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メイキング|「Re:tune」リメイク #23 推敲:承【3】&【4】

【3】

 テーブルの脇から小さな紙を取り、図を描いていく。それはいくつかの丸が重なるものだった。
 昨日、彼女が披露してくれたものに近い。

【推敲前】

 改行するほどのタメは要らなそうなので続けます。

 テーブルの脇から小さな紙を取り、図を描いていく。それはいくつかの丸が重なるものだった。昨日、彼女が披露してくれたものに近い。

【推敲後】


「変、というか……聡明だな、とは思うよ」
「そうですか……」

【推敲前】

 やっぱり「そう」が重なるのがちょっと嫌なので修正します。

「変、というか……賢い子だな、とは思うよ」
「そうですか……」

【推敲後】


 彼はカップを深く傾け、コーヒーを飲みきる。
「いましか出来ない、ということはないけど。自分と向き合うだけの時間はたくさんあるからね」

【推敲前】

 ひらがなである必要はなさそうなので漢字に戻します。

 彼はカップを深く傾け、コーヒーを飲みきる。
「今しか出来ない、ということはないけど。自分と向き合うだけの時間はたくさんあるからね」

【推敲後】


【4】

 だからこそ、自分がいる場所、いてもいいと許される場所が欲しかったのかもしれない。

【推敲前】

 ひらがなである必要はなさそうなので漢字に戻します。

 だからこそ、自分がいる場所、居てもいいと許される場所が欲しかったのかもしれない。

【推敲後】


 駅前の交差点で信号待ちのために止まった。マスターの隣に立ち、通り過ぎていく車を見送る。
 彼の顔を見上げると、その視線は遠くにあった。まるで昨日の彼女みたいに。ここではない、どこか別の場所を見ているようだった。

【推敲前】

 「見る」という言葉が続くのはやはり気になるので調整します。

 駅前の交差点で信号待ちのために止まった。マスターの隣に立ち、通り過ぎていく車を眺める。
 彼の顔を見上げると、その視線は遠くにあった。まるで昨日の彼女みたいに。ここではない、どこか別の場所を見ているようだった。

【推敲後】


「さて、ここまででいいかな」
 僕は頷き、ポケットから定期券を出す。
「送ってもらってありがとうございました」
「いいんだよ。ぼくの帰り道でもあったし。大事なお客さんだからさ」
 大事なお客さん、という言葉に心が温かくなる。子供扱いされているのかと思ってたけど、そういうわけではなかったようだった。
「またお店行きますね」
 軽く会釈をして、改札の方に向き直る。
「あぁ、ちょっと待って」
 あともう少しできれいに帰れると思ったのに、呼び止められてしまった。
「交差点での話。ちょっと言葉が足りなかったかもしれないから、少しだけ」
 彼と一緒に、通行の邪魔にならないよう端に寄る。
「深く考えなくてもいいよ、っていうのは、君のことを否定したかったわけではないんだ。あくまで、考えのひとつだから参考にしてね、っていうだけで」
 僕の感情が見抜かれていたのかもしれない。顔に血が集まってくるのがわかる。
「君もこれからいろんなことを見て、知って、考えていくだろうから。結論を急がなくてもいいんだよ、ってことを言いたくて」
 言葉足らずでごめんね、と彼は謝る。
「いえ、こちらこそ、なんというか、すみませんでした」
 何かを言わなくてはと思って口を開くも、なにも具体的な言葉は出てこなかった。
「うん、またゆっくり話そう。帰りも気をつけてね」
 彼に見守られながら、改札を抜けた。遠くにいるマスターに改めて会釈をし、ホームに向かう。

【推敲前】

 ここはもう少し肉付けをしていきましょう。とはいえ物語の根幹となる情報は入れる必要がないため、一連の描写が充実するように調整していきます。

「さて、ここまででいいかな」
 僕は頷き、ポケットから定期券を出した。ここまで一緒に来てくれたお礼を言うために、改めて向き直る。
「送ってもらってありがとうございました」
僕の言葉に、彼は優しく微笑んだ。
「いいんだよ。ぼくの帰り道でもあったし。大事なお客さんだからさ」
 大事なお客さん、という言葉に心が温かくなる。てっきり高校生だからと子供扱いされているのかと思ってたけど、そういうわけではなかったようだった。
「またお店行きますね」
「あぁ、ちょっと待って」
 軽く会釈をして、改札を通るために歩き始めたところで呼び止められた。さっきまでいい流れだったのに、リズムが乱れてしまう。これ以上何を話すことがあるのだろう。
「交差点での話。少し言葉が足りなかったかもしれないから、ね」
 そう言って僕を通路の端へと誘導した。ここであれば通行の邪魔にはならないだろう。
「深く考えなくてもいいよ、っていうのは、君のことを否定したかったわけではないんだ。あくまで、考えのひとつだから参考にしてね、っていうだけで」
 僕の考えていることを見抜かれてしまったのかもしれない。恥ずかしさで、顔に血が集まっていくのがわかる。
「君もこれからいろんなことを見て、知って、考えていくだろうから。結論を急がなくてもいいんだよ、ってことを言いたくて」
 一度に伝えきれなくてごめんね、と彼は謝る。
「いえ、こちらこそ、なんというか、すみませんでした」
 何かを言わなくてはと思って口を開くも、なにも具体的な言葉は出てこなかった。中途半端話な言葉だけを連ね、謝ることしかできない。
「うん、またゆっくり話そう。帰りも気をつけてね」
 彼に見守られながら、改札を抜けた。遠くにいるマスターに改めて会釈をし、ホームに向かう。

【推敲後】


 目的は果たせなかったけれど、喫茶店に行けてよかった。マスターと話すことで、彼女の考えがなんとなく分かったような気がするし。

【推敲前】

 少しだけ言葉を調整します。

 とはいえ、目的は果たせなかったけど、喫茶店に行けてよかった。マスターと話すことで、彼女の考えがなんとなく分かったような気がするし。

【推敲後】

次(推敲:転【1】①)→

←前(推敲:承【1】&【2】)

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