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メイキング|「Re:tune」リメイク #22 推敲:承【1】&【2】

3.2 承:情報の補完

【1】

 始業のチャイムがなる頃、昨日回収してきたプリントを鞄から取り出した。中から一緒に小さいカードがこぼれ落ちてくる。
 床に落ちるすんでのところで紙を掴み、よく見てみると昨日もらった喫茶店の名刺だった。彼女にもらった、僕たちだけの秘密の証。

【推敲前】

 ここは一連の動作なので改行はせずにそのまま続けます。

 始業のチャイムがなる頃、昨日回収してきたプリントを鞄から取り出した。中から一緒に小さいカードがこぼれ落ちてくる。床に落ちるすんでのところで紙を掴み、よく見てみると昨日もらった喫茶店の名刺だった。彼女にもらった、僕たちだけの秘密の証。

【推敲後】


 また彼女といろいろな話をしたいとは思うものの、教室で僕の方から話しかける勇気はないし、かといってアルバイトの時間を知っているわけではない。喫茶店に電話しても教えてくれることはないだろう。そこまで考えて気持ち悪くなってきて、僕は足早に教室を出た。
「(どうしようかな……)」
 かといってそのまま帰るには少し早い。喫茶店に行くにしても、彼女はまだいないだろう。自習室で課題を少しやってから行くことにした。

【推敲前】

 「早」という字が近い位置で重なりそうなので表現を変えます。

 また彼女といろいろな話をしたいとは思うものの、教室で僕の方から話しかける勇気はないし、かといってアルバイトの時間を知っているわけではない。喫茶店に電話しても教えてくれることはないだろう。そこまで考えて気持ち悪くなってきて、僕は足早に教室を出た。
「(どうしようかな……)」
 かといってそのまま帰るには中途半端な時間だった。喫茶店に行くにしても、彼女はまだいないだろう。自習室で課題を少しやってから行くことにした。

【推敲後】

【2】

 ロータリーを渡り、大通りを越えてすぐの路地を歩いていく。日が延びたとはいえ、建物の影に入ってしまえば途端に暗くなってしまう。でもそこはよくないものが蠢く場所というよりは、人々から忘れられた記憶のようだった。

【推敲前】

 寂れた場所ということを表現したかったのでしょうが、あまり上手くいっていないようなので調整しましょう。「人が寄りつかないのではなく、気づく人が少ない」というニュアンスにしたいです。また夏~秋を想定しているので、日は短くなっているはずです。

 ロータリーを渡り、大通りを越えてすぐの路地を歩いていく。だんだんと日が短くなってきているから、建物の裏手に入るともう薄暗かった。太陽の熱も遮断され、とても冷えている。人通りもなくて、少し寂しいところだった。

【推敲後】


 手元にある小さな地図と目の前の店を何度も見比べながら足を止めた。

【推敲前】

 セリフ前の文末に合わせてこちらも修正します。

 手元にある小さな地図と目の前の店を何度も見比べながら足を止める。

【推敲後】


 僕は吸い込まれるようにいちばん奥の席に座り、注文をとりにきたその人にコーヒーを頼む。

【推敲前】

 ひらがなである必要性を感じないので漢字にします。

 僕は吸い込まれるように一番奥の席に座り、注文をとりにきたその人にコーヒーを頼む。

【推敲後】


 落ち着いたところで、ふとここにきた目的を思い出す。
 不自然にならないようにあたりを見回すものの、彼女の気配は感じられなかった。今いるスタッフはあの男性だけのようだし、僕以外にもお客さんはいない。
 裏から聞こえる豆を挽く音も心地よかった。火の音や水の音も気持ちが安らぐ。程なくしてコーヒーのいい匂いが強くなり、奥から男性が顔を出した。

【推敲前】

 彼女を探していたと思ったら急に喫茶店の話になってびっくりするので、もう少し繋ぎをよくします。また、その次の文章で「音」という言葉が多いので工夫しましょう。

 落ち着いたところで、ふとここにきた目的を思い出す。不自然にならないようにあたりを見回すものの、彼女の気配は感じられなかった。今いるスタッフはあの男性だけのようだし、僕以外にもお客さんはいない。
 とはいえ初めての場所で緊張していたのだけれど、他の人に邪魔されずすごせるのは想定していなかった。少しだけ心が緩んでしまう。耳を澄ませてみれば、キッチンからは豆を挽く音が聞こえた。コンロの火が消され、数瞬後にお湯が染み込んでいく様子が容易に想像できる。程なくして、コーヒーのいい匂いと共に奥から男性が顔を出した。

【推敲後】


 そういえば、と彼が口を開く。
「自己紹介がまだだったよね。ぼくはこのお店を切り盛りするしがないマスターだよ。よろしくね」
「よろしくおねがいします……」

【推敲前】

 自分のことを「マスター」と呼ぶのはイマイチしっくりこないため改変します。とはいえこのあと彼のことを何度も呼ぶため、「マスター」という言葉は残しますが。

 そういえば、と彼が口を開く。
「自己紹介がまだだったよね。ぼくはここの店長をしています。お客さんからは『マスター』だなんて呼ばれてるけど、こだわりはないから好きに呼んでくれていいからね。よろしく」
「よろしくおねがいします……」

【推敲後】


 もちろんこちらから話すことはないのだけど、かと言って会話待ちをしていても時間ばかりが過ぎるだけだし。早々に飲み切ってお店を出ようにも、マスターを押し退けて出口まで行かなくてはいけないからやりづらい。

【推敲前】

 「やりづらい」だと「出来ないわけではないけど」という意味が含まれてしまいそうなので、「選択肢にはならない」という意味になるようになおします。

 もちろんこちらから話すことはないのだけど、かと言って会話待ちをしていても時間ばかりが過ぎるだけだし。早々に飲み切ってお店を出ようにも、マスターを押し退けて出口まで行かなくてはいけないから難しい。

【推敲後】


 いつまで経っても埒が明かないので、意を決して聞いてみる。
「……あの」
 僕の言葉に彼が顔をあげる。

【推敲前】

 前の文末に合わせて修正します。

 いつまで経っても埒が明かないので、意を決して聞いてみる。
「……あの」
 僕の言葉に彼が顔を上げた。

【推敲後】

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