見出し画像

#20 極私的ブリットポップ・クラシックス・ベスト10

 あっという間に2023年も残り1ヶ月を切ってしまいましたね。今年も色々ありました。あらゆる意味でぶっ飛ばされたスーパーボウルのハーフタイムショーのリアーナのステージとともに年が明け、個人的にはひっさびさに参加したフジロックとあのLizzoのステージ、そしてNew Jeans旋風と待望のNiziUの韓国デビューとか(いやぁ、”HEARTRIS"最高!)、ようやくパンデミックも本格的に収束してライブにもいくつか行けたりして、なかなかに充実してたなぁ、と思うわけなんですが、後々になって2023年を振り返ったときにやっぱり思い出すに違いないのは、Blurが復活して新しい曲をドロップし、サマーソニックで来日したってことなんだろうなぁ、と遠い目になってしまうわけなんです。

 ということで、2023年にもなってまた久々にあの頃の音楽を熱病のように聴きあさっていた思い出とともに、このまま歴史の波に埋もれてしまいそうな曲たちを、ブリットポップベスト10みたいな形で書き残しておきたい、そんな気分なのです。おそらくポップの歴史に語り継がれるであろうOasisやBlurがど真ん中で鳴り響いていたあの頃、徒花のようにに生まれた思い出の曲たち、是非とも聴いてってください。

1. The Bluetones "Slight Return"

 ああ、もうこのアルペジオからのカッティングギター、そしてちょっとマンチェスター風で軽快な16ビートの上を駆け巡るグッドメロディを奏でる少し鼻に掛かるヴォーカル。”ブリットポップとは?”って聞かれたらまずこの曲を思い出す、みたいなブルートーンズのデビューアルバム収録の代表曲をまずはどうぞ。もう当時から好きすぎて、ダッフルコートにサックスブルーのオックスフォードシャツ、そしてクラークスのデザートブーツっていう、今も自分の定番のスタイリングになってるこのクリップまんまの格好で大学のキャンパスを練り歩いていたあの頃を思い出さずにはいられません。

2. Cast "Alright"

 アコギをかき鳴らしながらひたすらアンセミックでハーモニックなコーラスパートを歌い上げるCast、こちらもデビューアルバムからのリードシングルにして代表曲を。伝説的なリヴァプールのバンド、The La'sのベーシストでもあったジョンパワー、来日したThe La'sのライブでも気難しそうなステージングの天才フロントマン、リーメイヴァースの横でひたすらポジティブなバイブスを放ちまくっていたジョンを思い起こさせる、気持ちがリフトアップされる名曲です。なんともうすぐ新譜をリリースするとか。

3. Dodgy "Good Enough"

 ああ、こちらも軽快でパーカッシブなビートと軽快なギターサウンドに乗せて、ブリッジ部分にかかるとこのホーンと絡まる”Ah〜”ってなコーラスがたまらないDodgyの大名曲。ぶっちゃけOne Hit Wonder感が否めない彼らですが、未曾有の好景気とクールブリタニアにわくイギリスの空気を捉えた、リリックも含めて何ともポジティブなバイブに満ち溢れたいい曲なんですよ。

4. Toploader "Dancing in the Moonlight"

 シャキシャキしたビートの上を鍵盤のリフが跳ね回り、ソウルフルにポップクラシック”Dancing in the Moonlight"を歌い上げるこの名カバー、確かリリース時期はブリットポップど真ん中よりはちょっと遅かったはずですが、こちらはたまに聴き直すたびにグッドフィーリングになれること間違いなしの1曲です。

5. Supergrass "Pumping on Your Stereo"

 ぶっちゃけこのブリットポップベスト10、このスーパーグラスについて語りたいってのが書き始めた動機の8割くらいを占めてると言っても過言では全くありません。稀代の3ピースバンドと言い切ってしまいたくなる彼ら、この曲はブリットポップの狂騒も少し落ち着いた1999年にリリースされたアルバムからのリードシングル。ちょっとブーム去った感もあったところに、イントロから”Can you hear us, pumping on your stereo?”のリフレインがいきなり最高なこの曲をどうしても紹介したくて。スーパーグラスの代表曲といえば、ピアノリフが印象的すぎる1stアルバムの”Alright"だと思うんですけど(去年のグラストで復活して全く衰えを見せないキレを見せててこちらも最高です)、グッと深みを増したこの曲とこの頃のスーパーグラスも最高だ、と声を大にして言っておきたいな、と。

6. 60ft Dolls "Stay"

 そうそう、スーパーグラスを筆頭に、3ピースのロックバンドも活躍してたんですよこの時期。中でも好きだったのがこの60ft Dolls(シックスティフットドールズって読みますちなみに)の”Stay"です。イントロからもうカッコいい、The Jamから繋がるUKロックの伝統芸、だけどコーラスパートではハーモニーが冴え渡る、みたいな、要はまあ大好物なやつです。

7. Ocean Colour Scene "Hundred Mile High City"

 オーシャンカラーシーン、もうこのバンドは1曲に絞るのはほぼ不可能なほど、この頃のアルバムもその後のキャリアでも何曲も名曲があるんですが、断腸の思いながら、今聴いてもブっ飛ぶこと間違いなしのこちらを。The WhoやSmall Facesとかの名前を挙げたくなるような、リズム&ブルースを基調にしたダンサブルなリズムとサイモンの超ソウルフルなヴォーカル。ブリットポップの隆盛とともに、ソロでシーンに復活したポールウェラー御大を中心に、こうしたサウンドも当時を思い起こさせますね。サイモンのタイトなパンツ姿と、ギタリストであるスティーブのジョンレノンを想起させるキャスケット使い…MODに憧れたあの頃のファッションアイコンでもありました。ランブレッタとベスパが壮観な”The Circle“のMVもついでに。


8. Ash "A Life Less Ordinary"

 ブリットポップって括られるのを、何より本人達が嫌がりそうな気がしてちょっとアレなんですけど、今でも絶賛活動中、アイルランド出身の幼馴染3人で結成されたアッシュもやっぱり当時を代表するバンドじゃないかと。衝動的でパンキッシュなデビューアルバム"1977"をフェイバリットに挙げる感じが大多数な気もしますが、超クールなギタリスト、シャーロットを加えてよりグッと深みを増したこの頃のアッシュが何より大好きで。ビデオにもチラッと登場してますが、”トレインスポッティング”直後の若かりしユアンマクレガーと、まだメガスターになる前、初々しさも残るキャメロンディアスが共演した同名の映画、当時ドキドキしながら神戸の単館系映画館に観に行った、特に映画史には残ってもいないけど思い出深いあの映画のテーマ曲としてリリースされたこの曲…名曲すぎてもう。

9. The Charlatans "North Country Boy"

 ブリットポップの10曲を挙げるのに、シャーラタンズの曲が入ってないなんてありえないんですよ。実はストーンローゼズとマッドチェスター全盛期にデビューして、ハモンドオルガンとダンサブルなビートでデビューした彼ら(その頃から最高でしたよもちろん)、メンバーとの死別やキャリアの紆余曲折を経て辿り着いたこの名曲、グッとテンポを抑えつつも矢継ぎ早に言葉を吐き出すティムの独特のヴォーカリゼーションが炸裂するこの”North Country Boy"を。ブルートーンズと並び、このちょっとオーバーサイズのフーデッドパーカに憧れて、ちょっとカジュアルな気分の時にはまんまこんなカッコして、ウォークマンでこの曲聴きながらガニ股で歩いてたりしたもんです。知らんけど。

10. The Verve "Bitter Sweet Symphony"

 もう最後の曲になっちまいました。あの曲もあのバンドも紹介できてませんが、最後はやっぱこの曲をおいて他には考えられません。ちょっとシーンの勢いみたいなものも落ち着いてきて、Blurはザラザラしたサウンドに向かっていき、Oasisは失速しちゃった感が否めないこの頃、しかもあのレディオヘッドが時代の気分を更新しちゃったみたいなダークでサイケデリックな”OK Computer“をリリースした1997年に、レクイエムみたいに鳴り響いていたThe Verve屈指の名曲を。”Don’t Look Back in Anger"と双璧をなすような壮大なストリングスが鳴り響く中、稀代のヴォーカリストであるリチャードが歌い上げる合唱必至のアンセム、リチャードが街を闊歩する、個人的にも大好きなこのMVも含めて、最後を飾るのに相応しいこの曲でお別れです。

 …とまあ、またしても昔の話を長々と、どこにニーズがあるのかもよく分からないままに書き連ねてしまいましたが、ストリーミング全盛、時代性みたいなものが割とまっさらにならされてしまったみたいな2023年にも堂々と鳴り響くべき名曲ばっかりなんじゃないかと、そんな思いを抱いたり抱かなかったりしながら紹介してみました。ああ楽しかった。





この記事が参加している募集

私のプレイリスト

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?