観光を巡るバルセロナの緊張感
日本では72年前に広島へ原爆投下された日であるが、2017年のバルセロナの8月はなかなか緊迫感のある状況からスタートしている。
まずこの記事、
Arran defiende sus acciones: "No estamos en contra de los turistas"
では、市民の活動団体が8月6日(日)に過激なデモを行っていることを報道している。
Arranというのが左系の活動団体なので、観光客に対して反対しているわけではなく、資本主義に基づく観光モデルに対しての反対であるというような主張のようだが、過激な行動を取っている。
8月4日の記事ではこんな報道もあった。
El grupo Endavant se suma a los ataques contra el turismo: "No es turismofobia, es lucha de clases"
ここでも「ツーリスモフォビア(観光嫌い)ではなく、階級闘争である」と主張しているが、やっていることは"観光客は家に帰れ!"という壁の落書き、レンタルバイクのパンク、観光用の店舗のシャッターキーにシリコンを詰めるというような抵抗だ。気持ちはわからなくはないが、これでは単なるヴァンダリズムと変わらない。
それに対してバルセロナ市長のアダ・コラウは「こうしたアクションは孤立したものである」と一蹴している。
Ada Colau: "No hay que magnificar las acciones contra el turismo, son hechos aislados"
アダ・コラウ市長はもともと左系の活動家であり、今年の1月に観光産業の抑制へと政策の舵を取ったこともある。しかしこうした過激なヴァンダリズムで観光現象を抑えようということには嫌悪感を示している。
バルセロナに対するイメージダウンによって観光客が減ることは望むことではない。いかにして「持続的な観光」を呼び込むのかがポイントになると考えているからだ。
どちらにせよ観光を巡り様々なコンフリクトが起こっていることは間違いない。これはかつてのバルセロナには無かったような問題だ。1992年のバルセロナオリンピック以降、いち早くDMO(Destination Management Organization)を設立して、観光誘致を頑張ってきただけに、なかなかここからの舵取りが難しい。
かつてはラバル地区などは危険で歩けないような薄暗くて汚い場所だったので観光などおよびもつかなっただろうに。以前の問題が解決されたと思うと、次の問題がやってくる。大勢の人が出入りする都市とはそういう緊張感のある場所であり、それが次へと変容を進める原動力になることもある。
ちなみに、本日は空港でもセキュリティゲートの職員たちのストライキがあったようだ。
Colas de hasta hora y media en El Prat por la huelga de los vigilantes
4時間待ちの人もいるというコメントが映像にあったが、人が流動する観光は、かなりな部分こうしたシステムに依存している。だからストライキやテロ、災害などに対しては非常に脆弱であることも考慮せねばなるまい。
いずれにせよ、10月にはカタルーニャ州がスペインから独立することを問う2回目のレファレンダム(投票)もある。なかなかこの時期にバルセロナにいるのは緊迫感がみなぎる。一方で今はバカンスの真っ只中で、そんなことはよそ知らずで観光客たちは楽しそうにビーチで日焼けしてモヒートを飲んでいる。
2017.08.06
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