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中黄色のカバーに作家自身の装画「くもをさがす」

「くもをさがす」著者 西加奈子
2023/04/30 初版
2023/05/11 7刷発行
河出書房新社

直木賞作家
イラン(テヘラン)生まれ、エジプト(カイロ)、大阪で育つ。

以上の情報しか知らなかったニシカナコ氏。


 彼女が呼ぶところの日本から送られてきた「ヨーコ・コレクション」30冊の文面が、途中にそれぞれ散りばめられている。

心情が読み取れるのと、作家にして、他国に住み日本語をむさぼるように読まれたに違いないと想像します。適当な日本語がすぐに出ない事もある。納得するスタイルだと思う。

四月にNHK、テレビ朝日系、TBS系の番組の中で紹介されたらしい。


 内容は重いけれど、最近の若い作家の出版社に作られた(であろう)衒い(てらい)のある本に辟易していた中に装いのない、力量のある、身の丈の作家の感情に好感が持てた。

しかもノンフィクション…

 子育てもバイリンガルが普通になろうとしているところ、英語圏での関西弁の表示もなかなかユニーク。

 日本とカナダの比較も他国に生まれ、住んでいたせいか大変冷静に眺めている。参考になった。

 他国で子供を幼稚園に通わせた経験がある。どちらか片方の国だけの見方をして不満が生じるか、羨ましさが優先してしまう…

実のところ私は不勉強で、家族とは日本語で会話していましたが英語圏でもなく、霞の中にいるようでした。

 2019/12月から(まだ終息したわけではないのですが)世界中が疫病に翻弄されました。

読む過程で、その国によって人の感じ方や国の規制が違っていることもよくわかります。

子の子の…時代には国境が、なくなって欲しいと願っています。


 病気(癌)と自分の感情を切り離して他者との会話を楽しむ(余裕?)もある。

しかしながら、内容は自分の選択である事を繰り返している。病気は個人的な事で決めるのは自分しかいない。何処の国に住んでいても孤独です。

彼女の場合、数多くの家族、友達、知人、勿論医療関係者等に助けられている。これの関係が不思議なほどフラットな性格(平等な…)

子を通して、趣味を通して…この生来の性格が、他国で施術を受けられた大きな要因になると思う。

自分の事に引き受けるのは辛い内容ですが、読む者にもジワジワと勇気を貰う。久しぶりに爽やかな読後感があった。

書く事が唯一彼女の表現としても「中黄色」の中に真実、心情を吐露された勇気に感動がありました。

3月10日 前略 …砂糖をたっぷり入れて、自分を祝福した。キャンサーフリー、という言葉を、何度も噛み締めた。私はキャンサーフリーだ!私は生きている!

 人生、ターニングポイントに立つ作家に幸あれ!

*ちょっと気になる「キャンサーフリー」    (細胞検査士会)

癌のことを英語でCancerと言います。Cancerの意味は癌のほかに、大 きなカニ、かに座という意味があります。

ドイツ語では癌のことをKrebsといいます。これもやはりカニという意味があります。

どうして、まったく異なる 「癌とカニ」が同じ言葉で表されているのでしょうか?

 最初に癌をカニにたとえたのは、古代ギリシアの医師、ヒポクラテス( bc460頃〜bc375頃 )だと言われています。この人は、病人についての観察や経験を重んじ、当時の医術を集大成したことで「医学の祖」、「医学の父」とよばれています。医師の 倫理を述べた彼の有名な誓文「ヒポクラテスの誓」は、現在でも通じる医師のモラルの最高の指針とされています。

乳癌は体の表面から判る病気のためか、紀元前の古代ギリシアでは、すでに乳癌の外科的治療が行われていたそうです。癌の部分を切り取ったあと、 そこをたいまつで焼くという、荒っぽいやり方をしていたようです。

当時の科学の最先端を走っていたヒポクラテスは、そうやって取った癌の塊を切り刻み、そのスケッチを残していて、そこに「カニのような(カルキノス)」と いう記述をしているのだそうです。



#くもをさがす

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