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自分でやる証拠保全

はじめに

合同会社フォルクローレ代表の中村です。

国際的スポーツイベントで選手に対するツイッター上での誹謗中傷が問題になっています。

私は、警視庁で約38年間勤務して参りました。
その間、サイバー犯罪の捜査にも携わり、不正アクセス事件や顧客情報流出事件などを解決に導いてきました。
その経験から、インターネット上で誹謗中傷を受け法的措置を検討しようとする場合や、何らかの犯罪に巻き込まれたような場合の対処方法についてお話をしようと思います。

相談相手を選ぶ

まず最初に重要になることは相談相手を間違わないことです。
インターネットが絡む犯罪やトラブルは、加害者と被害者が直接顔を合わせていないという特性があります。そのため、適用になる法律も対面で行われる犯罪とは異なる場合が多々あります。
これだけであれば法律の適用と解釈の問題ですので、法律さえ理解していればそれほど問題になることはありません。
しかし、サイバー犯罪の特性は、インターネット(TCP/IP)やコンピューターに対する知識や技術が必要になるというところにあります。たとえば、不正アクセス事件であればアクセス制御をする方法がいくつかあり「スタンドアロン型」「ゲートウェイ型」「認証サーバー型」に分けられます。これがどういうことで、実際にどう動くのかといったようなことが分からないと被害に遭っているのがどのサーバーなのかも分かりません。

技術と法律のジレンマ

このあたりのことは、警察も同じジレンマを抱えています。
サイバー犯罪の捜査には、ネットワークやシステムに関する知識が必要なのはもちろんですが、その知識があれば捜査ができるかというとそうもいきません。捜査を行うには刑事訴訟法の理解や捜査実務に関する知識と技能が必要になります。
中堅以上のベテランといわれる捜査員は、一般的にコンピューターの知識に乏しくサイバー犯罪に対応することが難しいのが現状です。
そこで警察は、コンピューターに関する知識と技能を身に着けさせるため若手に対するトレーニングを推進しています。ところが、若手は捜査実務の経験がなく、コンピューター関連の知識はあっても捜査ができない「あちらを立てればこちらが立たず」という状態になっています。

つまり、ネットワークやコンピューターに対する知識があっても法律の知識がなければ判断がつきませんし、法律の知識があってもネットワークやコンピューターの知識がないととんちんかんな判断を行う可能性が生じます。
ですから、サイバー犯罪にかかる相談をしようとするときは法律の知識があることは当然として、ある程度ネットワークやコンピューターに関する知識がある人を選ぶことが重要になります。

ツイッターの証拠保全

次は証拠の保全です。
今回問題となっているツイッター上での誹謗中傷に対して法的措置を取ろうということを前提とします。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ツイッターはツイートのひとつひとつに個別のURLが割り当てられています。URLというのは、インターネットの世界で特定のWebページやファイルを指し示す住所のようなものです。
ツイッターでの発言を証拠として保全したいのであれば、このURLを忘れずに控えるようにしてください。よく、ツイートのスクリーンショットだけを保存して警察に相談にみえる方がいらっしゃいました。これですと発言内容は分かりますが、その発言主を特定するためにツイッター社に証拠の開示を求めることができません。
そして、民事事件として損害賠償を求めるにせよ刑事事件として処罰を求めるにせよ、裁判所に提出するのは「書類」です。ツイートもスクリーンショットやいわゆる魚拓といった画像ファイルで提出することはできません。ですから、印刷年月日とツイートのURLがヘッダーとフッターに印刷される設定で紙に出力したものを持参することをお勧めします。

説明

証拠を集めるときの注意

証拠を集めて警察に被害届を出したいとします。
このときも、どんな証拠を持って行くかで被害届を受けてもらえるかどうかが違います。さらに、その後の捜査の結果にも大きな違いが出てきます。犯罪には「犯罪構成要件」というものがあります。たとえば窃盗なら「ひとの」「財物」を「窃取」することが要件です。これを証拠として出すには「誰の」「何を」「どうやって盗んだか」が分からなければなりません。警察が動きやすい証拠を集めて提出することも事件を有利に進めるために必要です。

これはツイッターに限ったことではありませんが、各種のログはそれぞれの会社やサービスで保存期間(容量)が決められているのが一般的です。一定期間が過ぎたログや容量いっぱいになったログは消去又は上書きされていきます。ネット上のトラブルで証拠を保全しようと思ったら「いつかやろう」ではなく「すぐやる」ことが重要です。

このように、ネット上の犯罪やトラブルは対面で行われるものとは若干異なる対応が必要になります。
弁護士に対応を依頼しようとしても、その事件に必要な証拠が出せないと弁護士の判断を誤らせることになったり、追加の証拠を求められて余計な時間がかかってしまったりします。
弊社では、長年サイバー犯罪の捜査に携わった経験を活かして、誹謗中傷や不正アクセスなどの被害に遭ったとき、迅速かつ間違いのない判断とアドバイスを行うことが可能です。
証拠が消えてしまい後悔することのないよう、適切な相談先をみつけて早いうちに対応しましょう。

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