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SDGs実践事例インタビュー~「SDGs未来都市」倉敷市様と『循環経済』への想いを込める有限会社ウイルパワー様~

株式会社Flexas Z稲葉涼太です。
中小企業の皆様のSDGsに関するお困りごとを解決するSDGsコンサルタントです。
今回は、『SDGs実践事例インタビュー』と題しまして、2020年に「SDGs未来都市」に選定された倉敷市様と、倉敷市を中心にSDGsの活動に取り組み活躍する有限会社ウイルパワー様とのインタビューを通したSDGsの実践活動の記事をお届けします。

SDGsの認知度は高まったが、人もお金も時間もない中で、SDGsの取り組みとは何をどうしたらよいのか困っている事業者の方の参考になればと思います。


【今回インタビューにご協力いただいた方】

・倉敷市議会議員 芦田泰宏 様
・倉敷市役所
 リサイクル推進部 一般廃棄物対策課 主任 木村隆浩 様
                   主事 加藤晃平 様
・有限会社 ウイルパワー 代表取締役 江川健次郎 様

『循環経済は愛』有限会社ウイルパワー様の実践事例

まず倉敷を中心に活躍されている民間事業者のお立場として、有限会社ウイルパワーの江川代表へのインタビューです。

有限会社ウイルパワー 江川健次郎 様

■SDGsを事業として掲げたきっかけを教えてください
江川様
:今回のインタビュワーである稲葉さんが主催と講師をするPMI日本支部(プロジェクトマネジメント協会)が内閣府『地方創生SDGs官民連携プラットフォーム』に立ち上げたSDGsスタートアップ研究分科会のワークショップに参加したのがきっかけ。
その分科会で出会った他組織のスゴイ人たちと話し、自分がやっていることもSDGs活動だと思えた。
それ以来、稲葉さんのことは親しみを込めて「お師匠」と呼んでいてSDGsの相談に乗ってもらっている。

■ウイルパワーとはどういう会社でしょうか?
江川様:
有限会社ウイルパワーは創業1991年、岡山県倉敷市と香川県丸亀市でリユースショップ「リユースマン」を運営し、また国内で流通しない商品を発展途上国に輸出している。
『循環経済』の存在を高めたいと思っている。

■循環経済についての『想い』を聴かせてください
江川様:日本経済は大量生産、大量消費で発展してきた。生産・消費は「動脈」のビジネス。
それに対して、リユースやリサイクルは「静脈」のビジネス。
人間も動脈と静脈があって血液が循環するから生きているように、動脈産業で生産されたモノを循環させるビジネスに誇りを持ち存在感を高めたい。

妻や子供に「お父ちゃんカッコイイ」と言われる仕事をしたいと思っている。
ショップ名の「リユースマン」の由来は、アメリカでは消防士「ファイヤマン」が市民から尊敬され、子供たちのヒーローです。私たちもファイアマンと同じように、カッコいいと思ってもらえるように「リユースマン」と名付けた。

■SDGs関係の賞を色々受賞されています。賞を取ろうと思ったきっかけは何でしょうか?

2020年倉敷市「障がい者福祉功労」受賞
2020年環境省 第8回グッドライフアワード「環境と福祉賞」
2021年「おかやまSDGsアワード2021」
など受賞。

江川様:お客様や自社の従業員に「うちはこういう会社」と知ってもらう上で公的機関に認められることは大きい。

行政にも自信をもって話せるし、従業員も自信をもって活動できる。
一言で言うと「誇り」を持てる。

■SDGsを会社として掲げようと思った理由について伺わせてください
江川様:
企業とは世の中のために活動して収益を得ると思っている。
今対価を得られなくても、世の中のために活動していることで企業の存在価値を地域で高めたい。

■SDGsを会社として掲げた当初、困ったことはありましたか?
江川様:
以前は、社内でも異論はあった。
会社の情報は社内に公開していたが、寄付やボランティアをするよりも営利活動に力を入れようという声はあった。
ただ、今は変わった。

地域の人は、会社が良いことをしても悪いことをしてもその会社のことをよく知っているので社会貢献をしている意義はあると思っている。

■SDGsを会社としてよかったことは何でしょうか?
江川様:
以前は、SDGsというと宗教的な活動を始めたと言われることもあったし、何のためにやっているのか聞かれることもあった。
ただ、「やりたいからやっている」中で、表彰を受けたり、活動を継続する中でわかってくれる方はわかってくれるようになった。

本業以外でも、地域から食品ロス対策のボランティアの依頼など、自分が思う以上に活動機会や連携が広がった。

スタッフに負担をかけている点も多いが、スタッフが乗り越えてくれていてありがたい。

■SDGsの取り組みの具体的な活動を教えてください
江川様:
テーマは『資源循環』をキーワードに元気で優しい街づくりをすること。
『具体的なこと』というよりも、本業のリユース・リサイクル事業はすべてSDGsに結びついている。

本業以外でも以下のようなボランティア活動を行っている。

…など。

■今お困りのことはどのようなことがありますか?
江川様:
「循環型経済を」実践する上で大事なのが『3R政策(リデュース・リユース・リサイクル』だが、3R政策がうまく機能しないことに課題を感じている。
法律で『廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)』は規定されており「廃棄物」は規定されている。

しかし、リユース・リサイクルは関連法案があるものの、明確に定義する法律が無いと感じている。

そのため、例えば逆有償(排出側の処理側に対する支出が受け取る代金を上回る取引)の場合、本当はリユースとして活用できるモノでも廃棄物扱いされ、廃棄物の法律で規制されるためリユースとして取り扱えない。

法律は廃棄物処理用という法律で廃棄物の取り扱いに関する法律があり、廃棄物の一部を再資源するリサイクル関連法があるが、リユースに関しての法律はなく、現場の現実と合っていない。

そうした現実との乖離に対して環境省等は「総合判断説」を求めているが、判断基準が無いため現場の地方自治体も判断が難しい。

そうした問題をもっと行政と話し合いたい。

■今後やろうとしているSDGsの取り組みを教えてください
江川様:サーキュラーベース」の構想をしている。
具体的には、価値がわからないもの・利用できる変わらないものを集積して流通を起こす場所を作ろうとしている。
例えば、まだ価値があるかわからない骨董品など、モノを流通させたい人と探している人を多く集めて価値を創るマーケットにしたい。

今は、補助金の関係で香川県の善通寺市から作り始めているが、水島コンビナートを有している製造業の街である倉敷市で作りたい。
製造だけでなく静脈経済を倉敷市で広めたい。

■SDGsに取り組もうとする世の中の事業者に向けメッセージをお願いします
江川様:
先ほどと重なるが企業が得る収益は、世の中の役に立った対価。
企業が続いている以上、世の中に「ええこと」をしているから成り立っているはずなので、全てSDGsに結びついていると思う。

SDGsのために特別なことをやろうと悩むのではなく、今の仕事の「ええこと」を掘り下げればSDGsに繋がると思う。

『循環経済は愛』とよく言っている。
その心は、リユース・リサイクル誰かに喜んでほしい、誰かの役に立ってほしいという思いがあるから成り立つ。

モノを捨てるのは簡単。

そうではなくモノを誰かに役立てて欲しいからリユースに回そうと思う、想いがあるから顧客はリユース事業者に持ち込んでくれる。
愛があるからこそリユース・リサイクルは成り立つので『循環経済は愛』だと思っている。


『SDGs未来都市』倉敷市様の活動と官民連携

続いて、SDGs未来都市に選定された倉敷市様へのインタビューです。

倉敷市議会議員 芦田泰宏 様


倉敷市役所  木村隆浩様


倉敷市役所 加藤晃平 様

■倉敷市が市としてSDGsを掲げてSDGs未来都市に応募しようとしたきっかけを教えてください
木村様:
きっかけの一つとして「高梁川を軸にした連携」がある。
昭和29年に倉敷市の実業家である大原総一郎氏が、高梁川を流域の運命的共有物として捉えて、高梁川流域連盟という組織を創設した。
以降、新見市、高梁市、総社市、早島町、矢掛町、井原市、浅口市、里庄町、笠岡市の7市3町で流域全体の発展や向上のために取り組んでいる。
この連携した取組が、SDGsのパートナーシップという考え方に共通するので、SDGs未来都市に応募した。

■倉敷市として民間企業へどのような支援をしていますか?
木村様:
SDGsというくくりで言うと、支援ではないが、市の企画経営室という部署がSDGsの普及啓発を担っている。
そこが事務局となって、高梁川流域でSDGs達成に向けて取り組んでいる企業や団体を募集し、登録する「倉敷市・高梁川流域SDGsパートナー」という制度を実施している。

■倉敷市・高梁川流域SDGsパートナーになるメリットを教えてください
木村様:
SDGs未来都市 倉敷ウェブサイト」で取組をPRすることができる他、SDGs達成に資する取組を行うにあたって、資金調達のためにクラウドファンディングを利用した場合、利用手数料の一部の補助を受けていただくことができる。

■パートナー企業とどのような活動をしていますか?
木村様:
例えば、イオンモール倉敷で行ったイベント「みらいを、みんなで高梁川流域SDGsフェスタ」では、ワークショップや販売などで自分たちのSDGsの取組をPRしていただくために、パートナーの皆さんに出展していただいた。

■賞を受賞したりパートナー登録すると企業の信頼感は増しますか?
木村様:
パートナー登録は市が何か保障するものではないので、信頼が増すかはわかりませんが、取組を知っていただくキッカケにはなると思います。

■官民連携事例①官民連携啓発イベント
官民連携の啓発イベントを開催されているとお伺いしましたのでお伺いさせてください。

木村様:環境保全全般の関心の理解を深め、ごみの減量やリサイクル・リユースの意識向上を目指す市民参加型の環境イベント「くらしき環境フェア」にウイルパワー様と、「不用品で社会を元気にする」をテーマに福祉や教育や医療を不用品でサポートするAMDA社会開発機構様が連携してリユースを実践するブースを設けていただき、倉敷市の3R政策の推進にご協力いただきました。


■官民連携事例②一時多量ごみ条例改正
民間からの要請を受け、『一時多量ごみ』の条例改正が行われたと伺いました。詳しくお伺いさせてください。

加藤様:家庭から一時的に多量に出るごみを一時多量ごみという。
条例改正前は、以下の3つしか一時多量ごみの回収方法が無かった。
①小分けにして決められた曜日にごみステーションに出す
②ご自身で環境センターや清掃工場に搬入する
③粗大ごみに限って戸別収集制度を利用する

いずれも単身高齢世帯などで自宅から一括で収集運搬を行ってほしいニーズにこたえられていなかった。今後、高齢化や核家族化が進展する社会に対応するためにも必要な制度として運用を開始した。

令和5年4月から一時多量ごみの収集運搬は市の一時多量ごみの収集運搬許可を取得した業者に依頼できるようになった。
これにより不定期で計画外の要望に関して民間を活用できるようになった。
※倉敷市:一時多量ごみ制度のご案内

江川様:補足すると、高齢者が同居者がお亡くなりになる、老人ホームに移るなど急に家を引き払う場合に、高齢者が一人で決められた日に多量ごみを持ちこむのは難しい。
倉敷市に限ると現実的には急に多量ごみを引き取ってもらう場合はシルバー人材センターに頼むしかなかったが、厳密に言えばシルバー人材センターへの依頼は玄関の外まで高齢者が自分で多量ごみを持ち出さないと違法になる。

それに、シルバー人材センターのお年寄りが重たい家具等を運ぶのも無理があるなど、いろいろ問題があった。

その問題を議会で取り上げ条例改正を早めてくれたのが芦田議員だと思っている。

■市議会議員として芦田様の一時多量ごみに対する問題意識をお伺いさせてください
芦田様:
江川さんと出会い、リユースそのものをターゲットにした法律はないという話を聞いた。
規制業種としての廃棄物を扱う法律によって、リユースを扱う業者が違法と判断されかねないのが問題だと思った。
直接リユースを規定する法律があることがリユース業者の育成に繋がりSDGsにもつながる。

また、空き家の問題も社会問題。
遠隔地に住む親が亡くなったときの空き家の片づけや、高齢者世帯が施設や子供の家に身を寄せるときも多量ごみの問題に悩む方が多い。

■条例改正の意義はどのようなところにありますでしょうか?
芦田様:
制度を整備することは、制度を整備することは、事業を行う人の士気を高め倫理観を向上させることに繋がる。

江川様:リユース・リサイクルに対するルールが無いと、悪徳業者の温床になる。真っ当な業者が事業をできず、ルールを守る気が無い業者がやりたい放題になる。
議会で取り上げてくれて「良く言ってくれた」と思った。

芦田様:ルールを定め、本業として行う真っ当な事業者を育てることが持続可能性に繋がる。

■芦田様のSDGsへの想いをお伺いさせてください。
芦田様:
SDGsは、企業が取り組むには緊急性・切実姓が無いと思われがちだし、株価に影響するから取り組むのは、大きな上場企業の話で、多くの中小企業には縁遠いと思われるかもしれない。
理想的なのは本業がSDGsに直結すること。

私は、以前大手商社に勤めていた。その頃はまだSDGsが前身のMDGs
(=ミレニアム開発目標)と呼ばれていたが、既に自分たちの仕事が、直接
環境・社会の発展に繋がるアプローチをとっていた。例えば、鉱山開発を
する時は、鉱山から港まで鉄道を通し、周辺に道路や学校を作り、近隣の
住民にもいい影響を与えられることを意識していた。

■芦田様から倉敷市と民間へのメッセージをお願いします
芦田様:
倉敷市のSDGsパートナシップ制度も、次の段階に進むと良い。
企業ごとのテーマ設定をしているが、例えば年度ごとの取組の目標設定や計画作成を行うなど、もう少し制度を深めたい。

また、今年はG7広島サミットの労働・雇用大臣会合の舞台になった。
倉敷市のSDGsも、人への教育・投資やジェンダー平等など、サミットのテーマに繋がる活動があるとよい。


■倉敷市役所はSDGsの推進に励む民間企業についてどのようにお感じになられていますでしょうか?
木村様:
当然のことながらSDGsは国、県、市町村など自治体だけの力では達成できない。
企業の皆さんがSDGs推進に励んでくださるのは、SDGs達成に向けて非常に重要なことであり、心強く感じている。

■倉敷市役所として、今後のSDGsとして取り組もうとしていることや今後の展望をお伺いさせてください
木村様:
皆さんがSDGsを取り組むにあたって、情報を発信したり、企業間の連携に繋がるよう取り組んできた。
SDGsの取組が活発化している現在、自治体主導だけでなく、企業主体で新たな取り組みや企業間の連携が生まれることが理想だと思っている。

■最後に、倉敷市役所から民間企業へメッセージをお願いします
木村様:
まだどのように取り組めば良いのかわからない方もおられると思うが、現在されている事業は、SDGsのゴールのどれかに直接的もしくは間接的に当てはまると思う。
そこから、少しずつ広げていって、「持続可能」というキーワードを外さずに、SDGsを事業に取り込んで、事業拡大、そしてSDGs達成を目指してもらえたらと思う。

おわりに

今回は実際にSDGsを掲げて事業を行っている民間事業者の有限会社ウイルパワー様と、SDGs未来都市の倉敷様の実践活動インタビューを通じて、SDGsに取り組もうとされる世の中の事業者様に向けメッセージをいただきました。

弊社では今後とも、SDGsを実践されている方の実践事例のインタビューをお届けします。

このnoteをご覧になって、SDGsをやってみて直面したお困りごとを相談したい方、実際にSDGsに取り組む際の事例を知りたい方がいらっしゃいましたら、ぜひお問い合わせフォームから弊社までご連絡ください。

・株式会社Flexas Z Webサイト:https://flexas-z.com/

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