見出し画像

オーストラリアのブレイクコア・シーン

ブレイクコアには国ごとに特徴的なものがあり、例えばイギリスであればジャングル/ドラムンベースやUK Raveのファンデーションが反映されたダンスフロアに向けて作られた曲が多く、オランダはガバ/ハードコアの文脈を活かした土着的な曲が目立ち、ベルギーはパーティー向けのキャッチーな素材を使ったマッシュアップ・スタイルが代表的である。他にもアメリカ、フランス、日本、ドイツにも国ごとに共通した趣向がある。

そして、オーストラリアのブレイクコアはノイズやスピードコアにエログロでシニカルなサンプルを好んで使ったスカムな作風で知られ、数々の迷盤/名盤を残している。悪趣味なブレイクコアは世界中にあるが、オーストラリアのブレイクコアが持っている悪趣味さは他とは比較にならないと言えるが、芸術性を強く感じさせるピュアな物が多いのも特徴的である。

2000年代にはSystem Corrupt、Painfree Foundsound Institute、Goulburn Poultry Fanciers Society、Shitwankといったレーベルが精力的に作品を発表。Toecutter、Passenger Of Shit、Maladroit、7U?(DJ Rainbow Ejaculation/FUNKO)、Killjoy、Al Corrupt、Main$tream、B.I.N.T.といったアーティスト達が活躍し、ヨーロッパのブレイクコア・シーンでも人気を得ていた。

先日、Murder Channelの英語版Blogにて7U?とMaladroitのロングインタビューを公開した。オーストラリアの初期ブレイクコア・シーンに関わっていた彼等に当時の状況について語って貰っている。インタビューではオーストラリアという国の特殊性、フリーパーティーやハードコア・テクノとの繋がり、曲作りの方法などについて語ってくれており、これを読めば彼等の強烈な個性がどの様にして獲得されていったのかが理解出来るかもしれない。

インタビューと合わせて7U?が約20年に渡って様々な名義で発表してきた曲を纏めたプレイリスト『7U? Hits and Misses』と、MaladroitがMurder Channel Show@PRSPCT radioに提供してくれたミックスを記事の中で公開しているので、興味のある方はそちらも合わせてチェックして頂きたい。

日本語で読める物としては、ToecutterのインタビューがGHz Blogにて公開中。『ブレイクコア・ガイドブック 上巻』ではPassenger Of Shitのインタビューを貴重なフライヤー、スタジオ写真と共に載せている。

ブレイクコア・ガイドブック 上巻

2009年から2012年まで運営に関わらせて貰っていたGHz music storeでは、Toecutterと7U?から直接仕入れたCDを幾つか販売し、日本にいる数少ないオーストラリア・ブレイクコア好きの方々に買って頂いていた。

フィメール・メタル/パンク・バンドを素材とした『Tough Titties』、オーストラリア出身でイギリスで活動している俳優/ミュージシャンRolf Harrisのトリビュート『The Rolf Harris Mashup CD』など、彼等から仕入れた作品はどれも面白い物ばかりだった。だが、凄まじく際どいアートワークを使ったCDも幾つかあり、それらは規制の対象となる為、CDの盤面しか日本に届かなかったこともあった。

フランスのレーベルBRKはオーストラリアのブレイクコア・シーンとの繋がりが強く、BRKのコンピレーションCDは実質オーストラリアのブレイクコア・シーンのショウケース的な内容でもあったので、BRKのカタログも全て仕入れて販売していた。今思うと結構レアなCDをGHz music storeでは沢山販売していたと思う。

System CorruptやGoulburn Poultry Fanciers SocietyのカタログはCD/レコードでしか販売されず、デジタル・リリースがされていない物ばかりであり、今では入手が難しい。
現在、オンライン上ですぐに入手可能なオーストラリアのブレイクコアとしては、Main$treamのレーベルPainfree Foundsound InstituteのカタログがWebサイトにてWAVで無料公開されている。

Painfree Foundsound Instituteの名盤コンピレーション『Drop Name Records』には、最も勢いのあった頃のオーストラリア・ブレイクコア・シーンの中心アーティスト達がほぼ全員参加しており、Venetian SnaresやDrop The Limeといったアメリカやヨーロッパのブレイクコア・アーティスト、Current ValueとPaul Blackoutなどのハードコア・ドラムンベース・アーティストも参加している。

End.Userのラガコア・クラシック「Shot Gun Anthem」を収録したMain$treamとのスプリット・レコード『Mutual Obligation EP』、実の兄弟であるDysphemicとPassenger Of Shitのスプリット・レコード『When The Shit Hits The Fans』などもWAVにて無料でダウンロード出来る。

ShitwankのBandcampではPassenger Of ShitのアルバムやEPがデジタルで販売されており、ENDE RecordsにはMaladroitやKilljoyのアルバムがアップされている。TNIが配信しているオーストラリアのアーティストだけのミックスや、Bloody FistのBandcampもオススメだ。
最後に、個人的にお気に入りのオーストラリア・ブレイクコアを幾つか載せておくので、興味のある方は是非チェックしてみて欲しい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?