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短いおはなし

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風媒街



「そう、明日の便に乗るの」

 突然過ぎる話にどんな反応をするかと心配していたが、母は穏やかに笑った。そして、頭の中で思い出を回想したのだろう、ぼくの全身を眺めて「大きくなったわねえ」とひとり言のように呟いた。

「寂しくなるわね」

 今度は壁にかかった父の写真のほうを向いて、同意を求めるように言った。

 あたたかな日差しが窓辺に注いでいる。空気中には生き物たちの息吹が感じられる、春独特

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ニジム

自分の衝動性に半ば呆れながら、ヒトミは窓の外を眺めていた。
電車はさきほどまでのヒトミが望んでいた、海辺の町に向かって進んでいる。
身を任せて乗っていればそこに着くことができる、という事実に気付いた途端、海辺の町がなんとも魅力のないものになってしまった。
かといって、会社に午後休を出してまで飛び乗った電車からは降りるに降りられず、ただただ過ぎていく景色を流し見ていた。
電車内の冷房は最大限と言える

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