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ポリティカル・ラガジャングル


先日、FFFのニューアルバム『Eternal Mind』がPRSPCTから発表された。前作『Part Of The Order volume』と同一線上にありながらも更に実験的な側面が強く出ており、フットワーク~エレクトロ~ニューエイジ~ノイズ~ダークアンビエントをジャングルとブレイクビーツ・ハードコアとミックスさせた興味深い内容となっている。今作はFFFが別名義でクリエイトしていたエクスペリメンタル・ミュージックの要素が反映されているようであり、前衛的な電子音楽が好きなリスナーにも受け入れられると思う。

同時期にDev/NullはトラディショナルなUKジャングル~ダークコアを自身のエクストリーム・ミュージックのバックグラウンドを活かしてモダンにアップデートさせた力作をFuture Retro Londonから発表。The Outside AgencyのDJ HiddenもジャングルのEPを年内にリリース予定らしく、ハードでレフトフィールドなジャングルの勢いが増していくかもしれない。

ここ数年ジャングルの進化は止まらず、凄まじいスピードで世界中からユニークなスタイルのジャングル・トラックが生まれている。アーティストとレーベルの数は増加し続け、ジャングル・シーンはポジティブなエネルギーに満ちていて、とても健康的に見える。今後もこの勢いは持続されていくはずだろう。

個人的な願望としては、ラガジャングルのリリースが減ってしまったのが残念であるので、モダンなフィーリングのラガジャングルをもっと聴いてみたいと思う。

現行のジャングルにもラガジャングルは存在するが、その数はとても限られてきている。D - Dial​-​M「Squeeze」、Dr. Colossus「Snake. Rat. Cat. Dog」、Champion Sound「Posse」、Murder Most Foul「Dogfish」など、ラガジャングル好きが反応するルーディーな曲はリリースされてはいるし、トラックの中でラガマフィンやサウンドクラッシュのサンプルが使われたラガジャングルに近いスタイルのものは多数あるが、ストレートなラガジャングルに出会う頻度は少なくなってきた。

ラガジャングルの魅力は色々とあるが、ポリティカルなメッセージが込められたラガジャングルというのもあり、それらには強力なエネルギーが感じられる。

2000年代はラガジャングルの第二の黄金期であったと思うが、そのときにも時代背景が反映されたポリティカルなラガジャングルが幾つかリリースされている。

特に印象深いのはジョージ・W・ブッシュを痛烈に批判したAaron Spectreの「Look Out fi Liar」はラガジャングル史に残るエターナルなクラシックだ。同じく、ジョージ・W・ブッシュへ向けられたJahbaの「Bush is a Pussycloth」、日本からアメリカへの警告が込められたRyo The Skywalkerの「Big Gun Salute」をサンプリングしたGeneral Maliceの「Coppershot」も忘れられない。

ラガジャングルに対して攻撃的で野蛮なイメージを持たれることもあるかもしれないが、様々な問題に対して立ち向かおうとする力強い曲もある。そういったラガジャングルをもっともっと聴いてみたい。

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