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「万全の準備」は、可能なのか?

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。

目標を掲げて、その目標に向かって行動するときに「準備」が必要なのは、誰もが疑わないところでしょう。「準備が9割」なんて言葉も耳にしたことがあるかもしれません。特に、他者がいる場合には、迷惑をかけないために、スムーズに事を進めるために、準備は不可欠です。準備不足による失敗だって、多くあるものです。

では、「万全の準備」というものは、可能なのでしょうか?

念のために確認しておくと、「万全」とは、「全く完全で、少しも手落ちがないこと」を意味します。

世界経済フォーラム(ダボス会議)U33日本代表で、今までに1万人以上の起業家支援を行なってきた伊藤健太さんは、

「万全の準備」という言葉にとらわれて、結局、なかなか行動に移せない人が意外と多く存在する

と言います。一般のビジネスパーソンに比べて、比較的「やる気」や「モチベーション」が高いと思われる起業家やその予備軍でさえも……。

今回は、伊藤さんの著書『行動の品質』の中から、行動になかなか移せない原因は何なのか? それを引き起こすメカニズムとともに、その壁を乗り越える方法を公開します。

成果が出ない人ほど、「失敗できない」と考え、余計なことをする

「まずやってみる」ことに対して腰が重い人がとても多くいます。

この原因の一番が「失敗への恐れ」です。「失敗したらどうしよう」と思ってしまうのです。それが転じて、1回目の「まずやってみる」の段階で、「どうしたらうまくできるか」「失敗しないでできるか」と考えてしまうわけです。

そもそも、初めてやることや難しいことに対して、1回目からうまくできるなんてことはあり得ません。でも、そのように考えてしまうのです。

このように「失敗を恐れ、1回でうまくいかないといけない」という考えになってしまうと、「まずやってみる」の着手がどんどん遅くなります。最悪のケースとしては、やることをしなくなります。つまり、何もしないのです。

着手が遅れるのは、机上の上で、よく言えば、シミュレーションや準備、学ぶことが主な原因です。結局、準備ばかりに時間かけて、自分の成長につながる失敗もしないのです。

シミュレーションや学ぶことは大切ですが、「まずやること」の優先順位を下げてはいけません。

同時並行的に進めるべきものです。

まずやってみる。そして、PDCAを回す中で、自分に足りないもの、失敗の原因を見いだして、必要なことを学び、準備を進めるのです。そして、また改善した方法で「まずやってみる」。これを繰り返していく。同時並行的に進めるとは、こういうことです。

ところが、起業の世界でも10人中7、8人は、「どうやったら失敗しないできれいに起業ができるか」を考えます。

実際にそう思っているわけではないのですが(失敗は絶対にするものだから、そんなすぐにうまくきれいにできるわけはないとはわかってはいるものの)、どうしても失敗への恐れが先に来てしまい、臆病になってしまいます。結果として、事実上「どうやったら失敗しないで、きれいに起業ができるか」が前提条件になってしまいます。

そのために、事前に多くの準備をしたがります。この準備が的を射ていないことが多々あるので、事態を悪化させます。つまり、やらなくていい準備までし始めて、余計なこと、無駄なことに手をつけだすのです。まさに、無駄に時間を費やし、「行動の品質」がどんどん落ちていきます。

失敗を恐れて動けない人への忠告

ここで、「最初から失敗なしでできると思っている人」「失敗を恐れて、なかなか動けない人」に向けて質問させてください。

「あなたは、一発で成功できるほど、そんなに天才なんですか?」

質問をちょっと変えます。

「今、あなたが持っている能力で準備したところで、そもそも万全な準備なんてできるのですか?」

もし本気でそう思っているなら、申し訳ないですが、本当にバカです。というか、世間知らずもいいところです。

世の中に存在する、世界的な成功者や起業家たちが、一度も失敗もせずに今の地位にいると思いますか? 今の地位にいても、多くの成功者たちは小さな失敗を繰り返しているでしょう。失敗を繰り返すのは、「まずやってみる」からです。

もしあなたと彼らが違うとすれば、彼らはそれを失敗と思っていないだけです。いわば、それは「失敗」ではなく「実験」を繰り返していると解釈しているはずです。すべては「自分の成長」のために――。

万全の準備なんてできるのは、よっぽどの天才、もしくは、よっぽどの運がいい人だけ。僕たちのような普通の人間が、文字どおり、絶対失敗しないような「万全の準備」なんてできるわけがない。

だから、

「まずやってみる」→「PDCAを回す」→「足りないものを学ぶ、準備する」→「(改善した方法で)まずやってみる」

を繰り返しやりながら、同時並行的に、足りないものを学び、準備するのです。

ちょっと乱暴な言い方をして、不快な思いをされた方もいるかもしれませんが、どうかご容赦ください。これも、本気で「まずやってみる」ことの重要性をお伝えしたかったからです。それが結果的に、「行動の品質」を上げることにつながるからです。

「想定外」のことが起こる時代だから……

2020年に世界中を襲った新型コロナによる世界的な経済停滞を、1年前に誰が予想していたでしょうか? 僕たちが生きる世界において、「想定外」のことは起こると心得ておく必要があります。

ということは、万全の準備、「万全」なんて不可能だということです。

万全の準備をしようと思うと、また失敗しないようにと思うと、実質的には想定しえないことや、今この瞬間に気にすべきことではないことを気にするようになってしまいます。集中すべきことに集中せず、余計なことをやり始めるのです。

たとえば、起業当初の一番の決定的な課題は、「売上が出ない」ことです。最初は個人事業主でスタートする人がいたとします。まず何よりも考えるべきは、「どうやったら安定して売上が上がるか」です。この課題がとにかく重く、難しいものなので、この課題にのみ集中すべきです。

しかし、売上に対しての課題が解決していないタイミングで、なんとなく人を採用してマネジメントができるのかを不安視したり、税金のことを気にしたりします。

これらは、実際に最初の大きな壁である「売上が出る」ことがクリアできた後に生じる問題なのですが(実際に売上がなければ、これらの問題は生じません)、売上が出てもいないタイミングで、そこが気になってしまい、「マネジメントの勉強もしておいたほうがいいな」「税金の勉強もしておいたほうがいいな」という感じで、どんどん短期の一番優先順位の高い問題を解決するための時間がなくなっていきます。

このような人は結構な割合で多くいます。どんどん各論の細部に意識が向いてしまい、今このタイミングで考える必要がないことに目を向けてしまうのです。

繰り返しますが、完璧なんてことはありません。万全な準備なんてありません。最初から失敗なしでうまくいくなんてことはありません。

「完璧になったらやろう」は、「永遠にやらない」と同義です。完璧になったらやろうという発想では、成果はいつまで経っても出せません。

伊藤さんは、著書『行動の品質』の中で、「行動の品質を高める3つのポイント」として次の3つを挙げています。

①最速最短最少で最大最高最適な成果を出すことを最優先で考える
②1つの行動がそれだけで終わらず、良い波紋を広げることを考える
③自分だけでなく、まわりを巻き込もうと考える

それぞれ「具体的にどのようなことなのか」の詳しい解説をはじめ、成果につながる行動の思考法と実践法をわかりやすく解説しています。興味のある方はチェックしてみてください。

▼新刊『行動の品質』の「はじめに」「おわりに」「目次」を全文公開しています。

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