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メイキング|「Re:tune」リメイク #15 執筆:結【1】①

2.4 結:孤立してしまった世界での2人

 ここからは孤立した世界でこれまでのことを振り返ります。[彼女]の特異性と[世界]の状況について、【起】と同じように会話をしながら詰めていきます。
 まずは原文を見てみましょう。

【1】
「世界には、想像もできないほどたくさんの生きものがいるんだって」

 突然、声が飛んできた。
 蜂蜜を流し込んだような甘く、重たい黄金色の中に、ひとつの影が浮かんでいた。それは無名の机に腰をかけ、現れた星々よりもはるか遠くを眺めている。何が見えていたのかはわからない。でも、僕には見えないものを、じっと、見つめていたのだろう。
 彼女がいた。
 昨日と寸分違わぬ形をして。
 学校の顔であった彼女が、今日突然消失したと聞いたばかりなのに、そこにはやはり、彼女がいた。僕の願望が作り上げた幻想ではない。ちゃんと、生きている。
 でも何故、どうやって。
 疑問ばかりが頭に浮かび、ろくな返事も返せないまま沈黙が続く。
 これは果して聞いてもよいのだろうか。
 彼女が振り向いた。
 いつもは笑顔を見せるその顔が台無しで、でも一種の恐怖を抱きそうなほどに美しかった。
 その目は、過去への後悔が映し出されていた。その中身まではわからない。
【2】
 そう、そうか。
 彼女は特別だった。
 べつに僕にとってだけじゃない。
 世間一般、もっといってしまえば世界にとってそうだった。
 そんな彼女は、おそらく知ってしまったのだろう。
 この、美しくも残酷な世界の真実を。
 この、恐ろしくて儚げな世界の理を。
 永遠に廻り続ける果てしない一日の結末を。
【3】
 彼女は、今にも泣きそうな瞳を静かに僕に向けている。

「ごめんね」
 彼女は小さく微笑んだ。

「Re:tune」原文

 原文では夕方に学校に戻ってきた[僕]が再び教室で[彼女]と会い、そこで全てを察する流れになっています。こちらでも原因は[彼女]にあり、それに[僕]が巻き込まれているところは同じですね。
 ここで[僕]こんなに驚いているのは、集会で「彼女が死んだ」と聞いたからです。リメイク後は流れが異なるため、リアクションは変えましょう。
 また、ここまで察しが良すぎるのも変ですし(どうして理解できたのかを描写していないですし)、物語を片付けるには味気ないので足していきます。

大まかな流れは以下の通り。

  1. 彼女もう一度会えたことへの安堵と疑問

  2. 彼女の秘密と、知ってしまったこと

  3. 孤立した世界でのふたり

 とはいえあまりこのセクションではイベントが起こらないので、くどくならない程度にテンポよく片付けられたらいいですね。

【1】

 ここは、【起】の再演を行います。あの特別な時間が戻ってきたと錯覚してしまいますが、これ以上時間が進まないということを暗に示しています。ですが、ここから先は[僕]と[彼女]しかこの世界にはいないため、吹奏楽部や運動部の声は聞こえません。扉を開くまでは昼休みだったため、音が消えたことを表現するためにそちらを使います。

「世界は自分に見えるところにしかないんだって」
 夕暮れ時の教室。
 校舎からは生徒達の気配が薄れ、しんと静まっていた。騒がしかった廊下も、活気のある体育館の音も聞こえない。
 琥珀色に満たされた教室は、透き通る宝石のように眩しかった。夕陽に照らされ、宙に舞った塵がきらきらと光る。

リメイク本文

 世界が分離してしまったとしても状況は変わりないため、[彼女]は席について振り向きざまに問いかけます。【起】ではイメージを重視してセリフと情景の順序を一部変えていますが、今回は時系列通りに描写していきます。

 最前列の、窓に程なく近い席に彼女は座っていた。扉を開けた僕の方を振り向き、あのときと同じ言葉を投げかける。長く整えられた髪が光を反射して、柔らかく揺れていた。
 窓から溢れる夕日に遮られて彼女の顔がよく見えない。でもその表情はなんとなくわかる。
「あ、あの、えっと……」
 まさかそこに彼女がいると思っていなかったから、うまく口が動かず言葉が出ない。やっと自分の幻想だったと心のなかで決着をつけられたと思ったのに、こうも簡単に覆されてしまうのか。

リメイク本文

 【起】をちゃんと再現するのはこれくらいでいいでしょうか。このあとは彼女の秘密について紐解くために、席につくところまでを書いていきます。流れは同じ様になってしまうでしょうが。

「驚いた。まさかキミが来てくれるなんて」
 彼女は席を立ち、こちらに向き直る。手招きをして、席に座るよう促された。僕もそれに従うように扉を閉め、彼女の方へと進む。
「それは……どちらかというと、こちらのセリフなんだけど」
「まあそうだよね。でもキミに会えてよかったよ。もう一生ひとりで過ごすんだと諦めてたからさ」
 会えてよかった、と彼女が僕に言った。それは僕のことを識別していて、僕のことを益がある人間と認識しているということか?
 思わぬ言葉に頬が緩みそうになる。でも彼女の前だ。気持ち悪い姿は見せられない。

リメイク本文

 [僕]の妄想はちょっと気持ち悪いですけど、よっぽど蛇足にならない限りはこのまま書き進めていきます。いつものごとく、あとから修正できますし。
 この孤立した世界は彼女だけの世界なので、彼女が認識できるところまでが活動できる範囲です。そのため、教室の中でしか動けず閉じ込められてしまっています。ただ、[僕]が介入したことでそのエリアが広がります。そこをヒントに話を広げていきましょう。

 僕は彼女に指示された通り、隣の席に座った。彼女も同様に、静かに椅子に腰を落とす。
 それでさ、と彼女は口を開く。
「どうやってここに来たの?」
「どう、って言われても。普通に教室の扉を開けたら眩しくなって、気づいたらきみがいた」

リメイク本文

 [僕]↔[彼女]間の呼び方をちゃんと考えてなかったですね。お互いに「キミ」だと、ふと読み返したときにどちらが話しているのか分からなくなってしまいますし。マスター→[僕]は「君」なので、[彼女]→[僕]は「キミ」、[僕]→[彼女]は「きみ」としましょう。名前を出していればここまで苦労はしなかったかもしれませんが。

「そうなんだ。てっきり、扉は開かないものだと思ってたんだけど」
 でも僕が入ってこれたのだから、閉め切られたわけではないのだろう。僕を見る彼女の瞳には安堵の色があったけど、同時に影を落とすような暗さがあった。あのとき感じた寂しさとはまた違う、後悔みたいな色。
「私、どうしてこうなったかは分からないんだけど、なぜかここから出られなくなっちゃって。時計も進まないし、外の音も聞こえないし。ひとりぼっちで、声も届かなくて、夢かとも思ったけど、頭のどこかで違和感があって」
 うつむき加減にそう呟いた。ということは、あのとき夢に見たような、僕の勝手な心配はあながち間違いではなかったということか。
「大変だったね」
 そう口にして後悔した。彼女の辛さも知らないで、そんな同情するような言葉を着やすくかけるべきではなかった。でも彼女は気にしていないように続ける。
「そうなんだよ。お腹もすかないし眠くもならないから別に出られなくてもいいんだけど、かと言ってずっと教室の中っていうのも飽きてくるじゃない?」
「……そうだね」
「うん。話し相手が欲しかったけど、ここには誰もいなかったからさ。なんとなくいろんなことを考えながら、時間を過ごしていたんだけど」
 そう言って彼女はゆっくりと立ち上がった。教卓の後ろに立ち、ホームルームのときの担任のように手をつく。

リメイク本文

 「ひとりぼっちで大変だった」というところから「外に出られたらいいのにね」というところに繋げつつ、うっかり外に出られたふたりは学校の中を探検しながら答え合わせをしていきたいですね。


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