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メイキング|「Re:tune」リメイク #17 執筆:結【2】②

 昇降口に着くまでの間に、少し話を続けてもらいます。

「夢の中なら、普段できないことができたりするのかな」
 そうなんだよねぇ、と彼女はそのまま首を捻った。この反応的に何か試してみたんだろうか。
「教室にいたとき、とても暇だったからいろいろやってみたの。漫画みたいに魔法とか不思議な力が出ないかなー、とか。でも何にもできなかったんだよね。ただ教室に閉じ込められただけ」
 彼女も漫画を読むんだな。ひとり教室でいろんなポーズを決める姿を想像したら頬が緩んでしまった。
「あ、笑った」
「いや、ごめん」
 失礼なことをしてしまったと慌てて謝るも、彼女は優しい笑みで返してくれた。
「いいの。キミのそういう表情初めてみたな、って思って」

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 夢の中だと(他人からの干渉がないと)思ってるからこんなにスムーズに話ができるんでしょうね。普段はあんなに言葉が出てこないのに。

 僕はなんだか恥ずかしくなって俯いてしまった。ついつい返事をしてしまうけど、話しているのはあの彼女なのだ。そもそも経験がないし、緊張もしてしまう。
 顔の熱が冷めるまで少し後ろを歩いていると、彼女が止まった。
「昇降口に着いたよ」
 そう言って下駄箱をひとつずつ開けていく。
「……何してるの?」
「いや、開くなー、って思って」
 それはそうだろうけど。目を輝かせる彼女は、まるで仕掛け絵本で遊ぶ子供のようだった。もしくはゲームでアイテムを取り逃がさないようにくまなく探索する人か。
「どこかに何か入ってたら面白いよね」
「夢とはいえ、それはないんじゃないかな」
「超能力も使えなかったし?」
「うん」
「残念」

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 さて、これまでの振り返りをするにあたって、[僕]が話を振り、それに[彼女]が返すという形式がいいでしょうか。初めの逆で進行させていきたいです。
 話す前に環境を整えておきます。

悔しがる彼女を横目に、僕は開きっぱなしの扉を閉めていった。一面やって飽きたのか、彼女は下駄箱から離れて出口へと向かう。
「ここからは出られないみたいだね」
 鍵を回してドアを押しても、びくともしないようだった。教室で言っていた通り、壁みたいに動かない。
「それにしても眩しいね」
「そうだね」
 ドアから入り込む夕陽を彼女は目を細めながら眺める。この前の夢みたいに外の景色は光で隠されているようだった。

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 ここから本題です。流れとしては、「前提条件のすりあわせ」→「現状の再確認」→「結論」としたいです。彼女は認識できる部分だけが正しいと思ってるけど、重なることによって世界は広がるよ、ということを示したいです。もしかしたらこれはこの2人だから起きた特殊事項かもしれませんが。

 後ろ姿を見て、あの日のことを思い出す。世界のことについて話し、彼女とはここで別れた。僕から遠ざかるにつれて、彼女の世界から消えていくような寂しさがあった。
「あのさ、前に話したことなんだけど」
 僕の言葉に彼女は振り返った。促すように目線を変える。
「あの時、世界は自分が認識できる部分で、重なった部分があっても感知しなければ正しいものではないって言ってたけど、それは変わりない?」
「うん」
「そうすると、今のこの状況ってどうなんだろうね」
「学校から出られないこと?」
 僕は頷く。
 彼女はこちらへ歩み寄り、そのまま廊下の方へと進んで行った。僕もそれに遅れないように着いていく。

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 想定してた文字数を超えそうな予感がするので、少しペース調整しながら進めていきます。体育館を目指しながらこの話をしてしまいましょう。

 さっきのはさ、と彼女は話し始めた。
「どこまでが私の世界なのか、っていうこと?」
「そうなのかな。そうなのかも。きみがここから出られなくて、他の人の声も聞こえないんなら、ここはきっときみの世界だろうし」
 そうだね、と彼女は呟く。少し考えてから言葉を続けた。
「でもきっとそれは違うかな」
 彼女は振り返り、後ろ向きのまま歩く。僕は彼女の否定の意味を考えたけど、いまいちピンとこない。ここが彼女の認識の限界なのではないか、と思ったんだけど。
「たぶん、私の世界は教室が限界なんだと思うよ。気づいた時から一度も外に出られなかったし。知ってる場所は多いしはっきりと思い出せるけど、実体験としては乏しいというか。実感がない感じ?」
「じゃあいま教室から出られたのは」
「キミのおかげじゃないかな?」

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 [彼女の世界]は彼女自身が認識できる範囲が狭いから教室が限度となります。知っている/覚えているだけで自分の世界とならないのは、そもそも彼女が定義する[より確からしい世界]というのが「自分の周りだけ」と限定しているからです。
 その反面[僕]の世界は街全体と広くなっています。これは、[彼女]とは逆で「重なり合いによって世界が広がっていく」と定義しているため、知っている/覚えているだけでも自分の世界となり得ます。ただし、正確に覚えていない(認識できていない)場合は[世界]による修正が入るか、その部分だけ欠落してしまいます(見られるけど行けない場所、という認識です)。
 今回、教室から出られたのは[彼女の世界]へ[僕]が介入したことで[彼女]の認識が拡張されたからと考えるのが正しいでしょうか。とはいえ、[彼女]の影響力により制限されてしまうため、学校からは出られなくなっています。
 このことを説明してもらいましょう。

 彼女の笑顔にドキリとしてしまう。なかなか慣れない。そんな僕をよそに、彼女はくるりと向きを変えて進んでいく。
「キミが教室の扉を開けてくれたから、私の世界が広がったんだと思う」
「それは……よかった」
「うん。でもどこまでいけるかは分かんないけどね。でも学校から出られないのは、私のせいなのかなぁ」
 歩くペースを落とす。何かを蹴る仕草をしているが、ここは室内だから転がせるものはどこにもない。
 彼女が言うには、彼女の世界に僕が来たことで行ける場所が増えた、ということだった。それはつまり、僕の世界が重なることで範囲が拡張された、ということなのだろうか。最初の彼女の考え方とは違うけど、僕たちが思っていたような、人との関わりで形成される世界に近づいた気がする。

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 説明されてました? ちょっと言葉が足りない気がします。でも彼女自身、今回のことについて全てを理解しているわけではないのでここはこのまま置いておきましょう。
 さて次の目的地は体育館です。[彼女]がいなくなってしまった時の状況を書いていきます。

「あ、体育館行けるんじゃない?」
 彼女は小走りに廊下の終わりへと向かう。体育館と繋がる連絡通路への引き戸がある場所なのだけど、その先は光ではなくちゃんと体育館が見えている。
 僕が追いつく頃に彼女は扉の鍵を開け、そのまま引いた。抵抗なく、軽い音を鳴らして動く。
「やった!」
 嬉しそうに笑い、彼女は体育館へと入っていった。

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 あっという間に体育館に着きました。歩き回る描写で言葉を重複させないようにするのちょっとキツいですね。もう少し力をつけたいです。
 体育館では、前述した通り[僕]を主軸に世界が孤立した時の[彼女]側の話を書いていきます。

 誰もいない体育館はとても寒かった。隙間風はないけれど、人の気配がないのも相まって冷え込んでいる気がする。2人の足音が広い空間に響いた。
「私、授業と集会の時以外はあんまり体育館来ないから、ちょっとアウェーな感じするなー」
「僕も」
 そもそも体育の時は端の方で見学をしているから、より馴染みがない。集会中も話をほとんど聞いていないし。
 そこで今朝の出来事を思い出す。
「そういえば、キミは今日の集会で表彰されるんじゃなかったっけ?」
 僕の声に、器具庫の扉をどうにかしようと奮闘していた彼女は汗を滲ませながら振り返る。
「うん。この前の試験のやつ。わざわざやんなくてもいいのにね」
「すごいことだと思うけど」
「ありがと。でもその分集会を早く終わらせて授業すれば皆にとっても有益なのに」
 開かなかったのか、彼女は諦めてこちらに戻ってきた。
 頭のいい人が考えることはあんまり分からないな。周りから褒められるほうがいいような気がするけど。

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 自己評価が低いので褒められたがりですね。認めてもらいたい、というのもあるのでしょうが。


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