無題

BEDFORD PHYSICAL TRAINING COLLEGE LECTURE by F.M.Alexander

ベッドフォード体育大学(*1)でのF.M.アレクサンダー氏の講義
1934年8月3日
※2018年12月30日より、日本での著作権保護期間が「死後50年」から「死後70年」に延長されることになったため、この文書の公開は2018年12月29日までとさせていただきます。
※上記のように心づもりしておりましたが、一度パブリックドメイン入りしたものはそのままだということなので、公開を継続することにしました。

 こんなに大勢の若い人たちが聴きにきてくださっているのを目にして、私は結構圧倒されています。最前列に目をやると私の生徒たちが皆来ているのも見えますし、この講義はとても手ごわいものになるな、と感じています。

 私がやっている仕事について話してほしい、ということですよね。よろしければですが、直接その話をするのは避けたいと思います。というのも30年前に私は「講義すること」に見切りをつけたんですね。なぜかというと、日々生徒さんと1人30分のレッスンなどをするなかで気づいたからです。私たちは皆(私自身も含めて)、なにか自分の信念や見解にそぐわないことや、関心事に反するようなことを言われると、すぐさままずい反応の仕方をしてしまう傾向がある、と。私自身もそうです。克服しようと努力してきてはいますが、克服したとは一瞬たりとも思っていません。

 ですから、よろしければ1つご提案させてください。ここにいる私たちが皆関心を寄せているこの分野(*2)の始まりに一度さかのぼってみて、立派な先人たちの取り組みの足跡をたどってみるのはどうでしょう?これまでになにが為されてきたかを振り返ってみて、手元にある事実をもとに、私たち自身で1つの原理を解明していきましょう。後であるポイントにさしかかったら、その原理に照らしてみしたいと思います。その時が来たらお知らせしますので。

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*訳注1:イギリス中部のベッドフォードシャーに1903年に創立された体育大学。現在のDe Montfort University Bedford。
*訳注2:体育のこと。
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 さて、私の理解するところでは、人間が自分の健康状態について何かがおかしいと気づいたのはおよそ700年前です。その自覚をしたとき人々は、いつもそうするように、原因究明に乗り出しました。そしてすべての問題の根源は身体的な衰えであり、その衰えは文明化がもたらしたものによって引き起こされた、という結論に達しました。この結論が正しかったかどうかは、とりあえずどうでもいいことです。私たちにとって肝心なのは、この瞬間を境に、筋肉を鍛えたり「体育」全般に取り組んだりするために、人々がさまざまなメソッドを展開しだしたということです。体育の歴史を振り返ってみるなら、ある時期に重量挙げが始まったことを思い出せるはずです。私が思うに、実際あれが黎明期で、以来人間はありとあらゆるメソッドやエクササイズを体験してきて今に至るわけです。

この講義の数年前のF.M.アレクサンダー氏
(マージョリー・バーストウ撮影、1932年)

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