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【M-1同じネタ問題】敗者復活戦の生中継て要らなくない?

毎年年末の恒例行事となっているお笑いの祭典「M-1グランプリ」。

今年は敗者復活戦から決勝までぶっ通しで7時間の生放送となるそうだ。

一大イベントとしてM-1をさらに盛り上げようというテレビ局の意気込みがうかがえるが、なにか、わたしはウキウキしない。

気がかりなことがあるからだ。

近年はM-1決勝戦の当日となるとインターネットのトレンドはM-1一色と言っていいほどになるが、その中にあるネガティブな書き込みが見受けられる。

それは敗者復活を勝ち上がってきたコンビにあてられたもので、

「え、敗者復活と同じネタじゃん。冷めたわ」

というものである。

なんか、ヘンだ。

敗者復活枠のコンビが、当日敗者復活戦でかけたネタを、もう一度決勝の場で披露することは、ごくふつうのことに思えるからだ。

寒空の下の野外ステージで、凍えながらも見守ってくれたファンの笑いと歓声を後押しに、栄光の決勝のステージへと駆け上がっていく。
敗者復活戦でウケたネタを自信を持って披露し、その勢いのままに会場の笑いをかっさらい、高得点を獲得する。

おそらくそれが、以前の姿だった。

だが、状況は変わってしまった。

敗者復活戦のテレビ中継も全国放送されるようになったのはM-1が5年ぶりに復活した第11回大会(2015年)から。
こうして、敗者復活組のコンビはネタを「隠して」おくことができなくなった。

でも多分、視聴者は悪くない。

午後の敗者復活戦に続いて夜の決勝を見ていた熱心な視聴者は、同じ日にテレビで二度同じネタを見ることになる。

「また、同じネタかよ」

と思ってしまうのも無理はない。

でも、思う。

敗者復活戦でウケたネタを、決勝のスタジオでかけて何が悪いのか?
むしろそうしない理由は一つもない。

当日敗者復活の会場でウケたネタならば、決勝でウケないはずがない。
とにかく面白いネタが見たいならば、歓迎すべきことだ。

第2回M-1グランプリ以降、敗者復活組のコンビの出順は最終枠(9番目)に据え置かれてきた。

十分に温まったスタジオの空気の中で、敗者復活を勝ち抜いてきた期待を持って観客に迎えられる、この上ないシチュエーションだ。

そのため敗者復活組は非常に成績が良く、2007年サンドウィッチマン、2015年トレンディエンジェルと二組も優勝者を送り出してきた。

どうも、そんな劇的なストーリーが生まれる可能性は著しく減ってしまったようだ。

せっかく準決勝を勝ち抜いてきたコンビに比べて敗者復活組があまりにも有利であることが問題視され、2017年の第13回大会より、敗者復活組の出順も笑神籤(えみくじ)によってランダムに決められることになった。

それに加えて、敗者復活戦が生中継されることを考えると、敗者復活のネタとそれを勝ち抜いた先の決勝でのネタと、最終決戦のネタと、最大3本のネタを用意しておくことが望ましい、ということになる。

しかし、漫才師にとって、ガチの勝負ネタはそんなに数多くあるものではない。
多くのネタを用意しておくということは、その分個々のネタのクオリティが下がってしまうのもまた避けられないということだ。

以上の要因により、敗者復活組にとっては、M-1グランプリ決勝の舞台は酷なものになってきている。

繰り返すが、私個人としては、敗者復活戦を勝ち抜いたネタで決勝を戦って何が悪いのか、むしろそうすべきだろ、と思う。

これは生中継することで、朝日放送・テレビ朝日が敗者復活戦を「商品」にしてしまったことの弊害に他ならない。

決勝進出者に敬意を払うならば、生中継の全国放送は決勝のみにとどめるべきじゃないの?
地上波の全国放送で漫才を披露するなんて、今の時代この上なく特別なことなのだから。

M-1グランプリ7時間拡大放送のニュースを見てそんな感想を抱いた。

繰り返すが、M-1の敗者復活戦生中継は、要らないと思う。

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