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原因不明の地球磁場の活発化

Earth’s magnetic field is acting up and geologists don’t know why
Erratic motion of north magnetic pole forces experts to update model that aids global navigation.

Alexandra Witze
Natureより
09 JANUARY 2019


「地球の磁場が壊れた動きを見せているが、地質学者たちにはその理由がわからない」
北極の磁極の不規則な動きにより、専門家たちは、大急ぎで全地球の磁気ナビゲーションモデルを更新せざるを得なくなっている。

 地球の頂点の北極で何か奇妙なことが起きている。北極の磁極が、カナダからシベリアに向かって滑るように移動しているのだ。現在、磁極は急速に移動しており、この現象は世界中の地磁気学の専門家たちに行動を起こさせている。
 来たる 1月15日に、地磁気学の専門家たちは、世界の磁気モデルを新たに更新して設定することになっている。
 この磁気モデルは、地球の磁場を描写するものだが、これは船舶を操縦するシステムからスマートフォンでのグーグルマップまで、現代のすべてのナビゲーションの基礎となるものなのだ。
 この磁気モデルの最新版は 2015年に発表され、その際には、西暦 2020年まではこのモデルの状態が続くと考えられていた。 しかし、地球の磁場が急速に変化しているために、専門家たちは地球の磁気モデルを早急に修正しなければならなくなったのだ。
 米コロラド大学の教授であり、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の国立環境情報センターの地磁気学者であるアーノード・チュリアット(Arnaud Chulliat)氏は以下のように述べている。
「エラーは常に増え続けています」
 問題は、部分的には動いている極にあり、部分的には地球の奥深くにある他の変化にある。
 地球の大部分の磁場は、中心部での液体撹拌により発生している。磁場は深い流れが変化するにつれて時間と共に変化する。
 例えば 2016年には、南アメリカ北部と太平洋東部の下で磁場が一時的に加速した。欧州宇宙機関の磁場観測ミッション衛星 SWARM がその変化を追跡した。
 2018年の初めまでに、世界の磁気モデルは問題を抱えていた。
 アメリカ海洋大気庁と英エジンバラのイギリス地質調査所の研究者たちは、モデルが地球の磁場のすべての変動をどれほどうまく捉えているかについて、年に1度チェックしているが、2018年の初め、研究者たちは現行の磁気モデルが、ナビゲーションエラーの許容限度を超えようとしているほど不正確であることに気づいた。

●さまよう極磁

 チュリアット氏は、「私たちが見つけたことは、とても興味深い状況でした」と述べる。
 研究者たちは「いったい何が起こっている?」と考え、そして、それに対しての2つの答えについて、ワシントン DC で開催されたアメリカ地球物理学連合の会議で報告した。
 まず、南アメリカの下にある 2016年の地磁気パルスは、2015年の全世界の磁気モデルの更新の直後という最悪の時期に発生した。これは、モデルの設計者たちが予想していないような状態で最新のモデルの更新の直後に地球の磁場が急増したことを意味していた。
 第二に、北極の磁極の動きが問題を悪化させた。
 ジェイムス・クラーク・ロスがカナダの北極圏で 1831年に北磁極を最初に測定して以来、北の磁極は探検家たちと科学者たちを惑わすかのように、予測不可能な方法でさまよい続けている。
 1990年代の半ばには、それまで北磁極の移動する速度が年に約 15キロメートルだったものが、 1年に約 55キロメートル移動するほどまで加速した。 
 2001年には、北磁極は北極海の位置に移動していた。そこで、2007年に、チュリアット氏を含むチームは、北磁極を見つけるために海氷に飛行機を着陸させた。
 2018年に、北磁極は国際日付線を越えて東半球に入った。
 現在、その北極の磁極は、シベリアに向かって一直線に進んでいる。
 このような地球の磁場の幾何学的配置は、北極など、磁場が急速に変化する場所でのモデルの誤差を拡大している。
 チュリアット氏は、以下のように言う。
 「北磁極の動きが加速しているという事実が、より大きなエラーをもたらしやすくしています」
 世界の磁気モデルを修正するために、チュリアット氏と同僚たちは、2016年の地磁気パルスを含む 3年間分の最近のデータを提供した。
 チュリアット氏は、新しいバージョンは 2020年に予定されている次のモデルのアップデートまで正確であるはずだと述べる。

●なぜこのようなことが起きているのか
 科学者たちは現在、なぜ磁場がこれほど劇的に変化しているのかを理解しようと努力している。
 2016年に南アメリカの下で起こったような地磁気パルスは、コアの深部から発生する「流体磁気」波にさかのぼるかもしれない。
 そして、北磁極の速い動きは、カナダの真下での地球内部の溶鉄の高速の動きと結びつく可能性がある。
 この溶鉄の高速の動きが、カナダ直下の磁場を弱めているようだと英リーズ大学の地磁気学者フィル・リバーモア(Phil Livermore)氏は、アメリカ地球物理学連合の会合で述べている。
 それは、カナダが本質的にシベリアとの磁気の綱引きを失っていることを意味している。
 リバモア氏は、「北磁極の位置は、カナダの真下とシベリアの真下の2つの大規模な磁場の領域によって支配されているようなのですが、現在、シベリアの領域が勝っているようです」と述べる。
 将来的に、地球の地磁気学者たちはこの磁場の変化に関して、さらに忙しくなる可能性もある。

Nature 565、143-144(2019)

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