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メイキング|「Re:tune」リメイク #16 執筆:結【1】②&【2】①

 途中で書いた彼女の瞳の色ですが、安堵についてはいろんな話を[僕]と会えたこと、後悔については冒頭でも書いた「こんなことに巻き込んでしまった」という気持ちを込めています。

「だからね、もし奇跡が起きて扉が開いたら、あのときと同じ言葉をかけようと思ったの。それで何事もなかったらもうおしまい。私はずっとここで止まった時間を漂うしかないんだ、って受け入れようと思ってたんだけど」
 彼女の目が僕をしっかりと捉えた。緊張して、僕も見つめ返すことしかできない。
「キミが来てくれたんだもん。これほど安心できることはないよ」
 ありがとうね、と改めて彼女は言った。
 こんなにはっきりと気持ちを向けられてしまったら、勘違いしてしまいそうになる。でもここには邪魔をする人もいない。僕もなんとなく、ここから先は後戻りができなさそうな気がしていた。だからこそ、普段はできないようなことを聞くチャンスかもしれない。
「どうして、そんなに僕のことを気にかけてくれるの? クラスで一緒になるのも初めてだし、出身も違うし、部活も委員会もかぶらないし。きみとの接点といえば、あのときの教室で話したことくらいだと思うんだけど」

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 教室から出るよりも先に核心に触れられそうな流れですね。あのとき話せたからこそ[僕]のことを信頼して気にかけるようになったというのもありますが、それよりも前に一方的に[僕]のことを知るきっかけが彼女にはあります。

 彼女は少し考えてから口を開く。
「それは……そうだね、あの時たくさんお話しできたからっていうのが大きいかな」
「そっか……」
「まあ後は、キミの夢を見たからっていうのもあるけど」
 思いもよらない言葉に身体が硬直する。僕のことを夢に見て、それで信頼を寄せてくれた……?
「ど、どんな夢だったの」
「とは言っても、そんなに大したことではないんだよ」
彼女は教卓に手をついたまま話し始める。
「あの日よりもずっと前のことなんだけどね。夢の中で私は、今みたいにキミと教室でお話をするの。普段はみんな私の言葉を揶揄うようにして誤魔化すのに、ひとりだけちゃんと話をしてくれて。でも夢の中だから細かいところまでは覚えてないけど、これが夢で、実現しない空想なんだろうな、って思ったの」
 そしたらそれが現実になっちゃって、と彼女ははにかむ。
 舞い上がる気持ちとは別に、少し気になることがあった。
 彼女の見た夢、僕が彼女と話をするという内容だったけど、僕がこの前見た夢の逆パターンのような気がする。ここまで夢の内容が似か寄るのも変な話だけれど、とはいえ僕の方は経験した出来事を再現しただけだから、彼女とは事情が違う。

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 この世界の分離を引き起こしたきっかけの一つ、「彼女が僕と話す選択肢を認識する」というのをこの場で書きました。材料が足りなくてうまく表現できていない部分もありますが、彼の「僕と彼女が話さない選択肢」の反対の意味になっています。
 これ以上この話を続けて[僕]がデレデレしていても嫌なので、お話を進めていきます。教室の外に出るまでのシーンを書いていきましょう。

「力になれたならよかったよ」
 口からテンプレートのようなセリフが出てくる。もう少し気の利いたこと言葉を伝えられたらいいのだけど。
 なにそれ、と彼女は笑いながら姿勢を正す。
「とは言っても、せっかくキミが来てくれたからなにか面白いことでもしたかったんだけど。ここから出られないからあんまり意味ないんだよね」
 そう言って扉の方へ歩いていく。僕もその動向を目で追った。
「ドアを開けようと思って手をかけてね、こう、引っ張っても──」
 力をかけて思いっきり引くと、勢いよく扉が開いた。そうなるとは夢にも思わなかったのだろう。彼女がよろめいて転びそうになる。
「あぶな──」
 僕が立ち上がるよりも先に、彼女はバランスを取るように体勢を立て直した。そういえば運動神経も良かった。僕が手を貸すまでもない。
「……開かないはずだったんだけどね」
 おかしな姿勢のまま彼女は恥ずかしそうに笑う。

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 [彼女]は容姿も整ってて成績も良くて、運動もできますからね。才能みたいなものです。

【2】

 さて、教室から外に出られたとしても、あくまで[僕]のおかげで行ける範囲が少し広がっただけです。この行動範囲については[僕]の認識している場所を含みますが、[彼女]の影響により行ける場所が制限されてしまいます。
 今のうちに場所はおおよそ決めておきましょうか。自分の教室、昇降口、体育館、図書室くらいですかね。基本的に1人で行動する上に、部活も入ってないので行動範囲は狭いです。見たことがある/記憶している程度のものであれば、その場所には行けなくても見ることくらいはできます。

 彼女は嬉しそうに教室から首を出し、周りを確認している。
「ねぇ、ちょっと探検してみようよ」
 よほど外に出られるのが嬉しいのだろう。手招きをしてそのまま行ってしまった。僕も慌ててついていく。
 教室の外はこの前見た夢と同じようだった。学校の形をしてるけど、ちょっとズレた感じがする。でもなんでも思い通りになりそうな感覚は全然なかった。むしろ、どうなっていくのか分からない不安の方が大きい。
 彼女は辺りを見回しながら歩く。僕は隣に並んだ。

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 ここは夢ではないので特有の感覚はありません。ほかに誰もいないことを知っているからなのか、[僕]は彼女の隣に立つことを選択しました。前までは、後ろをついていくので精一杯だったのに。
 この場所でのルールとこうなってしまったことの解説を、校内を巡りながらしていきます。外には出られないので各所を回ったあとは最初の教室に戻ることになるでしょうね。
 先ほど挙げた行ける場所とこれまでのエピソードを絡めながら話せるといいでしょうか。

  • 昇降口:【起】で書いた重なり合いの世界と広がる世界についての答え合わせ。「彼女の世界にはもう、僕はいないのに」がキーワード。

  • 体育館:【転】で書いた彼女の消失についての答え合わせ。[僕]がメインで話し、[彼女]側で何が起きていたかを聞き出す。

 こうなると、他と合わせるように【承】で書いたひとりぼっちの感覚について(もしくはマスターとの絡みについて)書きたいですが、残りの行ける場所は図書室ですし、喫茶店にも行けませんので難しいですね。他の流れに合わせてうまくできればよかったのですが。ひとまずこのまま様子を見てみましょう。
 また、これはあくまでもリメイクなので、原文で書かれていた内容を取り入れながら書き直していきたいです。
 ひとまず昇降口まで移動してもらいましょう。

「どこに向かってるの?」
 廊下を進む彼女に問いかける。
「どこだろうね。ひとまず行けるところを把握しておきたいかな」
「わかった」
 僕は頷き、探索の邪魔にならないように気をつけながら歩く。
 でも不思議だよね、と彼女がつぶやく。
「ここ、私たちの知ってる学校なのに、なんかちょっと違う感じがするし。私がずっと教室から出てなかったからかな」
「……人がいないから?」
「確かに。すごい静かだもんね。夜の学校ならまだしも、夕方の時間帯に無人になることなんて無いもんね」
 彼女は腕組みをして頷き、言葉を加えた。
「夢の中みたいだね」
 その台詞に心臓が跳ねる。
 僕と似たようなことを感じているようだった。それが少しだけ嬉しい。

リメイク本文

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