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メイキング|「Re:tune」リメイク #12 執筆:転【2】

【2】

 夢から覚めたあと、まずは今まで通り世界が回っていることを示します。同時に「彼女が居ない」という事象をうまく表現する準備もしたいですね。そのためには『[彼女]が全校生徒の目の前に出る機会がある』という状況があればいいでしょうか。
 このお話のタイミングは夏〜秋にかけてを想定していて、夏休みが終わってしばらくした頃をイメージしています。そうなると、『なにか夏休みの課題でいい結果を残して、そのことで表彰される予定がある』ということにしたらスムーズですかね。表彰されるはずだったのにいつの間にかそこに彼女の痕跡がなくなっている、となれば[僕]も違和感を抱くでしょう。そしてそこから何かがあって分離した先の世界に到達します。

 まずは起きて学校に行きます。夢の内容を心配しつつ、彼女の無事を確認するために。

 目が覚めた。
 寝巻きが汗ですっかり濡れている。
「夢……だよね?」
 寝ている間は確かに現実ではないと認識していたのに、最後のあの教室が妙にリアルだった。まるで自分の経験のよう。でも僕はあの日彼女と話す選択をしたし、彼女はずっとそこにいた。いなくなるなんてことはない。
「(本当に?)」
 嫌な想像を頭を振って紛らわせ、僕はベッドから降りた。軽くシャワーを浴びて汗を流し、用意されていた朝食をつまむ。両親は早朝から仕事に出ているので、僕が最後だった。

リメイク本文

 あまり必要な情報ではないので詳しく書いてこなかったですが、[僕]の両親はどちらも働いていて、2人とも朝早くから夜遅くまで仕事をしています。兄弟もいないため基本的にはひとりぼっちです。苦にはならないようですが。

 とはいえ夢のせいで時間に余裕はないため、残りを弁当箱に放り込んで鞄に詰めた。いつもより早歩きで駅へ向かう。
 もし、あの夢が本当になってしまったらどうしよう。教室に行ったら彼女がいなくなっていないだろうか。
「(そうだったとして、僕に何が出来る?)」
 ここ最近、なんだか変だった。
 彼女とたくさん話せたからだろう。特別な存在だと勘違いしていた。近づけた気になって、分不相応な行動ばかりしていた。
 所詮、僕はただのクラスメイトでしかない。彼女との繋がりも本来なら無いのだ。思い出の中に紛れることもない、忘れられるべき存在。
「(……自重しよう)」
 過度な期待はしないでおこう。僕は何者でもない。静かに、クラスの空気になって過ごしていくんだ。

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 [僕]の性質からしてこれまでの行動は少し出過ぎだったので、立ち位置を改めて示すためにもこの独白を入れました。最終的に彼女を助けるためにこれは覆されると思います。

 さて、この後は学校に着いて「彼女が何かで表彰される予定がある」ということを知ります。読書感想文がいいかとも思ったのですが、全国での結果が出るのは翌年の2月なんですね。さすがに時期が合わないのでこれは避けた方が良さそうです。
 いろいろ調べてみたのですが、意外とこのタイミングで表彰されるいいものがないです。部活の成績でということならいろいろあるのでしょうが、[彼女]は特定の部活には所属していないのでそれも活かせず。英検や漢検などの検定や外部の試験についても表彰されるか分からないため、具体的な名前を挙げるのがなかなか難しくなってきました。
 ひとまず夏休み中のテストで優秀な成績を取った人を表彰する、ということにしましょうか。この学校独自の取り組みということで。

 教室に着くと、もうほとんどの生徒が揃っていた。もちろん彼女もいる。周りにはクラスメイトが囲っていて、いろんな話を投げかけていた。にこやかにそれに応えている。
 変わりなく過ごせていることに胸を撫で下ろし、でも過度に干渉しないように自分の世界に閉じこもる。
 程なくして担任が来て、ホームルームを始めた。秋の祭事に向けての準備と、夏休みのテストの結果について。僕はどちらについても関わりはないけれど、彼女は別のようだった。
「明日の朝の集会で成績上位者を表彰します。該当者は廊下の掲示板に貼られるお知らせを読んでおくように」
 先生が彼女の名前を呼ぶと、クラスメイトは湧き立った。あっという間に教室は拍手に包まれ、彼女は起立して一礼する。

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 1人のクラスメイトに対してこの対応は少し怖いような気もしますが、才色兼備でみんなに優しい彼女だからこそまわりから慕われているんでしょう。本人はその繋がりを感じられずにいますけど。

 やっぱりすごい人なんだよな。
 テストの点数は聞いてないけど、噂ではほぼ満点とのことだった。おそらく学年1位だろう、という。敵わないどころか、同じ土俵にすら立てていない。
 なんだか惨めに思えてきて、僕はその日まともに授業を受けることができなかった。

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 ここまでくれば、あとは掲示板を見て彼女がいる証拠を確認するだけですね。

 教師の言葉が右から左に流れていくうちに数時間が経ち、お昼休みになった。僕は素早く弁当を食べきり、教室を出る。お決まりの場所があるわけではないが、人が少ないところに行きたかった。
「(でもその前に、すこし確認しておこうかな)」
 テストの点数はすでにわかってるけど、何か特別な要件で僕も表彰されたりしないかな、なんて思いながら掲示板を覗く。
 表彰予定のリストにはもちろん僕の名前はなかった。分かってはいたけれど、少し落ち込む。
 彼女が最初に書かれているということは、きっと学年で一番いい点数を取ったからなのだろう。その下にも、顔も知らない成績上位者の名前が続く。変わり映えのしないメンバーではあった。
 図書室に向かう。次の試験までまだ日があるから、人はほとんどいなかった。本棚の陰で時間が経つのを待つ。

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 切りどころが難しいですね。あともう少しだけ彼女に対する気持ちを書いて終わらせたいです。

 ますます彼女が遠い存在のように思えてきた。あの日僕と話したのはほんの気まぐれで、誰でもよかったんじゃないか。秘密は共有したものの、あれから彼女と特別仲良くなった感じもしないし。全てが僕の勘違いみたいだった。
 暗い気持ちになりながら、昨日の夢を思い出す。
 どうか彼女が、悲しまずに笑っていられますように。
 気持ち悪い僕にできる、最大限の祈りだった。

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 すこし乱雑にはなってしまいましたがここで一旦区切りましょう。ここまでで約1,500文字弱なので、ペースとしてはまずまずでしょうか。少し夢の部分に文字数を割きすぎたので、推敲のタイミングで調整した方がいいかもしれないですね。


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