見出し画像

難しい日本語がわかる=簡単な日本語もわかる、ではない

外国籍の社員とうまくコミュニケーションがとれない!!
という悩みをお持ちの方は結構多いのではないでしょうか。
私も毎日、外国人の同僚や部下とのコミュニケーションに悩まされている会社員のひとりです。
そんな私が日本語教師の資格をとり、実際に教えてみることで見えてきた「コミュニケーションのストレスを軽減する」ための豆知識をお伝えしていきます。

タイトルを見て、「???」と思った方もいるのではないでしょうか。
基本的にすべてのものは基礎があり、その上に応用があるものです。誰もが学んだことのある外国語といえば英語だと思いますが、まずはアルファベットを学び、「pen」や「apple」などの簡単な単語を学び、be動詞などの基礎的な文法を学び…まずは日常会話ができるようになってから、必要に応じてより高度なビジネス英語を学んでいく…こういった流れで勉強する人がほとんどでしょう。
英語で簡単な道案内はできないけれど、自社製品についてのプレゼンや交渉はできます!という方はなかなかいないと思います。

そのため、私たちは勘違いしているのです。「今、一緒に仕事をしている人はかなり日本語ができる。だから、今よりレベルの低い内容の会話は問題ないはず」と。
でも、実際にはそれは間違っている場合があります。ここを勘違してしまっているせいで相手に伝わりにくい発言をしてしまい、でも自分の勘違いには気づいていないので、相手が理解できないと「どうしてこんなことも理解できないの???」とちょっとイライラしてしまう。そんなケースがときどき発生しているようです。身に覚えはあるでしょうか?(私はあります)

こんなことが起こる、その理由は2つ。
・日本で今働いている人の中には、学校で基礎から積み上げる勉強の仕方をしていない人がいる
・日本語母語話者と日本語を外国語として勉強した人では、レベルの高低の基準が違うことがある

勘違いを解消できると、今後イラっとしかけた時に思い出して深呼吸する余裕ができるかもしれません。
詳しく説明していきますね。

日本で今働いている人の中には、学校で基礎から積み上げる勉強の仕方をしていない人がいる

実際に私が教えた人の中に、実際にいた人の話です。仮にAさんとします。Aさんは私の同僚で、社員の中でも結構日本語はできる方。JLPT N1(日本語能力試験の最高レベル)を持っています。その人が、私に日本語を習いたいと言ってきました。
最初私は、「必要ないのでは?」と思ったのです。仕事中にほかの社員と話している様子を見ていても特に困っている様子はありませんし、実際その人に対しては、日本人も気を遣わずにネイティブならではのかなり文法的には正しくない声のかけ方をしたりしているくらいです。

そこで、普段日本語で困っていることがあるか、どんなことに困っているか、直接聞いてみました。
彼の答えは、「日本語は仕事をしながら独学で覚えたので、日本語学校で日本語を勉強したことがないんです。JLPTも初めて受けたのはN2です(JLPTではN1~N5で難易度が分かれますが、N1が最も高いレベル、N5が最も低いレベルです。ちなみに、日常会話ができるとされるのはだいたいN3レベル)。仕事中はそんなに困っていないけれど、今年小学生になった子どもが言う日本語がわからなかったりすることが多くて…」とのこと。

私もずっと、語学は学校で基礎から積み上げていくもの、という固定観念があったので目から鱗でした。でも実際、仕事のために日本語を勉強する人の中には、「とにかく仕事で閊えるフレーズや単語から覚える」というような人もいるようです。

旅行用のフレーズ集などをイメージするとわかりやすいかもしれません。私たちが海外旅行をするときも、旅行中に「○○までどうやって行けばいいですか?」「これはいくらですか?」というフレーズを知っている方が便利ということはありますが、旅行だけのために「This is a pen.」から勉強するなんで効率が悪すぎますよね。

それと同じように、仕事で今すぐ必要な表現から勉強していった結果日本語を覚えた、という人も中にはいます。そういう人は、意外と日常生活のためのフレーズや単語は知らないことがあるのです。

日本語母語話者と日本語を外国語として勉強した人では、レベルの高低の基準が違うことがある

こちらも、先ほどのAさんを例にした話です。
「小学生の子どもが言うことがわからない」というAさん。具体的にどんな言葉がわからなかったのか?最近子どもを通して知った言葉は?と質問してみたところ…

ゴキブリ。
ごっゴキブリ。確かに教科書にはあまり出てこなさそう…(そして最近それを覚えたのがどういうシチュエーションだったのかちょっと気になる笑)

そしてもう一つあがったのは、「水筒」でした。確かに保育園や学校では持ってきてくださいと言われることが多そうですが、職場で使ったことはないかもしれません。

考えてみてください、「ゴキブリ」「水筒」「履歴書」「南東」を、より簡単な言葉とより難しい言葉に並べてくださいと言われたら、あなたはどう並べますか?
多くの人は、「ゴキブリ」「水筒」をより簡単な言葉のグループに、「履歴書」「南東」をより難しい言葉のグループに入れると思います。

実際は、「履歴書」「南東」は、JLPTN4レベルの必修単語ですが、「ゴキブリ」「水筒」はこのリストに入っていません。つまり、多くの日本語学習者は、「履歴書」「南東」は勉強したから知っていますが、「ゴキブリ」「水筒」は自分の生活で遭遇することがなければ知らずに済ませてしまえる言葉なのです。
(「日本語NET」のJLPT語彙リストを参考にしています。)

私たちが考える言葉の難易度と、外国語として勉強する場合の言葉の難易度は結構違う、ということが分かっていただけたでしょうか。

相手と自分の常識が違うと知ると、ちょっと許せる(かも)

ここまで読んでいただけた方には、難しい日本語がわかる=簡単な日本語もわかる、ではない、ということが納得していただけるようになったのではないでしょうか。

これを知ったからといって、明日からのコミュニケーションががらっと変わるわけではないでしょう。でも、知っていると、「あーもう!なんで伝わらないの!」と思ったときに、相手の状況をちょっと想像しやすくなるかもしれません。
コミュニケーションにストレスはつきものだと、私は思っています。
でも、ストレスを感じている自分に気づいたときに、「でもこれって私が簡単な言葉だと思っているだけで相手にとっては初めての言葉なのかも」と少し想像できたら、ちょっと許せそうですよね。

最後に、相手に言葉が伝わらないときの対処法として、2つおすすめの方法をお伝えしておきます。

①画像検索する

「うさぎ」「電気ケトル」など、明確に物質としてあるものであれば、頑張って言葉で説明するよりも、意外と画像検索で見せてしまうのがお手軽です。Googleで画像検索をすると関連する画像が一度にたくさん見られるので、それを見て「あーこれね!」と一瞬で理解してもらえます。

②その場で言葉で説明せず、チャットなどで送る

画像検索で見せることが難しい抽象度の高い言葉は、相手にテキストで送ってしまいましょう。言い換えのできる言葉であれば別の言葉に言い換えて説明しておき、「今は伝わらなかったけど調べておいて」と相手の宿題にしてしまうのです。
口頭で言うと、相手はどんな漢字を書くのかも想像できず、聞こえてきているものを自分が正しく聞き取れているのかも自身が持てず、あいまいに覚えてしまって後で検索しても調べたい言葉に行きつけない、という状況になってしまうことがあります。テキストで送れば、特に漢字圏の人であれば文字で意味を想像できたり、そうでなくても後からコピペして検索して意味を確認することができます。

ぜひ試してみてください。

明日からのコミュニケーションの手助けに、少しでも役立ちますように!
何かお悩みがあれば私も一緒に考えてみたいと思いますのでお声がけください。

いいね・フォロー・コメントありがとうございます!
ほかのSNSもよかったら見てください😊


note(日本語教師としての記録のほか、読んだ本や日々の記録を書いています)

Instagram(本や書店など大好きなものの記録)

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?