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キング・オブ・ボンビーバルサ爆誕と健全化へのパス

世間ではスーパーリーグ構想が再び騒がしくなっています。欧州連合(EU)裁判所がUEFAやFIFAがスーパーリーグへの参加を阻止したことは、過剰な権利の行使になる可能性が示されたからです。そんなスーパーリーグにレアル・マドリード(R・マドリード)ともに参加意欲を示しているバルセロナ(バルサ)。R・マドリードのペレス会長は中期的な構想があるのでしょうが、バルサの場合は泣くにやまれれぬ懐事情が参加の大きな要因だと考えられます。

泣くしかないバルセロナの事情について、本日は下記のお品書きとともに振り返っていきましょう。


21/22に”実質”破綻していたバルセロナ

時計の針を昨年の夏に戻すと、当時のバルサは財務危機どころか、財務破綻は時間の問題とまで言われていました。その後に公表されたクラブの財務諸表(財務の公式データ)を見ると、21/22シーズンのバルサは確かに財務上ほぼ”詰んで”いました

21/22シーズン終了時点のバルセロナのバランスシートの内、負債・資本の部を見ると、資本金がマイナスとなっています。これは「債務超過」と呼ばれ、保有している資産の価値より負債(借金・未払金など)が大きい状態です。つまり、この時点で金返せと言われていたら、即破綻という危ない状況だったのです。

そこでバルサのラポルタ陣営が編み出したのが、放映権の売却です。2回の売却により7.87億ユーロ(約1,230億円相当)の売上を計上し、ラ・リーガのサラリーキャップおよび債務超過をほぼ解消したのです。

※23/24は予算ベースの数字

ピッチ外でもメッシに全振り

なぜバルサは債務超過に陥ってしまったのでしょうか?
理由は無数にありますが、最大の問題はピッチ内だけでなくピッチ外でもメッシに全振りしたことにあると考えています。

メッシのピッチ内での神ぶりは言うまでもないのですが、それ以上に給与に関して大盤振る舞いを行いました。2017年の契約更内容はEl Mundo紙によると、年棒は固定給部分のみで1.38億ユーロ(約210億円相当)、さらに契約更新報酬として1.15億ユーロ(約175億円相当)。ボーナス分を除くベースで約385億円支払うという内容だったことが2021年に明るみに出ています。

この数字がいかに無謀だったかは、当時の選手の年棒総額と比べるとよく分かります。当時(17/18シーズン)の年次報告書によれば、バルセロナの選手の年棒総額は5.29億ユーロ。対して先ほどの、メッシの固定給+契約更新報酬は2.54億ユーロ。たった一人でチーム全体の報酬の半分を占めています

メッシというチームの最高年棒が引きあがれば、他の選手も「俺も!待遇を改善してくれ!」、「俺も!」、「あ、俺も!」とダチョウ俱楽部の往年のネタ状態なります。その結果、ブスケッツやアルバ、ピケといったチーム経験年数が多い選手の年棒は徐々に上昇し、高コスト体質になっていったと推察されます。

売上倍増を前提にした支出計画

メッシ全振りで高コスト体質になったところに、決定的だったのは経営陣の、というよりバルトメウ前会長の甘い甘いあまーい、ミスドでポン・デ・リング全種類制覇するより糖分たっぷりの甘い業績見通しです。

バルトメウ時代の特徴と言えば、移籍市場での大型移籍の連発です。それまでのバルサと言えば、1シーズン1億ユーロ使うとかなり突っ込んだという印象だったのですが、バルトメウ政権になると当たり前になります。

※23/24冬シーズンは数値に入らず

特に凄まじかったのは、ネイマールをパリ・サンジェルマンに放出した17/18シーズンです。ネイマールの移籍金で2.22億ユーロを稼いでおきながら、デンベレ、コウチーニョなど大型移籍を連発し、終わってみれば3.75億ユーロを支出移籍市場の収支は-1億ユーロと超大赤字になりました。

また、メッシ依存が強まってきた19/20シーズンにはグリーズマン、F・デヨングを獲得して財政的にとどめをさされます。

前会長が大型移籍を連発しても大丈夫!と見通しがあまーくなってしまったのは、会長となって最初の数年間(2014-2018)の売上の伸びが非常に好調だったことが挙げられます。12/13シーズンの終わりから計算すると、18/19シーズンまで売り上げの伸び率は、なんと年率9.7%!!。

もしこのまま売り上げが伸びていたら、今頃は会長就任当初の13/14シーズン対比で3倍になっていたでしょう。

※妄想は売上が年率9.7%で伸びつつけた場合のイメージ

ところが、現実は甘くありません。メッシに依存したサッカーは国内で通じても、欧州の舞台で通じなくなってきます。チャンピオンズリーグ(CL)は14-15の優勝以降、決勝の舞台にはたどり着けず、20/21シーズンはベスト16で敗退。6シーズンぶりにベスト8の戦いにも望めない成績となってしまいます。成績の伸び悩みとともに売り上げは鈍化し、過去の大盤振る舞い契約によりコストは増加。このシーズン途中の2020年10月にバルサの財政を破綻に導いたバルトメウは辞職を発表します。はっきり言ってやり逃げです。筆者は彼の犯した過ちを永遠に忘れません。

バルセロナは”売る”クラブへ

今後のバルセロナですが、破綻こそ免れたものの財政状況は非常に厳しい情勢です。売上は23/24シーズンの予算にある通り8.6億ユーロ(約1310億円相当)、CLの結果が良ければ9億ユーロあたりと見立てておくのが安全です。

費用は当然ながらその範囲内に抑えなければいけません。23/24シーズンの費用は8.3億ユーロなので、何が何でも今季から支払い給与が増えることは避けなければいけません

となると、残念ながら高額年俸選手や、フリー獲得やカンテラ昇格などまとまった利益が見込める選手は、売却対象になりえると考えておいた方がいいと思います。

高額年俸と言えば、やはりF・デヨングでしょう。昨季はマンチェスターユナイテッドへの売却をクラブが強行しようとして、本人が反発するという騒動がありました。26年まで契約を残す同選手ですが、大型移籍金が見込めるとなれば放出の対象になると思われます。

また、獲得金がかかっていないカンテラ上がりの選手は、売却額がそのまま利益計上できるため、売却の有力候補となるでしょう。既にバイエルンが熱い視線を送っているDFアラウホは、シーズン途中はないと思いますが、シーズン終了後に1億ユーロと言われる金額をバイエルンが積むのであれば、残念ながら可能性は十分あると言えます。

なお、現バルサで活躍する二人のジョアン(フェリックスとカンセロ)ですが、この財政状況ではW獲りは夢のまた夢。レンタル延長で凌ぐしかないでしょう。シティさん、F・トーレスの移籍金、まだ払いきってないのですが許していただけないでしょうか。リーズに関しては土下座の一手ですね。

バルセロナは優れた育成機関を有しており、”売る”クラブに回ったとしてもCL出場権を争う力はあると思います。ただ、CLで優勝するには程遠く、グループステージを突破できればミッション達成!という状態が数シーズン続くでしょう。

以上、クリスマスイブに夢のない話をしてしまいました。ただ、バルサは溢れ出る若手を楽しむことができます。お金はないなりに楽しめるのがフットボールの醍醐味です。では、本日も良いサッカー生活を!

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