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僕の音楽遍歴と、今思う「はじまりはいつも雨」

s.e.i.k.oさんの呼びかけで始まったこの企画。僕も書いてみようと思う。

そもそもASKAさんとの出会いは、中学ぐらいだろうか、まさに実家の目の前に住んでいたいとこ兄弟(2つ上、1つ下)の家で、SUPER BESTIIとSCENEIIのアルバムをカセットで聞いたところから始まる。……と思ったら、実は少年隊の「ふたり」の歌詞に痺れた、幼少期が先であったことに後々気づく。

最初にチャゲアスにハマったのは2つ上のいとこの兄であり、太陽と埃の中でのライブVHSを三人でみた覚えが鮮明にある。

いとこの兄は高校卒業で先に就職したため、自分が高校に上がった頃には車を買い、十数万の高級コンポを買っていた。 今思えば兄貴は音楽に対してかなりのセンスを持っていたと思うのだが、色々なジャンルに手を出しては飽きていく性格であった。 そのため、 町中に遊びに行く車中では、安全地帯・チャゲアス・B'z・ラッツ&スター・マライア・キャリー、名も知らない洋楽の男女デュエット曲等々、邦楽・洋楽問わず幅広いジャンルの名曲が流れていた。 僕も多大な影響を受け、CDを借りまくり、果ては同じコンポを買うことになるのであった。
下のいとこは渋めで、僕は最初はピンと来てなかった、ASKAソロのNEVER ENDが好きって言ってたっけな。 この感性もすごい。

数年後には僕のほうが、いっぱしのチャゲアスフリークになっていた。

そんな経緯もあり、SUPER BESTIIとSCENEIIのカセットは相当な回数聴き込んでいた。のだが、SCENEIIの、なんというか静謐な雰囲気は、他のミュージシャンにはないものだった。 ただ、この2本がベースであり求めるクオリティが高いレベルにあったためか、その頃はそんなに、「はじまりはいつも雨」も「SAY YES」も特別な曲としては聴いていなかったと思う。

だが今改めて詳細に聴いてみると、非常にテクニカルな曲だと聞こえる。
サビすら、メロディがうねうねして、ねっとり度合いが強いじゃない?
幾つか列記してみよう。

1.「愛じゃ足りない気がしてた」の字余り感のあと、「雨が包んだ」と大きく展開するところ。
この展開部分は砂時計のくびれた場所の、「抱きしめたら~全ての羽根をあずけた」の部分と近いかな?

2.サビの「空を見てた」で大きく展開し、タイトルの歌詞につながるところ。古いポップスだったら、一旦タメてたかもしれないぐらいの様式美がある。

(追記)
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「誘うから 空を見てた」 この展開の素晴らしさといったら他に類がない。
Aメロからの伏線があってこそ、「誘うから」と「空を見てた」が繋がる。
それを分かっていても急な言葉の意味が飛躍するからこそ、
「空を見てた」と情景がブワッと広がり、美しさが際立つのだろう。
ここで譜割りがゆっくりになるのも。
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3.そうとは気づかせず、効果的な繰り返しが多い。
 「君を愛するたびに」「君を連れ出すたびに」
 「呼べば素敵な」「とても素敵な」
 「愛してるかい」「愛せてるかい」
 「誰よりも」「誰よりも」
 「星をよけて」「二人 星をよけて」
と実は多数あるのだが、重ねるごとにしつこいと感じさせず、むしろより深い情感が生まれてるのは何故だろう。

4.どこがサビになっても良いぐらいの素敵過ぎるメロディ。
CMに使う時にサビじゃない場所を使われたので、2段にサプライズがあったのは有名な話。

歌詞の内容は、「SAY YES」に近いのではないかと思う。
不倫の曲だと決めつけた感想を検索で見たが、敢えて僕はそうでない説を唱えたい。

そもそもASKAさんの曲の中には、恋をしている中での不安、不揃いな二人の恋、というモチーフをよく見かける。
恋をしていれば相手の気持ちの温度も分からず不安になる。
それが自然ではないだろうか。 不安すらも恋しているからだ。

しかし、そんな不安も見せている歌詞なのに、とても深いラブソングになっているのは何故だろう。
きっと、雨という、気分が憂鬱になりそうな恋に対する障害ですらも、「水のトンネル」「雨が包んだ」というように二人を祝福してくれていると感じているからではないだろうか。 それが恋の強さだと思う。

最近カラオケで歌ったのだが、最後の「星をよけて 二人 星をよけて」で何故か感情が吹き出てしまった。「水」のモチーフと相まって、「光」のキラメキまでも感じる。 なんと素晴らしい余韻か。
これほどまでに、「雨」を主題として強いラブソングを描いた曲は、それほどなかったのかも、とまで思う。

追記
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ラストに繰り返される「星をよけて」について

2番サビの「わけもなく君が 消えそうな気持ちになる 失くした恋達の 跡をつけて」の部分から繋がっており、「ふたり 星をよけて」に繋がるのではないかと思った。
雨が降っていなければ、流れる星を追いかけて、君が消えてしまうかもしれない。 そんなことを思うほど、自分の愛についてどこかしら不安を感じているのではないか。

それにしても、雨の中の二人に、「星をよけて」とはなんと素晴らしい歌詞だろうか。
僕らも、周りの情景に自分の気持ちを乗せることはよくあるが、
その不安な気持ち=どこかしら完璧でない愛の形に、雨が降るぐらいの情景がちょうど合っているんだろう。

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そして、30年も経った今でも、変わらぬ感動を与えてくれるこの曲に感謝したい。

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