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メイキング|「Re:tune」リメイク #18 執筆:結【2】③&【3】

 集会について触れられたので、このまま本題に入ります。ただ話すだけだと間がもたないので器具庫からボールを出そうと思ったのですが、[僕]の認識の範囲外だったので開きませんでした。

 彼女は辺りを確認し、そして反対側に転がるバスケットボールを見つけた。拾いに行き、ドリブルをしながら戻ってくる。叩きつけられる音が反響して耳が痛い。

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 なんだか[彼女]は犬みたいですね。興味が出たものに一目散に駆けていくところが特に。気まぐれなところは猫みたいですが。

「でも、きみの名前は呼ばれなかったんだ。周りは気にしてない様子で、ちょっと変で。廊下の掲示板を見てもやっぱりきみの名前はなかった」
「そうだったの?」
「うん。昨日まではあったのに、今日になってどこにもその痕跡がなくて。急に皆が忘れるのも変だし、僕だけが騙されているのかもしれないって思ってマスターのところにも行ったんだけど」
「え! どうだった?」
「……そもそもアルバイトを雇ってないって言ってた。きみのことを聞いても、なんにも知らないみたいで。こんなにいろんな人が覚えてないなんてことはないよね?」
 うーん、と彼女は考え始めた。ゆっくりとした間隔でボールを突く。まるで心臓の音みたいだった。

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 うっかり喫茶店の話も出せましたね。「ひとりぼっちの感覚」について言及する余裕はあまりないかもしれませんが、あわよくば入れたいですね。
 急にバイト先に突撃する[僕]に対しての[彼女]からのツッコミは控えました。[彼女]なら気にしないだろうし、何かを思ってもそれを言葉にするかどうかは慎重に考えるでしょうし。

「確かに、ちょっとおかしなことがあったんだよね」
 考えがまとまったのか、彼女は顔を上げた。ドリブルをやめ、シュートの体勢を取る。
「昨日ね、家に帰った後、食事も寝る支度も全部済ませてから、いつもみたいに勉強してたの。だいたいは日付が変わるくらいにはキリが良くなるから、そこで終わらせて寝るんだけど。昨日はちょっとノっちゃって」
 ボールを打ち出すも、リングのはるか手前で落ちてしまった。転がってくるボールを僕が拾い、彼女へパスをする。でも力加減がわかんなくて、全然違う方向へといってしまった。彼女が最初からひとりで拾いに行った方がよかったのでは、とさえ思う。
「気づいたらかなり時間が経っちゃってて。でも、朝まではまだまだ時間があるから寝ようと思ったの。机を片付けてベッドに行こうとした時に、眩暈がして」
 なんだか頭の奥に引っ掛かる感じがあった。その状況に、心当たりがある。
 彼女は再度狙いを定め、シュートをした。今度は綺麗な放物線を描き、リングの真ん中を通り抜ける。よし、と彼女は小さくガッツポーズをした。
「……それで?」
「うん。眩暈はすぐ治ったからそのまま寝たんだけどね、その後目が覚めたらあの教室にいて。最初は夢なのかな、って思ったけど様子がいつもと違って。あとは話した通り」
 具体的な時間はわからないものの、昨日の深夜に変な揺れる感じがあったのは彼女も同じらしい。地震ならクラスメイトも話題にするはずだし。そうでないのなら、この状況に何か関わることがあったのかもしれない。
 バウンドして返ってくるボールを取り、脇に抱える。

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 世界が孤立するその瞬間は、2人とも感じたところみたいです。どちらかというと、[彼女]の世界の分離に[僕]が引っ張られた、という感じかもしれませんが。

「だから、多分だけど、私があの教室にたどり着いた時点で“私という存在”がいなくなっちゃったんじゃないかな」
「でも、きみは今ここに──」
 彼女の言葉を否定しようとして、嫌なことを思いついてしまう。
 ここはもしかして、死後の世界ということか?
 僕の表情を見て何を考えているのか悟ったのか、彼女は慌てて言葉を足した。
「あっ、私は死んでないよ! ちゃんと生きてる! ただ、たまたまここに閉じ込められちゃっただけだから!」
 だから心配しないで、と呟く。

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 このままだとひとりぼっちの感覚について話せそうにないですね。まあ、あくまで考察の材料なのでいいでしょう。
 とはいえこれでおおよそ書こうと思っていた部分を書き終わりました。物語の終わりはあの教室で迎えたいので、2人には元に戻ってもらいます。

 ここが死後の世界だったら僕ももれなく死んでいることになるが、確かにその自覚はないので違うのだろう。果たして死んだことを正しく認識できるかどうかは不明だが。
 その後も僕たちは校内をまわったが、他に確認できたのは図書室くらいだった。歩き回って疲れたので、自分たちの教室に戻る。

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 あとは、原文のラストを補強していくだけですね。そのためには、彼女にこうなってしまった経緯を理解してもらわなくてはなりません。具体的な描写はせず、彼女の理解力の高さに全てを任せましょう。

【3】

 さて、最後のセリフに向けて整えていきます。

「いやー、たくさん歩いたね」
「そうだね」
「こんなに歩いたの、課外学習のハイキングの時以来だよ」
 彼女は席に着くなりだらしなく机にもたれかかった。足を投げ出し、くの字になる。僕も川を挟んで一つ隣の椅子に座った。
「僕も、普段こんなに動かないから。明日は筋肉痛になりそう」
 冗談のつもりで言ったのだけれど、彼女は少しだけ顔を曇らせる。

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 原文では「ループする世界」として記載していましたが、今回の結末としては「切り取られた一部分」なので繰り返しというのは不適切です。そのため、「明日」というものもこの世界には存在しません。

「明日、かぁ」
 そう呟いて、彼女は姿勢を正した。いつかの時のように、光に溢れた窓の向こうを見遣る。
 僕はこの状況に対する正しい言葉が見つからなくて、その後ろ姿を眺めることしかできなかった。

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 うっかり【起】のワンシーンと繋がってしまったので、それを活かせるように進めていきます。

 彼女は今、何を考えているのだろう。僕のせいで機嫌を損ねた訳ではないと信じたいが、それ以外の選択肢が思い浮かばない。
 世界のことについてはもう答えが出ているし、彼女はひとりぼっちではない。寂しい気持ちの全てを解消してあげられないにしても、少しでも力になりたい。
「──そういうことか」
 そう小さく呟くと、彼女は立ち上がった。そのまま僕の目の前に立ちはだかる。

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 あともう少しです。最後のセリフの前に、もうちょっとだけ描写を挟みます。

 彼女の表情を読み取ろうと見上げても、逆光で何も分からなかった。ただ、少し冷たい感じがする。寂しさとは違う、悲しい雰囲気だった。
「ねぇ、大丈夫? 少し休んだほうがいいかもしれないよ」
 僕の言葉には耳も貸さず、その場にとどまる彼女。怖くなって、椅子を後ろに引いて立ち上がる。

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 これで目線が同じになりました。少しの解説を入れつつ、この物語を終わらせます。

 最初はね、と彼女は話し始める。
「変な状況になって、ここから出られなくなって。誰かに助けを求めたくても、もう私の世界には誰もいなくて。それでも、って思ってた」
 声が震えている。言葉を搾り出すように連ねていく。
「だからキミが来てくれた時、本当に嬉しかった。これで私も救われる、って安心した。でも、それは私にとって、ってだけだった」
 顔を上げる。お互いの視線が交わる。瞳に溜まる涙を夕陽が拡散する。
「ごめんね」
 彼女は悲しく微笑んだ。

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 お疲れ様でした。これでひとまずは終了です。
 とはいえ、途中で似た描写が多かったり、説明が不足している部分もあるでしょう。次の推敲パートで全体の調整をしていきます。
(一緒に、このリメイクメイキング自体の推敲も行なっていきます)


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