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食品の健康効果を確かめる(入門編)

コラーゲンは美肌に良い
ビタミンCは風邪に効く
プロテインは運動後に摂ったほうが良い

食品の効果効能の情報は巷にたくさん溢れています。それら一つ一つ正しいか正しくないかを確かめるのも大変ですし、日進月歩のこの世の中全てを知っている人なんていません。

じゃあどうすれば良いの??

今回のお題は食品の効果ってそもそもどうやって確かめているのか、その方法を知ることで対策をとりましょうと言うお話しです。

もしあなたが効果を確かめる方法をあまりよく知らないのであれば、その方法がどうなっているのか、何を基準に判断すれば良いか、今回の「入門編」パートをぜひ読んでみてください。

もしあなたが臨床試験のことをよく知っていて、食品なんて研究デザインだいたい適当なんでしょ?と思っているなら、食品の世界を知って欲しいので次回「応用編」を読んでいただきたい。


効果の検証にはお作法がある

食品なり医薬品なり、効果を検証する方法というのはいくらかあります。

例えば、風邪をひいた時にビタミンCのサプリメントを摂っていたら風邪が治ったとしましょう。これも確かにビタミンCの効果を検証する方法の一つとも言えそうです。
では果たして本当にこれだけで良いのでしょうか?

例えば、ビタミンCを飲もうが飲むまいが治ったのかもしれません。
また、気温があったかくなってきたので、治りやすかったなどの可能性もあります。
そもそも、治ったということ自体本当でしょうか?気のせいもしれません。

・・・難癖つけまくりですが、こういった批判的吟味が必要なのが効果検証のお作法。

科学的根拠を確かめよう

効果検証がなされているかというのは、よくいう科学的根拠(エビデンス)があるかに近似できます。

私の知る限りよくできているフローチャートとしてこちら物もがあります。

出典:https://hfnet.nibiohn.go.jp/fundamental-knowledg/detail771/

ステップ1:そもそも効果を確かめてますか(=ただの意見じゃないですか)
ステップ2:論文で報告されていますか(=他の人からの査読はありますか)
ステップ3:人を対象とした検証ですか(=細胞や動物ではないですか)
ステップ4:信頼できる研究デザインですか(後述します)
ステップ5:複数の研究で評価されていますか(特定組織だけじゃないか)

という流れ。
しかも全部クリアしても「とりあえず」受け入れる。というのがなんとも趣深い。

一つずつ少しだけ詳しくみていきましょう。

ステップ1:そもそも効果を確かめてますか(=ただの意見じゃないですか)


馬鹿みたいな話ですが、SNSの情報ってだいたいこんなもんです。
論文を引用しているように見せかけて論文と全く関係ない自分の主張を展開したり、都合の良い概念を切り取ってあたかもエビデンスがあるように見せかける人もいます(しかも本人はそれをエビデンスありと本気で思ってるからタチが悪い)。

ステップ2:論文で報告されていますか(=他の人からの査読はありますか)


非理系の人と話していてよく誤解されていることですが、一般的には学会発表より(査読付き)論文の方が厳しいです。
学会の多くは発表内容まで第三者の意見が反映されることはなく、発表と質疑応答の数分間耐えれば誰でもできます。
一方で論文は試験設計が適切か、そこから得られる結論が飛躍していないかなど、きちんと見られます(最近はそうでもないのもありはするけど)。


ステップ3:人を対象とした検証ですか(=細胞や動物ではないですか)


当たり前ですが、人に効くかを知りたいのであって、細胞や動物を良くしたいわけではありません。
細胞実験や動物実験はあくまで人で効くか否かの前段階であったり、なぜ人で効くのかメカニズムを探るもの。これ自体は安全性の観点も含め大切ではありますが、データの見方に注意しましょう。

研究デザインにはレベルがある

ステップ4:信頼できる研究デザインですか

これは非常に説明しにくいですが、研究デザイン(つまり研究の設計方法)には幾らか種類やレベル感があって、それぞれ重要ではあるもののその手法によってどこまで結論づけられるか(=前述のような難癖をつけられなくても済むか)が決まってきます。

ではそんな話をわかりやすくするため、例えば風邪をひいたときに空想上のビタミンΩが効くかどうかという研究があったとしましょう。


症例報告

まずは症例報告というものがあり、これは一人でも良いのでこういう事例があったという話。

風邪をひいた32歳男性にビタミンΩ100mgを毎日摂ってもらったら、3日目で喉の痛みが治った、などがこれ。

正直、効果を確かめる(有効性の)観点では食品の分野ではあまり見かけません。希少疾患を扱うことも少なければ特殊な食品を与えることもほぼないので。

ただ、安全性の場合はしばしば見かけますね。カフェイン中毒やら妊娠中に○○を食べた、などなど。

観察研究の場合

観察研究の場合は例えばこんな感じ

1.風邪をひいている人とひいていない人にアンケートをとったところ、風邪をひいていない人ほどビタミンΩを摂っていました。(横断研究)
2.風邪をひいた人と風邪をひいていない人の過去ビタミンΩをどれだけ摂っていたか調べたら、風邪をひいていない人はビタミンΩの摂取量が多かった(後ろ向き研究)
3.ビタミンΩをどれだけ摂取したか3ヶ月記録してもらって、3ヶ月後に風邪をひいた人とひかなかった人を調べると、ビタミンΩを摂った人ほど風邪をひいた割合が低かった(コホート研究)

全体として、意図を持って対象者に何かしらもらうこと(介入)をしていないものになります。
観察研究の因果関係まで言い切ることは難しい場合が多く、相関があるというところまでの証明になるものです。

例えば1の場合はビタミンΩ以外の要因もあるでしょうし、アンケートだって過去に遡っていて忘れているかもしれません。また、ビタミンΩを摂る生活習慣の人は別の何か良い習慣を持っているかもしれません(いわゆる交絡)。

ある意味ビタミンΩって良いのかも?という仮説をとりにいくのが観察研究とも言えるでしょう。

介入研究

続いて介入研究。これは文字通り介入します。
これにもレベル感のようなものがありまして

  1. 風邪を引いた50人にビタミンΩを取ってもらうと、45人が3日後に喉の痛みが治った。(単群前後比較)

  2. 風邪をひいた人100人をランダムに半分に分けて、片方にはビタミンΩを、片方には何も与えず比較したところ、ビタミンΩを介入した群の人の治癒率が有意に高かった。(ランダム化非盲検比較試験)

  3. 風邪をひいた人100人をランダムに半分に分けて、片方にはビタミンΩを、片方には見た目は同じただの白い粉を投与して比較したところ、ビタミンΩを介入した群の人の治癒率が有意に高かった。(ランダム化盲検比較試験)

なんとなくお気づきかと思いますが、下に行くほどバイアスが少なくなるので、ビタミンΩだけの効果をより反映していますよね。

メタアナリシス

そして最終的には

ステップ5:複数の研究で評価されていますか(特定組織だけじゃないか)

ということで、複数の研究で確かだと言われたところで、やっと信頼してもいいかな?というレベルになるわけです。

特に利益相反のない(ビタミンΩを売っている人とは関係ない)人達が公開しているとなおよし。


というわけで、まず今回は入門編ということで、食品の効果を確かめるってどんなことをしているの?というお話をしました。

次回は応用編として、特に食品分野でありがちなこと、悩み、難しさを語った行きますので、お楽しみに!

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