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「これ、面白かったから一冊送って」と校正者に言われた発売予定の新刊

書籍の編集段階で校正者さんに校正をお願いしているのは、ほとんどの人が知るところです(かつていた出版社では校正者に発注するお金がなかったので、お願いできる今は、本当にありがたい存在だとつくづく思います)。
しかし、本が完成して(見本が出て)、発売までの間に、校正者にもう一度読んでいただいていることをご存じの人は少ないかもしれません(編集過程のゲラを読んだ校正者さんとは別の校正者さんに読んでいただきます)。
いろいろ呼び名はあるかもしれませんが、弊社ではそれを「原本校正」と呼んでいます。
なぜこんなことをするかというと、本来はあってはならないことですが、残念ながら完成した本にも誤植が見つかることがよくあるからです。それを初刷の見本の段階でピックアップすることで、増刷時に素早く修正ができるようになるわけです。

さて、いつも原本校正をお願いしている校正者さんに11月20日発売予定の新刊のチェックをお願いしたところ、うれしい一言が。
「これ、面白かったからあとで一冊送ってよ」
普段は、原本校正をしてくださる校正者さんには献本していないので、要望されるのは異例のことです。
校正者の立場というよりも、一読者としての感想なので、私としては感激です。しかも、数々の本を読んできた校正者の言葉なのでうれしさもひとしお。
そんな評価をいただいた新刊がコチラです。

著者は「ホンマでっか!?TV」などメディアでもお馴染みの生物学者・池田清彦先生。
人間は「私は何のために生きているのだろう」「私は何かに役に立つのだろうか」など、自分の生きる意味や役割について考えてしまうものですが、それを池田先生は「意味を求める病」と定義します。
そのうえで、「そもそも人生に意味なんかねえよ」「自分の好きなことをして楽しく生きればいい」とという主張のもと、生物学や科学哲学のなどの観点から私たちを雁字搦めにする「意味」の呪縛を解きほぐします。
読み応え抜群の本書の目次と著者のプロフィール以下に掲載します。
ぜひ、興味を持った方は手にとってみてくださいね。

目次

私が「人生に意味はない」と考えたわけ――まえがきに代えて

第1章 人生に意味はなくても楽しく生きられる
動物にはなくて、人間にはある意味を求める病
親が子へぶつける呪いの言葉
養老孟司さんちのネコの教え
死にたくなる気持ちもわかるが、まずはトンズラ
自我をなくした男は、なぜ自殺しなかったのか?
身体は変わるのに、自我が不変なのはなぜ?
自我は脳のどこにあるのか?――前頭連合野のダイナミックシステム
異なるものを「同じだ」と認識する自我
「本当の自分」ではなく「自分が適応できる場所」を探せ
年代別自殺者数から考える「意味を求める病」との闘い

第2章 資本主義思考と意味の呪縛
「役に立つ=いいこと」は資本主義が生んだ幻想
利他主義の行き着く先は全体主義
健康診断やSDGsの大嘘
環境に適応できないなら逃げればいい
労働者の主体性を尊重する企業、雁字搦めにする企業
「反抗」も「あきらめ」も生存戦略のうち
狩猟採集民と農耕民の労働観の違い
人間が意味を求めるようになったターニングポイント
ネアンデルタール人の人間味と資本主義の冷酷さ
自給自足の生活は資本主義の敵
人間のいじめと動物のいじめはどこが同じで、どこが違う?
生存のための労働から、労働のための生存への逆転
役立たずと言われても気にするな
AIの進化は資本主義をどのように変えるのか?
ベーシック・インカムが価値観の大転換を呼ぶ

第3章 本当はたくさんある意味不明な生物の形質
生物界は意味のないものも多い――人間の耳毛・髪の毛・禿げ・陰毛……
人間から体毛がなくなった理由とは?
「手が器用になったから脳が発達した」論の信憑性は?
意味づけしなければ気のすまない病――ハンディキャップ理論
ダーウィンの進化論の「本当らしさ」と疑問
ダーウィン流進化論への疑問――クジラの能動的適応
自然界に存在する意味の代表「擬態」
実は検証はされていない隠蔽色の有用性
適応論のあやしげなところ
なぜか生き延びているナマケモノの奇妙な生態
ご都合主義!? 適応論のパラダイム
機能が先か、構造が先か?――生物の毒と警戒色
知れば知るほど不可思議な擬態――ベイツ式擬態
疑わしき擬態の有用性――ミューラー式擬態、メルテンス式擬態、数量擬態、化学擬態

第4章 「無意味」への恐怖を克服しよう

人間は意味のわからないものを恐れる
意味がわからないものに無理やり意味づけをする人間
結局、生得的な恐怖もある? ない?
一神教と科学に見る袋小路に入り込む思考パターン
構造主義科学論の見地
視点を変えれば人間の評価も変わる

あとがき――意味などないけど楽しく生きよう

著者プロフィール

池田清彦(いけだきよひこ)
1947年、東京都生まれ。生物学者、評論家、理学博士。
東京教育大学理学部生物学科卒業、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学。山梨大学教育人間科学部教授、早稲田大学国際教養学部教授を経て、山梨大学名誉教授、早稲田大学名誉教授、TAKAO599 MUSEUM名誉館長。
『構造主義科学論の冒険』(講談社学術文庫)、『環境問題のウソ』(ちくまプリマー新書)、『「現代優生学」の脅威』(インターナショナル新書)、『本当のことを言ってはいけない』(角川新書)、『孤独という病』(宝島社新書)、『自己家畜化する日本人』(祥伝社新書)など著書多数。メルマガ「池田清彦のやせ我慢日記」、VoicyとYouTubeで「池田清彦の森羅万象」を配信中。

(編集部 イシ ク” ロ)


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