Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『カルメギ』

 2014年11月にKAATこと神奈川芸術劇場で上演されたソン・ギウン 作、多田淳之介 演出の『가모메 カルメギ』を観たのですが、まさに今東京都民が置かれている状況と半分ぐらい重なる舞台設定としては、そのトラブル続きでゴタゴタと準備しているあいだに日中戦争が起きてしまったがために、かつて実際に1940年に予定されていた東京オリンピックの開催権を返上することになる未来に向かっていく話だったのか。

 真ん中に空洞が開いているアーチ状の立体構造を挟んで客席が分かれていて、その両面から向かい合って観るようになっているセットの舞台だったのだが、途中から俳優同士の互いを追いかける動きがレコードの回転のようになってきて、チェーホフの『かもめ』を原作のベースにして役柄を韓国人の若者や日本から来た小説家に置き換えた日韓合同キャストで大日本帝国によって統治されていた時代を演じる趣向のため言語が入り混じっているので、その台詞を翻訳した日本語字幕が表示されるアーチの真ん中を通ってぐるぐる回り続けている。トレープレフ→ニーナ→トリゴーリンと続いていく、感情的に好きだと告白する側/される側、権力的な支配/被支配等の関係が絡み合って悲喜こもごもが裏表になった彼・彼女らの恋路に伴って進行方向が決まっているのがだんだん醸し出されていく仕掛けなのだが、衝突する大きな力に振り回されるその回転の模様をどちら側から見るのかによっても変わってくる。

 さらに韓国で製作が始まったこの作品を日本に持ち帰って上演するというプロジェクトなので、主人公トレープレフにとってのヒロイン、ニーナが劇中の「ここ」から内地(朝鮮に対する日本)に旅立つ話を戦争を挟んだ80年後のそこ=旧・内地で演じることになるという時空間の翻案が加えられている。

 1930年代の朝鮮半島という設定で響き渡るPerfume(2010年代のニッポンの音楽)の曲が一連の東京デスロックのトレードマークのような演出だが、日韓合同キャストのバイリンガル演劇で巧みに焦点化(照明と音響のサスペンスフルな「宇宙のコントロール」)される<二つの言語の衝突>のライブ感がまさに劇場内のスピーカーから交互にミックスされて鳴り響くK-POPとJ-POPの弁証法……どんな実験的な表現に挑戦しても落とし所が演劇LOVE(と地球と平和)なのはつんく♂か多田淳之介かっていうことに俺の中ではなっている。

・『가모메 カルメギ』::Tokyo Deathlock http://deathlock.specters.net/index.php?e=54

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