ドリーマーズハイ


夢とはレム睡眠中に見る幻覚のことである。

私は夢をよく見る方だと感じる。
昔から豆電球をつけて寝るし、昼寝することも多いためか、夜の睡眠の質が悪いのかもしれない。
最近は音がないと眠れず、ゲーム実況やら雑談の動画なんかを流して寝る。この問題はより深刻になってきている。
意識すれば悪夢を見ることはないが、毎日意識して寝るのも馬鹿らしく思え

夢は夢だ

と私らしい怠惰な解決法を見出している。大抵は目を覚ましてから

ああ夢だったんだな

と思うばかりで、夢の中で

これは夢だ

と気づくのは稀である。
稀だが無くはない。夢だと気づくと目が覚めるまでの間自由に動き回れるのだ。
するとたいがい私はふらふらと景色を見て周り、無機質な現実に引っ張り戻されるまでの少しの(数秒にも数日にも、数年にも思える)時間を、暖かみの無いハリボテの炎みたいな夢の中で満喫するのだった。

空も水も群青色の街
空に浮かぶ大きな鯨
大人も子供もおんぶされてる世界

現実世界と全く変わらないこともある。あるとき私は気がつくと誰もいない中学校の教室に立っていた。

夢だ。

そう思ったと同時に階段を駆け上がって3階に上り、ベランダに飛び出した。3階のはずなのに、下にはビル群が広がり地面まで100mは下らなかった。躊躇してる時間はない。なぜそう思ったのかも、なぜそうしたのかもわからないのだが、とにもかくにも

私はベランダから飛び降りた。

風が気持ちいい。

まだ落ちる。

まだ落ちる。

ついにアスファルトに体を叩きつけ、私は目を覚ました。なんてスリリングで心地の良い体験だろう、脳が蕩けそうだ。死を以て生を感じる。これぞ夢の醍醐味だ。

私はあくる日も自慰行為ともとれるかの体験をするべく浅い眠りを目指して寝床に潜った。
今日のお供は落語である。あまり興味が無いけれど、流れてるだけでとりあえず眠りを浅くしてくれるだろう。しかし、これが思ったより面白い。結局私はまるまるひとつ聞いてから眠った。

念願叶って夢の中だ。それに今度は屋上でスタートというおまけつき。準備は万端だ。私は屋上のへりに足をかけ、下を覗き込む。踏み込んだ足を1度戻してから私は呟いた。

「よそう、現実になるといけねえ」

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