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メイキング|「Re:tune」リメイク #11 執筆:転【1】②


 想像の後半戦は「どこか遠くに行ってしまうのではないか」に繋げていきましょう。教室に近づいているという描写も挟みます。

 階段を上りきると、そこは普段僕たちが授業を受けているフロアだった。向こうのほうに、僕たちの教室が見える。相変わらずクラスの札はうまく読めないが、夢の補正がかかっていなければ合っているはずだ。

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 直接教室に行くのでは面白みがないのと驚きが少ないので(何より急ぎ過ぎ)、他のクラスの様子を見つつうろうろしてると「自分たちのクラスから彼女の声が聞こえる」というところに繋げていこうと思います。

 たまには他のクラスの様子を見てみるのも面白いかもしれない。担任に頼まれてプリントを運ぶ時くらいしか別の教室に入ることはないし。夢の中とはいえこれだけ精密なのだから、いい感じに再現されてるかもしれない。
 1番奥の教室を目指して廊下を進んでいく。教室越しに差し込む夕陽が柔らかく足元を照らしていた。教室のドアにつけられた窓から漏れてくる光のパネルを、そっと踏んでみる。足にかかる陽射しがほんのり暖かい。
 ひとつ目の教室の扉を開いて中を覗き込む。掲示物や黒板、ロッカーの中身などは特に変わり映えするものではなかった。
「(意外とこんなものなのかな)」
 もう少し個性が出るものかと思ったけど。でも確かに、僕らのクラスも特別面白いものがあるわけでもなかった。

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 教室の描写が思ったよりも長くなってしまいましたが、まだ書けていない想像の後半戦をここに入れます。

 教室を満たしている黄金色の先は、やはりよく見えなかった。確かに視界には入っているはずなのに、モヤがかかったように何かが邪魔をする。
 適当な席に座り、彼女の真似をして窓の向こうを眺める。あの時、彼女の目には何が映っていたのだろう。少なくとも、今みたいに光だけということはなかったはずだ。
「世界は自分の見えるところにしかない、かぁ」
 どうしてあんな寂しいことを言ったのだろう。喫茶店のマスターにも相談していたようだけど、そんなに孤独だったのだろうか。周りにはたくさん人がいたのに、その誰とも繋がりを感じられずにいたのだろうか。彼女だけが世界の重なりから弾かれて、ひとりぼっちになってしまったのだろうか。
 そのまま、どこか遠くに行ってしまったらどうしよう。誰にも気づかれることもなく、世界から取り残されてしまったら。重なりがなくなってしまったら、それこそずっと独りになってしまう。

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 想定していたところまでは書けたので、あとは彼女の声を聞いて、教室から出ていく影(=自分自身)を見て、教室の中を見ようとしたら光に邪魔をされて──目が覚めるところまで書いていきます。
 とはいえ、最初に提示した[僕]なりの[世界]への認識についてはまだちゃんとは書けていないので、どうにかしてねじ込みたいですね。
 夢から覚めるまでを書く前に、思考の整理を少しだけ書きます。【承】で得た感覚も交えながら、[僕]の立ち位置を確定させます。

 彼女の話を聞いて、マスターにも教えてもらったけど、やはり僕は世界についてはよく分からないままだった。辛うじて『世界は重なり合っていくもの』という意見は出せたけど、自分の中で温めていた考えというわけではないし。なにより実感がなかった。
「でも、あの時のーー」
 交差点で感じた疎外感。あれは確かに自分の中にある気持ちだった。世界に属しているはずなのに、浮いているような感覚。それを考えると、やはり自分自身の領域が独立しているかのように思えてしまう。

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 『重なり合う』ことが正しいと考えていた[僕]ですが、だんだんと彼女と同じ『独立している』ことが正しいように感じてきています。ただの推測ではなく、実感に基づくものなのでよりそう思えたのでしょう。
 この辺は少しふわふわしてしまったので、推敲の際に全体を見ながら必要に応じて調整していきましょう。
 さて、夢の中では最後のパートです。先ほど組み立てた内容に従って書いていきます。

 ことん、と教室の外から音が聞こえた。突然の刺激に全身が強張る。今までずっと静かだったし、僕以外に音を出せるものが紛れ込んでるかもしれないと考えるととても恐ろしかった。
 ゆっくりと立ち上がる。後ろのロッカーから掃除用の箒を取り出し、護身用に構えながら教室の扉を引く。
 顔を半分ほど出し、廊下全体を見回してみたけど特に異常はなかった。備品の何かがバランスを崩して動いてしまったのだろう。現実世界でもよくある話だった。
「……怖がって損した」
 箒を握る手を緩め、ロッカーの中に戻す。ため息をつき、1番後ろの席の背に軽く腰掛けた。今になって心臓が速くなってくる。動悸を鎮めるように深く息を吸った。

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 このまま隣の教室に駆け込みそうだったので、用心深く廊下を見まわす程度にとどめました。ここで安心した後に、彼女のセリフが入ります。

「世界は自分に見えるところにしかないんだって」
 聴き慣れた声が、忘れるはずのない言葉が聞こえた気がした。
 吸い込んだ空気が行き場をなくして霧散する。
 慌てて後ろを振り返っても、そこに彼女の姿はなかった。
「(幻聴……?)」
 でもそれは確かに彼女のものだった。あの日、寂しそうに向こうを眺めていた背中が脳裏に浮かぶ。
 胸の中がざわざわする。
 恐れていたことがおきてしまうような予感がする。
 僕は慌てて教室を飛び出した。
 声の大きさからして、そう遠くないはず。

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 緊張して考えがまとまらない感じと、短い時間のはずなのにゆっくりになる感じを表現するために改行を多めにしています。これまでの地の文の長さとまとまり具合との対比になってたらいいですね。

 廊下に出て中庭の方を見る。窓の外から聞こえたわけではなさそうだった。
 そうすると教室のどこかから声がしたのか?
 耳を澄ませながらゆっくりと歩き出す。
 音を聞き逃さないように、そっと足を進めていく。
 あの日の、忘れ物を取りに行ったときにかけられた言葉。
 彼女の内に秘められた孤独。
 暗く、寂しい感情がこもった声だった。夢の中で僕が作り出したものとは思えないほど。
 隣の教室の扉に手をかける。窓から中を見ると、最前列の窓に程なく近い席に誰かが座っていた。後ろのドアの方へ振り返っている。

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 【起】のフレーズをそのまま使いながら再現していきます。「胸のうち」を漢字にするにあたって「裡」という言葉を使おうと思ったのですが、裏側という意味が強く、彼女の内側に溜め込まれた(燻っている)感情という情報をうまく入れられない気がしたので見送りました。寂しいという単語も短い間隔で続いているので、それもなんとか解消したいです。
 夢として再生しているのもあり、全く同じ展開にはならないはずなので細かい部分は改変していきます。

 窓の外の光が強くて細部までは確認できないが、あれはきっと彼女だ。そしてその視線の先には誰かがいる。この状況から察するに、きっとあの時の僕なのだろう。手の力が緩む。
「なにか忘れ物?」
 彼女は問いかけ、黒い影が教室の中に入っていく。僕と思われたものは形が不定の黒いモヤだった。かろうじて人の形をしているけれど、表面はざらついていておおよそ人間とは思えない。
 本当の僕がここにいるから?
 その影はゆっくりと机へ動き、中から何かを取り出した。同じ速さで出口へと向かう。僕の記憶通りなら、このあと彼女に引き止められるはずだ。
「ねぇ、さっきのことなんだけど」
 彼女の言葉に黒い僕は止まった。身体の外側でうごめくモヤが形を乱していく。小刻みに震えながら腕を上げ、そのまま教室の扉を開けた。のそり、と影が廊下へ出てくる。
 目が、合った気がした。
 顔と思しき前面にはそれらしき器官はなかったけど、こちらを見た気がした。背筋に嫌な感触が広がる。良くないものを視界に入れてしまった時の気持ち悪さが込み上げてくる。
 でもそれは長くは続かず、そのまま向こうへと歩き出してしまった。程なくして霧のように消えてしまう。
 教室に残った彼女はどうなったのだろう。
 慌てて中を確認すると、彼女は扉の方を向いたままだった。

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 同時に同じ人間が存在できないからというわけではなく、その世界では正しいものではないからという理由で黒いモヤになっています。あとは、[僕]自身があまり自分のことを客観的に見たことがなかったせいもあるのでしょう。認識にかなりの制限がかかっているように思えます。
 さて、記憶とは異なり彼女の問いかけには応じず出ていってしまった[僕]。その後の彼女の様子と、夢から覚めるまでの経緯を書いていきます。

 あの言葉、あの問いかけはまさに自分が体験したものと同じだった。僕はあの日彼女と話す選択をした。そして世界の話を聞いた。
 でもあの影はそうしなかった。彼女は自分の孤独を打ち明けられず、ひとりぼっちのまま教室に残されている。
 なんとかしないと。
 僕は扉にかけた手に力を入れて開こうとしたが、うまく動かない。どこかで引っ掛かっている感じではなく、そもそも壁だったかのようにびくともしなかった。
「ねぇ!」
 目の前の窓を叩く。あまり強くては割れてしまうかとも思ったが、なんとか彼女に気づいてもらわないといけない。
 大きな音を立てるガラスに、彼女は驚いたようにこちらを向いた。
 目が合う。
 それはまるで、良くないものを見てしまった時のそれだった。

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 助けなくちゃいけない、と気持ちが急いてしまっています。[僕]はそんなことができる人間ではないのに。でもあまり人と関らず自分を卑下していた人がこんなにも向き合えるようになるんですね。ほとんど一方的な気持ちですが。
 この夢の中の彼女は[本来選択されていた事象]の存在(認識はしていないただの存在)のため、認識の有無に限らず[それ以外の事象]のものは正しくないためモヤがかかってしまいます。彼女から見た今の[僕]は、まさにその状態なのでしょう。
([僕]が彼女のことを正しく認識できているのは、今の[僕]が[選択されなかった事象]出身の存在であり、かつ認識の強度が低いためその本質はまだ確定しておらず、[選択された正史の事象]の属性も持っているからです。ややこしいですね)
 彼女の様子は書けたので後は夢から覚めるだけです。

 どうにかして彼女と話をしなくてはいけない。僕がどんな風に認識されているかはあとから確認すればいい。まずは彼女の気持ちを聞いて、たくさん喋らないと。このままひとりにさせてはいけない気がする。
 もう一度扉を引こうと力を込めるもやはり開かない。
 となれば先ほどもうひとりの僕が出てきた方を使うしかない。
 廊下を走って扉を目指す。その勢いのままドアの取っ手に手をかけて横にスライドする。今度はスムーズに開いた。
「大丈夫!?」
 声の先には誰もいなかった。
 さっきまで彼女がいた席は椅子が引かれたままなのに、その姿はない。
「どこにいったの……?」
 あたりを見回しても影すらなかった。教室の外に出た様子もないし、足音も聞こえない。
 彼女の痕跡を探すため机を目指す。
 すると、窓の外の光が急に強まった。目を開けていられないほど明るくなる。
 彼女を見つけなくちゃいけないのに。
 その手がかりを掴まなくちゃいけないのに。
 僕はなすすべもなく、そのまま意識が薄れていった。

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 この時彼女に会えなかったのは、世界が分岐して彼女が属する世界が孤立してしまったからです。[僕]はどちらの性質も持っていますが、この段階ではまだ[正史]の特性が強いため、彼女の認識により分かれた方の世界のことはうまく認識することはできません。
 筋が通らないようなチグハグなことが起こるのは、ここが夢の中だからです。どちらの事象も重なって混ざり合っているため、より分かりにくくなっています。
 ひとまずこのあと何が起きてしまうかの前振りはできました。
 文字数はここまでで約4,300文字と想定の半分以上となってしまいました。駆け足にならないように気をつけつつ、残りの分を書いていきます。(参考:各セクション1,000字程度)


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