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歌詞が天才選手権優勝曲『Get You Alone』について

 EXOベッキョンさんのソロ曲、Get You Aloneの歌詞が良すぎるという話がしたい。


 ずっと前からしたかったんですがなんやかんや長いこと忘れてたので今します。お風呂で歌ってたらなんか思い出したんですよね。思い立ったが吉日なので。

 Get You Aloneの歌詞を一言で説明すると、悪い男が女の子をたぶらかす曲です。でもこの歌詞が本当によくて…………。作詞はいしわたり淳治さん。天才の歌詞です。

 というわけで、この記事はGet You Aloneの歌詞についてだらだら語るだけのnoteです。この解釈が正解だと言うつもりは毛頭なく、単に私が思ったことを取り留めもなくお話ししていきます。

1番

Let's Get It Started 夜に溶けて
眠らない夢の中 Hanging Around

 「眠らない夢」とかいう表現めちゃくちゃよくないですか????

 この冒頭の二節でこの曲の方向性とムードがばちっと決まる。「夜に溶けて」という表現は比喩が効いているし「眠らない夢」は一種のオクシモロンですね。シェイクスピアがよく使ったレトリックで、「冷たい炎」のように矛盾した言葉をつなげることです。眠っていないのに夢の世界にいるような……ロマンティックさと妖しさの共存する世界観が垣間見えます。


君はなぜか 僕を悲しい目で 抱きしめるけど
ひとつの愛の型にはハマれない

 序盤から最悪ポイントその①が出てきてウッキウキです。「ひとつの愛の型にはハマれない」! すごい表現ですね!

 一人の相手と愛しあって添い遂げるのが理想的な愛の形だとすれば、そんなものにはまれない。紋切り型の愛にこの身をはめ込もうとしても逸脱してしまう。それは自由でいたい、ということです。つまるところ僕は複数の女性と関係を持ちます、というのをめちゃくちゃ婉曲的に言っている!! すごい!!

 というか「なぜか」ってなに? 理由分かってんだろ。ここでわからない振りをしてるのがまたタチが悪い。


この心が求めるもの すべてを手に入れたい

「求めるすべてを手に入れたい」は細かい趣を無視すれば「気になる女は全員モノにしたい」と解釈していいと思うんですが、この歌詞が2番との比較でいい仕事をするんですよね……!

 比較の話は置いておいて、もう少しこの歌詞について掘り下げてみたいと思います。

 普通の人間は挫折を知ってあきらめることを学びます。なのにこの男は「すべてを手に入れたい」と言ってはばからない。もしかすると顔が良すぎてしかるべき挫折を経験してこなかったために、情緒が十分に発達していないのかもしれません。ヤバい男です。

 あるいはこう考えることもできます。過去の大きな喪失の経験から、反動で多くを求めるようになってしまった。たとえば家族から十分な愛を受けてこなかったために、異様に愛に貪欲になってしまったとか。かわいそうですが、いずれにせよヤバい男です。そう、この男の真のヤバさは浮気するとか二股かけるとかそういうことにあるのではなく、心に欠陥を抱えているということではないでしょうか。


欲張りじゃない 素直でいたいだけ
悪い男だろう?

 自己申告助かる~~~

 悪い男ほんとうに大好きなので……確定申告ありがとうございます……。

 悪いことをしている自覚があるというのが大事なことで、もっと言うと「素直でいたいだけ」なのが「悪いこと」という自覚がある、というのが重要です。

 普通に考えれば欲張りなのは悪いことで素直なのはいいことですよね。でもこの男は、「素直でいたいだけ」なのが「悪いこと」だと言っている。それは、「欲張り」を「素直」と言いかえる自分の心の狡さも自覚しているということです。

 「素直でいたいだけ」と言いながら、その実それが詭弁であるとわかっている。だって女性にとってはどっちも一緒ですからね。実害は変わらない。わかっているのに「素直」と言いかえるのは自分に言い訳をしているのでしょうか? だとするとこの男は自分がやっていることに罪の意識がありそうです。「悪い男だろう」にも自嘲の色が見えてくるかもしれません。

 一方で、「悪い男な自分」に酔っているという可能性もあります。心の命ずるまま、素直に悪いことをするというのは背徳の味でしょう。その美酒に酔って悪い男である自分を謳歌している。そんな線もありそうです。

 でもやっぱどっちにしろヤバい男なんですよね。

 いずれにせよ、「悪い男だろう?」と問いかける形になっているのは「自分は悪い男だけれど、それでも君はこんな僕がいいんだろう?」というように女性を試す意思が垣間見えます。最悪だ~~~!!


サビ

To Get You Alone
僕だけの 君でいて このままずっと
Get You Alone 

「一つの愛の型にはハマれない」とか言ったやつがどの面下げて「僕だけの君でいて」って言ってんの~~~~!!?!??!!??

 最高ですね!!!! 自分は「君だけのものになれない」のに君には僕だけのものでいてほしいんだ。ほんとうに最悪です。等価交換って小学校で習わなかったのか? まあ私も小学校では習ってないですが。


このわがままに名前をつけて 愛じゃなくても

 ここもすごい歌詞です。「このわがまま」とは、前述した「僕は君だけのものになれないけど君は僕だけのものでいて」という懇願を指していると考えられます。

 「名前をつけて」という以上、今その感情に名前はないんです。男にはこの感情がなんなのかわかっていない。君を一人占めしたいこの感情は、愛かもしれないし愛じゃないかもしれない。愛じゃなくていいから、何でもいいから名前がほしい。

 なぜか? 正確にはわかりません。けれど私は、名づけることで相手をつなぎとめようとしているのではないかと思います。

 恋人とかセフレとかいうような明確な名前のない関係性は不安定です。相手にとって自分は何なのか、が言い表せないと人は不安になります。だから崩壊しやすい。相手は簡単に離れて行ってしまいます。

 感情もそれと同じです。自分が相手に向ける感情が適切に言語化できれば、二人の関係性に名前が付きます。そうすれば離れにくくなる。愛じゃなくても、仮初でも、感情に名前さえつけばそれがふたりの関係の証書になるんです。

 しかもその命名を相手に委ねようとしている。ずるくないですか? 相手に名づけさせることでその証書に判を押させようとしているんです。でもそうまでして相手をつなぎとめたいという意思の表れだと考えると、「僕」が「君」に向ける感情の特別さが明るみになってくるようです。


君だけのものになれない 僕を そんな目でじっと見つめないで

 そんな目でじっと見つめるだろ~~~~!!!! ばかやろ~~~~!!!!

 ここ本当に理解に苦しむんですが、「そんな目でじっと」見つめられても僕の生き方は変えられないから、ということなんでしょうか。

 わかることは、この男が「そんな目でじっと」見つめられることに抵抗を感じているということです。たとえばモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』などは女に責められることを屁とも思わないタイプですが、この男はそうではない。咎められることをつらいと感じている。それは「君」が僕にとって特別だからかもしれません。この場合やはり男は自分の生き方に罪悪感を抱えていそうです。「そんな目」によって、罪悪感が刺激されるのがつらいのでしょう。

 あるいは「そんな目」が前述の「悲しい目」だとすると「君」に悲しい目をしてほしくない……とも受け取れるんですよね。君に笑っていてほしい。どうせ僕は生き方を変えないのだから君ももっと享楽的に生きるべきだ。そんな受け取り方をすると、なかなかクズ度が高まって興奮しますね。一方で、この男が「君」をどう思っているかの一端に触れるような気もします。笑っていてほしいというのは愛情のひとつの形に違いありませんから。


2番

君は誰と 何してもいいのに 僕がいいのか?

 いくらなんでもずるすぎる! さっき「僕だけの君でいて」って言ったじゃん!! 急に手綱放すのやめてくれんか!?

 ここ、「僕は強要も束縛もしてないよ」って言ってるんですよね。僕が強いたんじゃない、君が僕を選んだんだ、と。でもほんとうは束縛したいんですよね。「Get You Alone」って言ってるもん。その事実を覆い隠して相手の意思に任せた振りをするのは、やはり相手をつなぎとめたいからでしょうか。

 リードをつけた犬と、つけずについてくる犬。どちらのほうが従順か。あるいは、どちらのほうが信頼関係があると言えるか?

 自分から相手を束縛するのでは一方的です。けれど相手が望んで自分を選ぶのであれば、より強固なつながりが生まれます。「僕」が望んでいるのはそれではないでしょうか。

 僕は悪い男だ。けれど君がそんな男を選んだ。そうやって相手の意思にゆだねることで、一種の共犯関係を生み出しているように思えます。


今夜を全部君にあげるから

 今夜「だけ」しかくれない!!!! ほかは!?!??


その心が求めるまま すべてを手に入れて

 ここが1番との対比になってますよね。

 1番では「この心が求める」「すべて」とはほかの女たちのことを指すと考えられました。けれど2番での「その心が求める」「すべて」は、「僕」のすべてなのではないでしょうか。

 おそらくですが、女性のほしいものはこの男のすべてなんです。この男もそれをわかっている。だとするとこれってひどい歌詞じゃないです? だって「すべてを手に入れて」とささやく本人が、決して「すべて」を与えてくれないんだから。他の女性とも関係を持っておいて「君にすべてをあげる」はあまりにも虚言です。

 ここからいくつかの解釈が成り立ちます。ひとつは、男が意地悪を言っているという可能性。「すべてを手に入れてごらん、僕はすべてをあげないけど」という意図があるのであれば、この男はドクズです。

 あるいは、男が「自分はすべてを与えている」という認識を持っている可能性もあります。「君だけのものにはなれないけど、君に僕のぜんぶをあげる」と言っているのであれば、それもやっぱりドクズです。けれどこう考えると、男は男なりにこの女性に誠意を持って向き合おうとしているようにも思えます。誠意の方向性が180°ずれとるが。


とまどいのない ときめきはないこと
気付いているだろう?

 ここほんとうに悪い男すぎるんだよなァ!

 まず、「君」のとまどいを見透かしているのが嫌な奴ポイントですよね。このままでいいのか、いけないのか。「悪い男」の腕の中にいていいのか、抜け出すべきなのか? 「僕」は「君」にそういったとまどいがあることを見抜いている。

 そのうえで、「とまどうからこそときめくんだよ」とうそぶく、ここが嫌な奴ポイントその②。とまどう「君」に対して「それでいいんだよ」とそっと手を引いているわけです。

「君」が戸惑うのは「僕」が悪い男だからです。けれど戸惑うからこそいい。つまり、僕が悪い男だから、危ういから君はときめいているのだ。そんなふうにも読み取れます。

 とまどいの前に留まっている「君」の自制心に揺さぶりをかけて、粉々に壊そうとしている。そうやって相手をつなぎとめようとしている。嫌な奴すぎる!! 大好き!!


まとめ

 というわけで、だらだらGet You Aloneの歌詞について語ってきました。

 解釈をひとつに絞るのがそんなに好きではなくて、あえていくつかの可能性を挙げながらお話してきました。いろんな読み取り方ができるほうが面白いな~と思うし、ひとそれぞれ感じることは違っていいし。

 ただ、「僕」が最低で最悪でヤバいやつだという私の認識は揺らぎません。けれど最低だからこそ魅力的なんです。「君だけのものになれない」けど「僕だけの君でいて」ほしい、そんな最低さが私たちの心をときめかせます。

 これが単にお互いオープンな関係性でいましょう、という歌ならここまで心を揺さぶられません。自分はポリアモリー的に生きているくせに相手にはそれを許容しない独占欲や、あらゆる手を使って相手をつなぎとめようとする狡猾さがこの男の最低さに深みを与えています。「悪い男」をこうまで美しく表現してみせたいしわたり淳治さんは天才です。

 そして最後になりましたが、最低な男をこんなにも魅力的に仕上げているのはもちろんベッキョンさんの力です!! ベッキョンさん以外が歌ってもただのドクズ最低男にしかならない!! ベッキョンさん天才!! ありがとう!!


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