりカバーをチョイス。

VRCover29ドルと高めのフェイスクッション一式と同じ値段がするが、最初から2セット付属のため気軽に交換して使えるのが嬉しい。肌に直に触れる部分だし、寝心地に直接関わる部分なので、ここはこだわってもいい部分だと思う。

④そして最後にストラップ。純正のペラっとしたヘッドバンドは案外寝やすいが、普段のつけ心地を考えるとエリートストラップが欲しい。ただそれでは寝る時に邪魔で仕方ないし、毎度取り替えるのも面倒。
考えた結果、ストラップを二つ組み合わせて解決した。一番試行錯誤したのがこれなので、ぜひ参考にしてほしい。

まずはフリップアップ式のハードなストラップ。普段はこれでホールド感良好。そして寝る時は頭の後ろの邪魔なやつを、90度回転させて頭頂側へ逃がす。

ただそれだと固定ができないので、スポーツ用のヘッドバンドを使う。

↑が普段の状態。元のヘッドストラップと違和感なく共存できている。
で、睡眠時は頭の後ろの邪魔なやつをこんな風に移動させる。

ポジションはお好み。個人的には額に回したほうが安定感がある

こうすると後頭部にはヘッドバンドしかないので、非常に快適になる。普通に寝ているのとほぼ変わらない。固定はそこまでキツくないが、その分疲れないし、睡眠時なら十分。

仰向け時を横から見た様子。ヘッドバンドで固定されているのが分かる

ヘッドバンドは色々試した結果、ナイキのこのキッズ向けヘッドバンドがベストなサイズ感だった。コットン地で触り心地、通気性もいい。

このヘッドバンドを固定する紐は、ダイソーの手芸コーナーで売っている金具付きの紐を2本つなぐとちょうどよい。紐部分がちょうどヘッドストラップの関節部に食い込んで固定されるし、金具で脱着もできる。

ケーブルはこの紐の輪の中を通すと暴れない

YipuVRのヘッドストラップ込で5000円以下でお手軽にできるV睡用MODなので、ぜひ試してみてほしい。
これは確実にQOLが上がる。…まあ要は普通に寝る状態に少し近づいただけだが。V睡はつくづく業が深い。

なおストラップとして評判がいいBOBOVRのヘッドストラップでの同様のカスタムがこちらの記事で紹介されているので、ユーザの人は参考に。

あと地味に困るのが充電の問題。Quest3は充電器の相性次第で給電が追いつかず、ケーブルを繋いでいても充電が減りV睡中に落ちてしまうことがある。
これを避けるには大前提として、両側Type-Cのケーブルでの接続が必須。片側Type-Aでは10Wが上限で全く足りないので、PowerDelivery (PD)規格対応のType-Cケーブルがいる。長さも枕元から伸ばすにしても最低2mは欲しい(できれば3m。ケーブルが比較的柔らかい方が扱いは楽)
ケーブルだけでなく、給電側の機器もPD対応かつ、ロス込みで30W程度の出力がいる。できれば相性問題が起きにくいPPS規格対応のやつ。自分が買って問題なく給電できている推奨の機器を貼っておく。


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※以下旧バージョンのストラップMODを参考に残す。
固定は↑よりもいいが、額に圧がかかるのがマイナス。ただしQuest3本体に固定するので組み合わせるストラップを選ばない。
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…こんな細めのスポーツヘアバンドを後頭部へ回して解決する。これなら寝る時にまったく気にならない。固定力は弱いが、寝るだけならこれで十分。

睡眠モード(ヘッドレスト⇒頭頂部 ヘッドバンド⇒後頭部)
寝てるとこんな感じ。楽。
ヘッドバンドは上側ストラップの根本に固定


②ヘッドセット(使い方編)

ヘッドセットの使い方にも色々便利なノウハウがある。

まず無線化は必須。充電ケーブルだけで面倒なのに、邪魔なのを何本も生やしていては寝るものも寝られない。定番のVirtual Desktopで無線化するのが吉。やはりQuestは強い。

次にヘッドセットの輝度を落とすこと。ワールドの照明を落とすのも重要だが、画面が明るくてはやはり寝づらい。Quest系だと左下のクイックメニューから輝度を調整できる(これはQuest以外でも後述のOyasumiVRで可)。ついでに音量も調整。

左下クイックメニュー⇒右上の明るさから調整

コントローラーも置いてしまう。やはりQuestにはハンドトラッキングの機能がある。VRChat内だと移動はできないが手は動くので、人に手をふったり、XSoverlayで時間を確認する程度はできる。
コントローラーを静置する、ないしジェスチャーコントロールをオンにする、あるいは電源を切ればOK。自分はQuest Proコンなので充電ドックに戻す。充電切れの心配もなく一石二鳥。

最後にパススルーの活用。ここはQuest3の本領発揮になる。
ちょっとお手洗いに目が覚めた時や、喉が渇いた時などは本体の側面をポンポンと2回叩く。これでパススルーになり外が見える。充電ケーブルを外し、頭頂部のヘッドレストを下ろし通常モードになったら、ベッドから起きて用を済ませる。
たまにトラッキングが飛んだり、ワールド内で瞬間移動したりするが、ともかくヘッドセットを外す必要はない。


③寝具

睡眠なんだからここが一番重要に決まってる。というかV睡関係なく全人類はいい寝具を使え。
「VR-HMDは寝具」とかうそぶいて10万使いながら、肝心の枕やマットレスが安物ってのはどういう了見だ。

は個人差があるのでなんともだが、一般論として顔にヘッドセットがあるV睡は首・肩のサポートがある枕の方が向いてると思われる。

後頭部のヘッドストラップを逃がすために穴あき枕やビーズクッションを使うハックもあるらしいが、自分の環境だと後ろはヘアバンドのみなので枕の選択肢は広い。

マットレスもお好みで。参考として、今使ってるZinusのコイルマットレスは寝心地も通気性もよく、通販専門で安いので勧めておく。せんべい布団は20代も後半になるとキツいからさっさといいのを買え

あと地味にあると嬉しいのが抱き枕
こいつがあると、軽く横を向きヘッドセットの重みを預けて寝ることができる。肌触りが良ければポイント倍点。

いい寝具は絶対腐らないので、VIVEトラッカーだのHaritoraXだの買う前にまずは枕とマットレスを買った方がいい


④ソフトウェアの使いこなし

寝るに当たってフルトラは使わない。HaritoraXワイヤレスは持ってるが、あんな邪魔なもの着けてゆっくり寝られるかいというのが正直な所。さらにデカい重い上に、トラッキングが飛ぶので布団が使えないらしいVIVEトラッカーなどLighthouse系については論外。よってインサイドアウト3点トラッキングを前提に、睡眠ギミックをアバターに導入して寝ている。

3点トラッキング向けの睡眠ギミックは主に3つ「ごろ寝システム」「VRC睡眠システム」「らずべりー式」で、他、アバターペンなどがセットになった「Avatar basic Tool」にも同様の機能がある。
これは床(ベッド)コライダーに合わせたポーズをとる「ごろ寝システム」「らずべりー式」と、固定ポーズ+高さ調整機能のある「VRC睡眠システム」「Avatar basic Tool」の2つに大別できる。自然で柔軟なポーズがとれる前者、コライダーがなくても大丈夫な後者と、得手不得手があるので併用がおすすめ。詳しくはこちらの記事を参考に。

なお最もメジャーな「ごろ寝システム」と「VRC睡眠システム」は公式に併用が保証されていて使いやすい。おすすめ。一方、自分は「らずべりー式」と「Avatar basic Tool」を併用している。どちらもModular Avatarで非破壊で導入できるのと、らずべりー式は左向き寝⇔仰向け⇔右向き寝のポーズが自動で切り替わるので、寝姿がキレイだし密着もしやすい。

調整は最初苦戦するが、何回かやってると慣れる。OVR Advanced Settingsを使うと微調整がしやすいのでおすすめ。導入はこの記事を参考に。

そういうわけで、結局寝る時に身に着けているのはヘッドセットのみということになる。

睡眠系以外でおすすめのアバターギミックが「ねこやの腕固定システム」。
自分はミラーを見て寝るため寝姿が結構気になるタチで、手が暴れると気分がよくない。その点このシステムを入れると胸やお腹で手を組む、腕枕などで姿勢が固定できて、周りの邪魔にもならない。やはりModular Avatarで導入が簡単なのも嬉しい。

アバター次第だが、目を閉じた表情で固定できるギミックもあると嬉しい。傍から見ると、目がかっ開いてると落ち着かないので。

またアバターギミックとは別につおすすめなのが「OyasumiVR」。
入眠を自動で検知して各種設定を自動に変更してくれるソフトで、マイクの自動ミュートやリクイン承認の自動化、そして画面の輝度変更といった便利な機能が沢山搭載されている。

自分は結局自動化はあまり使っていないが、入眠前に手動で画面輝度を落とすのと、PCの電源(節電)設定に使っている。VRChatの中からオーバーレイで起動できるので便利。入れておいて損はない。
なお、ワールドの明度を落とす機能は一部のワールドにも置かれているので、どれくらい変わるか、見かけたら試してみるといい。

ポストプロセスでワールドの明度を下げるスライダー
ヨドコロちゃんハプティックコントローラー


⑤その他もろもろ

部屋はキチンと暗くした方が当然寝やすいので、暗くてもインサイドアウトのトラッキングが飛ばない赤外線ライトを部屋に設置する。

この赤外線ライトの設置位置についても試行錯誤した。結果、なるべく視界外に設置するのが一番トラッキング精度が良いというのが結論。自分が普段HMDを被っている時向いている方向に対して、背後&上方向に設置するのがベスト。
(ライトの位置を図の①視界前方向 ②視界横方向 ③視界後ろ方向 の3パターン試した結果、トラッキング精度が良かったのは右端のパターン③だった)

QuestなどのHMDは、赤外線で周囲の様子を見て、今どう動いているかを判断している。なので暗闇でも赤外線があればトラッキングできるわけだが、人間が電球を直接見ると目がくらむのと同じで、明かりを直接見てしまうとかえって周りが見えにくい。そう理屈だと理解している。
部屋のレイアウトにもよるが、カーテンレールなどに設置するとかなり都合がいい。また上記のライトは画鋲に引っ掛けることもできるので、そのやり方もアリ。

あとは最初から前提みたいに書いてるが、ちゃんとベッドで寝ること。V睡が疲れるっていう理由の大半は多分ベッドで寝てないから。
Virtual Desktopで無線化できればさほど難しくない話なので、ぜひ試してみてほしい。なお自分はPCルームと寝室が別なので、寝室にWi-Fiアクセスポイントを立てて有線LANでPCと繋いでる。

あと、これは個人差があるかもだが「自分の寝姿がミラーで見えるようにして寝る」のがおすすめ。
VRというのは催眠に近いところがあるので、「鏡の向こうの自分が寝ている」様子が目に入ってくると、自然と眠くなってくる。なので目を閉じ、横になった姿勢で、すやすや寝ている…というポーズを作ることが、自分にとってはV睡の大事なポイント。
VRChatの標準機能で「Personal Mirror」があるので、これをうまく配置してやるのが吉。

最後にオマケながら、Virtual Desktop環境を使ったPCのリモート操作を紹介する。
Mouse without bordersというソフトを使うと、あるPCから別のPCへLAN経由でキータイプやマウス操作を転送できる。つまりどのご家庭にもあるサブのノートPCを使えば、メインPCを遠隔操作できる。ディスプレイは言うまでもなく今被っているそれだ。Virtual Desktopの本来の用途である。実は今この記事もこのリモート環境でQuest3を着けたまま書いてる。ベッドに入ったまま。

さすがに時代遅れだがキーボードは抜群にいいThinkpad X220

VRChatをやっている時でも、左メニューボタンダブルクリックで瞬時にデスクトップ環境になるので、QOLが爆上がりする。是非試してほしい。


まとめ

完全V睡マニュアルなんて大層なタイトルだが、一言でいえば普通にベッドで寝るのとなるべく近い環境にしろ。外せる物は外せ。あといい寝具を買え。である。
ならまずその頭の変なのを外せ、という指摘はごもっともだが聞かなかったことにする。

諸々見ていくと、やはりQuest3は相当V睡に向いている機種だと思う。
面倒が少ないインサイドアウトのトラッキングな点。比較的軽量でコンパクトな点、パススルーやハンドトラッキング、メニュー周りの機能性。VDで無線化可能。なによりメジャー機種なので、ヘッドストラップなどアフターマーケットのパーツが充実している点。
これより良さそうなのだと、VIVE XR ELITEMeganeXあたりになるが、前者は重いし後者はインサイドアウト環境だとコントローラーが使えない。そもどちらも価格が8万円弱のQuest3の倍以上する。
予算無制限で選べと言われても、結局自分はQuest3を買う気がする。

ただ最後に念押しでいうが、基本VR睡眠するよりは普通に寝たほうがいい。自分は環境が整っているので大丈夫なだけで、VRヘッドセットを被って寝るのはデバフ前提。寝心地の良い環境でないなら、頻度はほどほどにしないと体に悪い。酒や煙草と一緒。
ただまあ、こういうテクノ奇行の面白みとか、起きた時にフレンドの「おはよ~」という書き置きで心が温かくなることとか、家よりも旅先の方がよく寝れるみたいなタイプの人は、試してみてもいいのかもしれない。
用法用量を守ってよいV睡ライフを。

P.S. 毎週木曜日24時~27時にV睡ができる睡眠バー『Baby's Breath』というイベントを開催しています。興味がある方はぜひXのフォローグループSBBB.0289へ参加いただければ。

VRChat:ハルジオンf

では、どこかの睡眠ワールドでご一緒しましょう

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