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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 2/12号」

2月相場は息切れするか
13日発表の米CPI(消費者物価指数)を前に、米労働省統計局が9日朝発表したCPIの年次改定では、2023年10-12月(第4四半期)の食品とエネルギーを除いたコア指数は年率3.3%上昇と改定前から変わらなかった。

 総合指数も小幅な修正にとどまった。一方、12月の伸び率は前月比0.2%と、従来発表の0.3%から下方修正された。昨年の改定ではインフレ抑制の進展度に疑問を投げかけるほど、大幅な修正が加えられた。そのため今回の改定発表にはいつも以上に注目が集まっていた。  

 年次改定の結果、13日の1月のCPIではコア指数が前月比0.3%上昇の予想。実際にそうなれば、3カ月連続で同率の伸びとなり、3カ月間の年率ベースではわずかな加速となる。

一般的に、2月相場は秋相場と並んでパフォーマンスが良くないとされる。年初からの勢いが息切れ、利益確定売りが出易いと言われる。とくに、主導する米株で、とうとう5000ポイントを抜いた指標のS&P500指数が昨年10月の安値から約20%超上昇、15週のうち14週が上昇、1986年以来の上昇ぶりとなっている。

2日の相場で牽引するハイテク大手7銘柄(マグニフィセント・セブン)のメタ・プラットフォームズが初の四半期配当などを好感し20.3%急騰、1日で時価総額が過去最高の1960億ドル増となった(全体は1兆2200億ドル)。クラウド事業と年末EC取引が好調だったアマゾンは7.9%高。メタとアマゾンは7銘柄のなかでは低調組だったので、空売りの買い戻しが原動力かも知れないが、一部で過熱感を指摘する声が出ているようだ。

オプションSQ思惑、乱高下要因か
9日はオプションSQ日。その思惑もあってか、前日の日経平均は743円高と急伸した。ただ、743円高の日経平均寄与祖を見ると、ソフトバンクG、ファーストリテイリング、アドバンテスト、東京エレクトロン4銘柄で約500円、上昇分の66%を占めた。

1月SQが高めの3万6000円台となって、抜くのに時間を要したパターンだったのと類似した動きとなるか注目される。743円高の8日の東証プライム市場は値上がり銘柄数584に対し,値下がり銘柄数1013、新高値銘柄数は89に止まり、活況感は乏しい。

株高を裏付ける要因の一つが企業業績の好調。SMBC日興の集計によると、7日時点(TOPIX構成3月期決算企業。この時点で786社、開示率55.0%)で前年度比8.4%増益(金融除く7.7%増益)。今後発表予定分を入れると、通期純利益予想は前年度比12.6%増益。4‐12月での進捗率は84.4%で、なお上振れ余地がある。

既発表分で、製造業+16.8%、非製造業-2.4%と明暗を分けている。製造業の牽引役は自動車、円安効果。非製造業不振の代表は建設、コスト増が主因。値上げタイムラグの電力・ガスや銀行が非製造業の押し上げ要因。

8日、文春オンラインが衝撃記事(松本人志問題ではない)を配信した。
大阪万博開催予定地の「夢洲は最大で70cmの地盤沈下を起こす可能性がある」。埋立地の地盤沈下は関空で知られ、対策を取っていると見られていただけに衝撃的。22年春に行った盛り土が裏目に出ているそうだ。

代表的建築物の「木製リング」のJVは清水建設、大林組、竹中工務店。柱の基礎が大きく揺らぐ部分が出て来る恐れがあると言う。電力ケーブルなどの資材不足問題もあり、依然、工事進捗に疑問がある。正式発表はないので、3社の動きを見て行くことになろう。今年度不振の建設業界は24年度も爆弾を抱えてのスタートになる可能性がある。

物流関連では、デンマーク海運大手マークスは「24年はコンテナ船の過剰供給で大幅な減益になる見通し」と発表した。紅海の混乱は依然不透明だが、業績を大幅に押し上げる要因にはならないとの見方。自社株買い停止を発表し、8日の株価は12%急落。
蛇足だが、紅海~スエズ運河から南ア喜望峰周りになっていることで、ヤマザキ「春のパン祭り」が打撃と話題だ。40年以上行っているイベントだが、仏製食器皿が届かず、山崎パンがお詫び広告を出していることがネットで話題になっている。思わぬ物流混乱リスクがある。

独シーメンスは中国のFA関連需要が半減状態と発表した。「年後半には回復が見られると期待している」としているが、困難と見られる。中国需要大幅減の表面化も24年度の課題となろう。先行き不透明な状態は企業の慎重姿勢に繋がりやすい点に注意が必要だ。

米商業用不動産懸念がドイツにも飛び火、国営PBBなど銀行債急落

燻る商業用不動産、ドイツに飛び火、中国売却圧力も
大勢に影響していないが、商業用不動産ローン問題が燻っている。6日、ドイツ国営金融機関のPBB(ドイチェ・ファンドブリーフバンク)の社債が急落した(1ユーロ当り52セント、前日比17.4セント安)。クレディ・スイスのAT1債が無価値になって以来の債券市場の混乱。米NYCB(NYコミュニティバンク)から始まった混乱が、日本のあおぞら銀行、韓国金融市場などに広がり、欧州にも広がってきた。

背景は、利下げ期待が遠のき、金利上昇後の商業用不動産評価額の引き下げが不十分な面が露呈してきたため。空売り筋の標的になったと言えなくもないが、引き当て積み増しはドイツ銀行など大手行にも広がる気配。米国でも7日のNYCB株は13%続落した後、後場に切り返し6.7%高。米KBW地銀株指数は0.1%安。交代したNYCBの新会長が商業用不動産へのエクスポージャーを減らす方針を示したことで、模様眺めムードに転換したと見られる。ただ、ドイツではバーデン・ビュルテンベルク州立銀行など引当金積み増しの動きが広がっており、不安定な動きが続くと見られる。

伏兵は中国の売り圧力。6日夜、不動産開発会社・広州富力地産はロンドンの高層ビル「マーケット・タワーズ」(ホテルや住宅437戸が入居)の持株会社売却を表明。代価はドル建て債務の引き受けと1香港ドル(19円)で、同社の苦境を示す。1月下旬には碧桂園が豪州住宅開発プロジェクトの売却に動いた。

中国資本がどの程度海外不動産を所有しているか不明。元々、国内が危ないから海外へ逃避している目的もあるので、一斉売出のようなパニックには至らないとの見方もあるが、不透明感は否めない。米国でも加州やNY州に中国資本の影があり、昨年のシリコンバレー銀行破綻、今年のNYCBの動揺につながっているとも見られる。世界的にも不動産問題から小規模銀行の不良債権問題へ拡大しつつある。

なお、ドイツに飛び火したのは、5日リントナー財務相が「ドイツ経済は成長できず、貧しくなっている」と述べたことも背景と見られている。ドイツ経済の苦境が続いており、欧州景況感の悪化につながる可能性がある。

KDDI、ローソンTOBは「auのためじゃない」 日経ビジネスより

企業の積極投資は好感
金持ち企業の積極投資は市場全体の好感材料と思われる。6日、異例の場中に、KDDIのローソンへのTOB情報が流れた。投資額4971億円、TOB価格1万360円、6日終値8913円を16%ほど上回るだけで、それ程驚く案件ではない。既に2.1%所有の株主だったので、驚く案件にはならなかったと見られる。「時代の変革期なので思い切った投資」、「DXフル活用で未来のコンビニ」とのコメントが目に付いた。多少気になるのは、通信大手の大型投資は成功した記憶がない点か。

ローソンはこのところコンビニ3位のイメージで活力に欠けていた印象。トップの7-11が米国で250億ドル以上投資し、トップ企業になっていること、重要戦略は「ピザとラーメン」としていることと対照的。顧客に評価される戦略を打ち出せるか注目される。

トヨタは熊本TSMC第2工場建設へ追加投資(累計で受託製造子会社の持ち分は2.0%だが。TSMC86.5%、ソニー6.0%、デンソー5.0%)、米ケンタッキー工場に13億ドル追加投資(累計は100億ドル。全方位戦略のトヨタらしくEV車生産と伝えられる)と活発戦略を発表。その他に、今年度受注6兆円見通しに大幅上方修正した三菱重工は1対10の株式分割を発表。今期一転営業増益に上方修正の任天堂は、3月で8年目を迎える「ニンテンドースイッチ」の後継機については公表しなかったが、改めて思惑を呼ぶ材料。

注目の賃上げ動向スケジュール
賃上げ動向は日銀政策を左右する重要課題と見られている。スケジュールでは、2月20日主要労組の要求提出期限、21日から自動車総連交渉開始、3月15日連合、第1回集計結果、18-19日日銀3月金融政策決定会合、4月25-26日日銀4月金融政策決定会合と続く。 

エコノミストの賃上げ予想は3.85%,前年の3.58%を上回り1993年以来水準の予想。日銀のマイナス金利解消など金融政策変更観測は4月に踏み切るとの見方が大勢(約6割)だが、賃上げ動向次第で揺れる。トヨタの出方次第で早期に方向感が決まる可能性があり、自動車産業は裾野が広いだけに下請け業界への影響も注目される。

中国市場についての見解も注目される。中国当局はなりふり構わず売り禁止などを打っているが小出し感が強い。ブルームバーグによると、1月香港以外の海外指標に連動する中国本土のETFには20億ドル(3000億円弱)の資金が流入した。半分強が米株ETF、日本株ETFには2億400万ドルが流入。原資産価格を4割上回るファンドも出る過熱ぶり。

一方、グローバルファンドによる中国株売りは1月145億元(約3000億円)、過去最長となる6ヵ月連続の流出。5日の市場では小型株指数のCSI1000指数が一時8.7%下落、終値6.2%安。当局のテコ入れは主力株だけに偏りがちで、市場全体をケアするものではないことを示している。「もしトラ」(トランプ大統領返り咲き)を控え、中国自身が抜本的に路線転換を図る以外に道はないと思われる。

半導体市場に強気の見方が出た。米国半導体工業会(SIA)は24年世界半導体販売額は前年比+13.1%に急増するとの見方を示した。23年は約8%減だが、下期から徐々に好転しているとした。AI関連の急増と自動車関連の拡大が原動力の予想。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。


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