難波 行

なんばゆき。大好きな小説の魅力を、言葉にする練習。

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第6期ゲンロン 大森望 SF創作講座の思い出

受講生として参加した私の備忘録としての日記なのでだらだら長いですが、太字だけ読めば、何かしらの情報としても読める。はず。これから受講を考えている方にもどうぞ。 ここで勝っていきたい!という意気込みの強い方は、古川桃流さんが書かれた記事がとても参考になると思う。私のは、この厳しい環境でとにかく死なずに生き続けるには、みたいになってる。(基本、日記なので自分が辛かったことが・・・) SF創作講座の詳細はこちら。 ちなみに、受講前の私のステータスは以下。 ・小説読むのは好き(ジ

    • 河内音頭にのせまして(フラッシュフィクション2000字)

      蒸した夜に、白熱灯の光がつらなる。人いらの喧騒。 真ん中にそびえるまだ空っぽの紅白の櫓。予感だけで腕が動き出す。 絶対一緒に食べよな、って言ってたフランクフルトとタコせんは食べしたし、ザベスがアップする用の浴衣の写真も一緒に撮った。クラスの子とか一年のとき一緒やった子に会うたび浴衣ほめあって、写真撮って、も十二分にやった。そろそろ踊る準備してもいい頃のはず。 それにスーパーボールすくってるくらいから、ザベスもロボコップみたいに周りを見回してるんに、うちはちゃんと気づいてる。

      • 縄文脳をインストールして、自由を取り戻せ!『土偶を読む』竹倉史人

        0、土偶って、怖い土偶。 現在38歳の私が一番に初めに思い浮かぶのは、「ドラえもん のび太の日本誕生」である。縄文時代の日本を舞台に、クラヤミ族とヒカリ族の戦いを描く映画なんだけれども、このクラヤミ族が妖術で操っているのが土偶なのである。土偶(映画の中ではツチダマと呼ばれている)は壊れても壊れても再生して死することを知らず、執拗にのび太たちを追い詰める。 異様な顔のお面も相まって、土偶は恐ろしいものとして幼心に刻んだ同年代は少なくないと思われる。 言葉や文化が未発達な野蛮

        • 特別な言葉で紡がれる小説_『ここはとても速い川』井戸川射子

          0、小説を深く愛する人が、泣き出した小説 井戸川射子『ここはとても速い川』(講談社) 2021年の野間文芸新人賞を受賞された作品なのですが、選考会のとき保坂和志さんがこの作品の良さを語っているうちに泣いてしまった、というエピソードがSNSで流れてきました。 いい小説なんて死ぬほど読んでるだろう人が、小説を深く愛してるだろう人が、泣き出すような、それも読んでる時でなく語りながら泣き出す小説って、どんな小説なの?! と気になり手に取ることになりました。 保坂さんの投稿はこ

        第6期ゲンロン 大森望 SF創作講座の思い出

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          話が通じない男に、絶望した時に読む本_「さよなら、俺たち」清田隆之②

          当記事単独でも読めますが、 これは「さよなら、俺たち」清田隆之についての2つ目の記事です。 ① はこちら 1、こんなに気持ちいいの、おかしくない?男性の著者が、自分に全く得にならない「フェミニズム」について考え、女性の権利奪回を望んでくれる本書。 特権の中で男性に許されてきた行為や無知・ワガママなどが、清田氏の明快な「言葉」という白日の元に次々と晒されていく快感を味わう反面、大きな疑問も首をもたげる。 清田氏はどうして、私たちをこんなに気持ち良くしてくれるの? P59

          話が通じない男に、絶望した時に読む本_「さよなら、俺たち」清田隆之②

          この理不尽を説明してくれる『言葉』を探して_「さよなら、俺たち」清田隆之①

          1、このモヤモヤを解消するには、新しい「言葉」が必要だ先日、ある男性に理不尽な怒りを豪速球でぶつけられ、ダメージを受けた。どう考えても相手がおかしい。だから不運な交通事故として忘れてしまえばいい。 と思ったのだが、なかなかスッと忘れられない。それは、男性から受けた怒りの理不尽さについて、私自身がうまく言語化できずいるからだった。 「あの人は●●で、●●ってなって私にキレた。だからおかしい!」 と明確に断言することができない。モヤモヤする。 交通事故だって、なぜ相手が信号を

          この理不尽を説明してくれる『言葉』を探して_「さよなら、俺たち」清田隆之①

          情報が生み出す、ロマンチックで豊穣な世界 『首里の馬』

          読んだ本:高山羽根子「首里の馬」(文藝春秋2020年9月号掲載) まず大好きな作家・高山羽根子さんが、ついに芥川賞を受賞されたとのことでおめでとうございます。 【物語の内容】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 小説の舞台は、沖縄県港川地区。順さんという老女が営む私設資料館で資料整理の手伝いをすることを中学生の頃からライフワークとしながら、世界中の訳ありな人々にオンラインクイズを出すという怪しげな仕事をする主人公・未名子。両親は他界し、残された家で一人、友人や親類も

          情報が生み出す、ロマンチックで豊穣な世界 『首里の馬』

          笑いすぎて電車で読めない芥川賞作品「破局」

          読んだ本:遠野遥「破局」(文藝春秋2020年9月号掲載) これがいい感想なのかどうかは分からないけど、とにかく始終、面白かった。耐えきれず声を出して笑ってしまったところもあって、途中から電車では読めないと判断して、家でだけ読んだ。そのおかげで心置きなく笑いながら読むことができた。 元ラグビー部(高校までなのか、大学でも少しはやっていたのかは分からない)の慶應大学(と思われる)の4年生、陽介が主人公。自分が所属していた高校のラグビー部コーチを任され、日々筋トレを欠かさず、直

          笑いすぎて電車で読めない芥川賞作品「破局」

          読んだ本:「わたしたちに許された特別な時間の終わり」岡田利規(新潮社)①

          オペラシティで開催中の「ドレス・コード展」に行ったらチェルフィッチュの展示があって、少しだけ読んでそのまま本棚に入っていたことをずっとなんとなく(というのもおこがましいほど極々少し、でもずっとというのは本当)気にしていたこの本を、10年越しに手に取る。 2本の中編。この投稿では『三月の5日間』。 小説は、イラク戦争開戦直前の3月、六本木で行われた戦争に関するパフォーマンスイベントの会場で出会った男女がその日から過ごしたラブホテルでの5日間が描かれる。 イラク戦争は200

          読んだ本:「わたしたちに許された特別な時間の終わり」岡田利規(新潮社)①

          東京怪談1(掌編:10分以内)

           土曜日の夜、とくに新宿のような街では様々なものの境界線がぼやけると聞いております。  派手なネオンの風俗店とやかましい外国語がまくし立てられる中華料理店、アジアの雑多な雰囲気にカメラを向ける欧米の若者たち、金髪にピタリときめたスーツ姿のホスト集団、夏だというのに革ジャンを着た黒人の客引き、ハイレグのバニースーツに豊かな胸を押し込める女たち、それらを見ては何かささやき合い笑いながら往来をゆく人々。夜の始まりです。私も夜の一員として恥ずかしくない振る舞いを意識しながら、意気揚

          東京怪談1(掌編:10分以内)