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『アイスクリームフィーバー』 -今を一生懸命生きていくための居場所になってくれるような映画だった-

久しぶりに映画館で映画を観ました。


『アイスクリームフィーバー』


これ、40↑で渋谷系どっぷりだった人間はみんな好きなんじゃなかろうか?とすら思う。私の10代~20代は渋谷でできているといっても過言じゃない位、渋谷は青春が沢山つまりまくってる街で、この映画の舞台は渋谷なんだけど今の渋谷ではなくて、90年代半ば頃の渋谷のおしゃれな所だけを煮詰めて創られたような映画だと思う。なんか、10代の頃のワクワクと20代・30代で身に起きた象徴的な出来事のあれやこれやの感情が、映画見てる間ずーっと入り混じってた。


実際の店舗:恵比寿の猿田彦珈琲


90年代の渋谷は、街とファッションと音楽が合わさって1つの文化を作り上げていたと思っていて、とにかく夢があったなあ。今みたいに曖昧さやあそびを許さないような厳しさや、ナチュラルでリアルで身近な存在が求められる風潮とは逆に、緩くてファンタジックで「・・・で?」的なことにも寛容で、でも全部がルーズなわけではなくて、引かれるべき所にはきっちり線引きがされてる。だからこの映画を今の若い子達が見たら、すんごい極端な話、ちょっと薄っぺらくてチープで、なんかおしゃれの上澄みだけすくってかっこつけてイキっててよくわかんないし、ちょっと恥ずかしい…ダサい…とか思うのかもしれない。(映画監督さんごめんなさい。)今はやりの伏線回収とか、明確な答えもないし、深みもない。でも個人的にはそれがめっちゃ良かったし好きだなあと。


一生懸命生きてきたし随分ズタボロにもなったけど、今思うとふわふわしてたな。
新しいもので溢れててそれを発見・探求できた時代だから、ふわっと生きられていたのかなあ。ってか正直いまだにふわふわ生きてるからあんま変わってないか。


誰にも共有されないということは、その良さは今のところ、わたしだけのものということ

吉岡里帆演じる、元社畜デザイナー(おそらく不倫もしてた)でバーンアウト後にアイスクリーム屋でバイトしてる菜摘が、ある日バイト先に現れたモトーラ世里奈ちゃん演じる作家の佐保に心奪われるも、心奪われている<何か>を具体的に言語化できない・・・と悶々としながら、夜に自室で絵を描きながら言う台詞があって。


❝うまく言葉にできないということは、誰にも共有されないということでも
あるのだから。つまりその良さは今のところ、わたしだけのものということだ。❞

映画『アイスクリームフィーバー』より


このセリフ聞いた時にうわぁ・・・と言葉を失うような気持ちになったんだけど、それは、言葉にしたいのにうまくできないなあと悶々とする気持ちの奥底には、私だけのものにしたいという強い思いが潜んでいるんだなと答え合わせができたから。若い頃、恋愛での悩みや彼氏の愚痴や惚気を臆することなく漏らす人たちの気持ちが全く理解できなくて、なんでなんだろう?と思っていたんだけど、恋愛は2人だけの世界でのことなのにそれを他人に共有した時点で他人が入り込んできてしまう、そのことが猛烈に嫌だったんだなと。今でも恋愛や人間関係、推しのことで感じた感情を誰かと共有したり、こうやってブログ等に吐露することがうまくできないなと思うことが多いんだけど、その裏側には「別に共有したくない」という思いが実は強いんだなあと改めて気づかされてちょっと、なんていうか、、
ゾッとしました(笑)まあ今はどちらかというと「共有したくない」「ひとりじめしたい」というよりも、共有しないことを楽しんでるって感じだけど。


私か、私じゃないか

もう1つ。安達祐実演じるお姉ちゃんの娘・美和が、妹である松本まりか演じる優ちゃんの家に、お父さんを東京で探すために転がり込んできて、あることで喧嘩になった時に優ちゃんが美和に言い放った

❝幸せか幸せじゃないかは、もはやどうでもいいから。私か、私じゃないかだから❞

映画『アイスクリームフィーバー』より

ってセリフ。・・・それな!!!ってめちゃくちゃ腑に落ちた。(とかなんとか書きつつ、推しにはむちゃくちゃに幸せであってほしいと常に願っている矛盾w)でも正直ほんっと、幸せかそうじゃないかとかもはやどうでもいいんだよなー。いや、良くはないけど、私か私じゃないかが先。これはもう絶対的にそうだなあと思ってる。私であり続けることができれば、誰かや何かに心奪われすぎて自分を見失ってぐっちゃぐちゃになる時期があれど、トータル幸せだから。(でも今の時代、ぐっちゃぐちゃになるなんてスマートじゃないし重いんだろうな。)


安達祐実も松本まりかも演技がうますぎる。この姉妹のシーンすごくよかったなあ・・・。


❝私はね、夕立みたいになりたいの。一瞬で過ぎ去っていく夏の夕立みたいに。❞

この辺りのセリフもちょっと時代を感じるというか、なんか今の時代の空気感とは少しズレた感は個人的にあるんだけど、、、めちゃくちゃ好き(笑)正直、実際こんなこと私は絶対に言わないんだけど、ただ通り過ぎる人でしかないとか、それでいい的な感覚はものすごくわかる。刹那的で地に足ついてない感じ。最高。生き方としてはおすすめしないけど。でも個人的には、未熟さや子どもっぽさを魅力に転換して生きられたら最高だなあなんて最近思ったりしてます。

ちなみにこのセリフは、モトーラ世里奈ちゃん演じる作家の佐保に対して、アイスクリーム屋のバイトの同僚で恐らく菜摘に恋心?を抱いてる貴子(水カンの詩羽)が
「菜摘さんのことどう思ってるの?」と聞く場面でのやりとりの一部で。
"夕立みたいになりたい"っていう佐保の返しに貴子は
「・・・ずっるいなぁ(苦笑)あなたはそれで満足かもしれないけど、菜摘さんはずっと忘れられないよ。。」
と返すんですよね。なんか、すっごい青臭くてこそばゆいけど、この青春っぽさとかエモさ(と私は感じる)が大好きです。


推しの存在で空虚さを埋めるなんて・・・

私は、誰かの存在で自分の空虚さを埋めることにものすごく抵抗があります。特に今は、アイドルと呼ばれるような、自分に息子がいたらそれぐらい年の離れた異国の地の男の子達が好きなこともあって、抵抗やら申し訳ないような気持ちでいっぱいで…。アクセルを踏みながらブレーキも踏むような心情で応援していて、心から楽しむということがすごく難しかったりしています。

でも女優さんというのはなんかすごいですね。吉岡里帆さんが

「自分に自信が持てない中、出会った人がそんな部分を埋めてくれるようなロマンチックさを脚本から感じました」

と舞台挨拶の時にお話してて、それ聞いた時なんかハッとしたんです。これでいう<ロマンチック>は私にとっては<依存>という解釈で、私の中に根深く残る、依存は悪だという思い込みや恐怖を自覚させられたので。でも、人によってはロマンチックという解釈になるんだ…って。


で、もしかしたら、最近推しになった人たちは「自分の空虚さを誰かに頼って埋めてもらうこと」を経験するために出会っているのかもしれないなあなんて思いました。

少々話が脱線するけれど、私は人でも物事でも今このタイミングで出会ったりアンテナが立つということにすごく意味があると考えているので、日常の恋愛でも推し事でも、なんの意味があってどんなことを学ぶためにその人や物事に出会ったんだろう?と自分なりに考えるんです。
例えばある推しとは
「誰かの愛や想いを受け取ることの大切さ」
を学ぶために出会ったと思っていて、その推しの生き様を通して良くも悪くもまさに今もそのことを学び続けていたり。

最近だとBOY NEXT DOORという、なんとまだ満年齢が全員10代の韓国人の男の子たちのグループに猛烈に心奪われているんだけど、たぶん彼らからは
「楽しく幸せな記憶を積み重ねていくために、今を生きられるようになる」
ことを教えてもらうために出会ったのかなあと思っていたり。

私は青春大好きおばさんなので、90年代カルチャーをいまだにこよなく愛してるしあの時代しか勝たん!的な時代錯誤マインドで生きてる節がある人間なんですが、結局今この時も1秒後には過去になっていくわけで、常に今という時をできるだけ楽しく充実させて生き続けるためには、まさに今を目いっぱい謳歌して一生懸命生きないとだと思うのです。それが未来の自分を支えてくれるから。もう随分長いこと、過去に楽しいと思ってたり、好きだった過去の自分の感覚を今に引っ張り出して生きてるような毎日を送っている感じなので、ずーっとどこか空虚なんですよね。それを、いろんな感情や経験をさせてくれることで、満たされて、<今>を楽しんで、幸せな記憶を積み重ねていける自分にぐぐーっとシフトしてくれるのがBOY NEXT DOORに出会えた意味なのかもなあと。・・・なんて、脱線しましたが、そんなことをこの映画から感じたりしました。


それでも、今はまだやっぱり『アイスクリームフィーバー』のような、やさしくて肯定的で慣れ親しんだ空気感が漂うふわっとした映画に、癒しと居場所を求め続けてしまうかもしれません。自分の感覚を認めて好きになりたいのに気後れする気持ちが強くて誰かと共有することが怖く、言語化せずに私だけのものとすぐ内に閉じ込めてしまったり、決めつけるようなアウトプットが苦手で決めつけられることも嫌いでずるいと言われてしまったり、言語化が苦手だから一生懸命説明しようとするけどただただ長くなるだけで、で?とかよくわからない重いつまんないと思われてしまう、そんな私をやさしくいじって突っ込んで笑って受け入れてくれる、のびのび生きられる世界がこの映画にはありました。


脇を固める演者さん達もみんな最高・・・


この映画を見終わった後、人生はつながっているんだなあと思う出来事があって。誰かに向けたまっすぐな愛情が、例えその誰かから返ってこなかったとしても、巡り巡って違う形でどこかや別の誰かに届いて、受け取ってくれて、他所からそれが返ってくることがある。その喜びとかありがたみを肌身に染みて感じさせられるような、心が温かくなる幸せな出来事でした。これからも不器用なりにもっと、自分の気持ちに真摯に真っすぐ愛を伝えられるようになろうと思います。


ちなみに。サントラも何年ぶりかわからない位に購入しました。

FPM『SOUNDTRACKS FOR ICE CREAM FEVER』

まだ手元には届いてないので、オンラインショップの画像を拝借。紙製デジパックの見開き仕様って所がまた私好み。届くのが待ちきれず、先にSpotifyで聴いてるけど、やっぱり映画館で聴く方がいいな。。タイトルトラックのサウンドがほんと、90年代の渋谷とか下北界隈を思い出させられて最高にぐっときます。FPM、昔はほんっとに数えきれないほどフェスで沢山見て聴いてたので懐かしい。。相変わらず超かっこいい!なんかまたフェスに行きたくなりました。熱中症になったのを機に体力の限界を悟り、ああ、もうフェスは引退しよう・・・と決めて早10年。最近、韓国のインディーロックにハマりつつあるのをきっかけに、海外のロックフェス参戦をまた目論んでるんだけど、日本のフェスも行きたいなあ。1人でもゆるりと参戦できるようなフェスないかな。。

あと、niko and…とのコラボ台本ノート、むちゃくちゃ欲しいので、.stさんどうか再販を!!!


ということで、『アイスクリームフィーバー』めちゃくちゃ大好きな映画でございました。明日からも今を一生懸命生きていけるように、あともう1回は見に行こうかな!


このシーン、めちゃくちゃかわいかった♡


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