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『ゴアグラインド・ガイドブック』

僕の書籍を出版してくれているパブリブから少し前に『ゴアグラインド・ガイドブック』という超マニアックな本が出た。

パブリブは『ヴァイキングメタル・ガイドブック』『プリミティヴ・ブラックメタル・ガイドブック』『デプレッシヴ・スイサイダル・ブラックメタル・ガイドブック』『ウォー・ベスチャル・ブラックメタルガイドブック』といった書籍を出版しており、メタルの中でもマニアックなサブジャンルを積極的にプッシュしていたが、遂にゴアグラインドの本までもパブリブから出版された。

本の紹介文では、『世界過激音楽』シリーズで最も過激!と書かれていたが、まさにその通りな内容。ページを開いていけば、かなり際どいアルバム・ジャケットが並んでおり、見るだけで相当な衝撃を受ける。

ゴアグラインドに関しては『ゴアグラインド・ガイドブック』の著者である田上智之氏のまえがきにて詳しく書かれている。

1980年代後半、スラッシュメタルに「死」のテーマを持ち込み、よりおどろおどろしく危険な音楽性をもたらしたデスメタルが誕生した。同じく1980年代後半、ハードコアパンクにさらなるスピード感と過激なテーマや世界観を付け加えたグラインドコアが誕生した。そして1988年、イギリスのバンドCarcassがデスメタルとグラインドコア両者の要素を掛け合わせた作品『Reek of Putrefaction』を発売し、その音楽性は後に「ゴアグラインド」と呼ばれるようになった。
ゴアグラインドはデスメタル影響下の極端にチューニングを下げ、時にはほとんどノイズと化したギターやベースと、グラインドコア影響下のブラストビートなどを多用したスピード感あふれるドラムによって主に形成される。特にブラストビートの速さは重視されることが多く、速いブラストビートを奏でられるドラマーはカリスマ的存在になっている。ヴォーカルはピッチシフターと呼ばれる音程を変化させるエフェクターを使用し、低く唸るようなデスボイスをさらに低くしてより邪悪で危険度の高い声に仕立て上げていることが多い。ピッチシフターを使った歌唱法には声の出し方を工夫したり、また新たなエフェクターを使用したりして、まるでうがいをするときのようなゴボゴボとした声を出す通称「下水道ヴォーカル」「溺死ヴォーカル」といったものもある。またピッチシフターを使わず素の声でより邪悪なデスボイスを出すバンドも多く、「ノンエフェクトヴォーカル」が売り文句の一つになることもある。バンドの数も多いがワンマンプロジェクトが多いのもこのジャンルの特徴である。ドラムマシンやPCの音楽ソフトで打ち込みドラムを作っているプロジェクトがほとんどで、その際人力離れしたとてつもない速さのブラストビートを取り入れることが多い。

『ゴアグラインド・ガイドブック』まえがきより

『ゴアグラインド・ガイドブック』にはディスクレビューに加えて、Olli (Gut, Libido Airbag, Nunwhore Commando 666)、Buraak (Jig-Ai, Destructive Explosion of Anal Garland)、Narutoshi Sekine (Obliteration Records / C.S.S.O. / Butcher ABC / GRAVAVGRAV)などの貴重なインタビューや、「ゴアグラインド用語集」「おもしろくて、くだらないゴアグラインドMUSIC VIDEO」」「死体・ポルノ画像ジャケット・カルチャー解説」といったコラムが載っており、ゴアグラインドとその周辺ジャンルの歴史を深く知ることが出来る。

自分がゴアグラウンドの存在を知ったのは、サイバーグラインドに熱中していた頃、それらの打ち込みグラインドコアを探している過程で辿り着いた。新宿にあったNATとALLMANに通っていたときに幾つかのゴアグラインド関連のCDを購入して聞いていた。
ブレイクコアとゴアグラインドを行き来するアーティストもおり、日本のAbsurdgodやアメリカのOtto Von Schirachなどがそうである。

『ゴアグラインド・ガイドブック』は読む人を選ぶかもしれないが、ハマる人にはとことんハマるはずだ。トラウマレベルのエログロなイメージが大量にあり、アートブック的な側面もある。
広く一般的にオススメは出来ないが、まずはこういったジャンルがあり、それをまとめた本が出たことは知って欲しい。興味が出た方は是非チェックを。






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