真琴

特別支援教育専攻の大学生から、発達心理学専攻の大学院生になりました。欲しいものは博士号…

真琴

特別支援教育専攻の大学生から、発達心理学専攻の大学院生になりました。欲しいものは博士号。話せば2分で済むことを、5日間かけて書くタイプ。

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心理系大学院に受かるまで

 昨年9月末、心理系大学院に合格した。  受験勉強真っ只中の当時、無料で公開されたnoteやブログの情報に救われて何とかやっていたから、恩送りとして僕も書き留めておく。  次々に就職を決める同期に埋もれ、進路を案じて心が死にそうな中、それでも勉強しなければいけないそこのあなたに捧げたい。 僕の基本情報 僕はX大学の教育学部生で、特別支援教育を専攻している。元から心理学には関心があったけれど、自分の専攻の授業として勉強したことはない。  進学先は、A大学心理学専攻・いわ

    • 「結局これで良かった」と言いたい

       知らないうちに、左耳が難聴になっていた。  知らないうちにとは言っても、予兆はあった。シャワーを浴びた後、耳の奥からハウリング音が流れることが1週間で2回あったのだ。せいぜい5秒くらいの耳鳴りだけれど、あの音量はもう、確実に僕の耳の中で全校集会が開かれていた。しかもちょうどその夜は、かの木曜ドラマ「silent」で、後に両耳を失聴する主人公・想の「耳鳴りみたいなのがずっとしてて、すごいうるさい」というシーンがバズった日。言語化してみて今更ながら思う。すぐ病院行けや!!!

      • 「理解できない」から創る未来

         「理解できない」と、他者から突きつけられるのが怖い。翻って、僕から他者に「理解できない」と銃口を向けてしまうのも怖い。  トランスジェンダーである僕にとって、相手の理解を得られるかどうかは死活問題だ。それが肥大化して「自分が理解されたいなら、相手への理解も示さなければならない」という道徳心のようなプレッシャーのような、そういう気持ちが根底にずっとある。  でもこの日、僕は見ず知らずの中学生が発した「理解できない」の一言で救われた。凶器同然だと思っていた言葉に救われること

        • 己が己の椎名林檎たれ

           え、私、なんか心理学に全然向いてなさそうなんですけど。  教育学から心理学に異世界転生したM1としては、前期を終えた現時点でそんな気持ち。さあ唱えよう、己が己の椎名林檎たれ。 ◆  僕が訊きたいこととみんなが訊きたいこと、反対を超えて別次元の域だな。  講義を通してそう察したのが「心理学に向いてなさそう」と感じ始めたきっかけだ。  僕はやたらと自己効力感の低い人間で、ひとつでも自信を持ってやれないことがあると「およよ? 適性ゼロじゃね?」と思ってしまう節がある。だ

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        心理系大学院に受かるまで

          【企画参加】願いと自戒の宣誓を

          「男でも女でもないとか、だけど体の手術はするとか、そんな人本当にいるの? 研究する意味ある?」  俺がその「そんな人」だが??????  40人超えの聴衆の前に立つ僕へ、隣のゼミの先生がきょとんとした顔で問うた。卒論の中間発表会でのこの問いが、これまでで唯一明確に研究と僕を否定した一言だった。  冷静に冷静に冷静に。建設的であれよ、こんな場所で反抗するな、世間なんてこんなもんだ。  ものすごい勢いで自分に言い聞かせる。返答のためにマイクに手を伸ばしたら、それより先にス

          【企画参加】願いと自戒の宣誓を

          生きづらさの酔いから醒める

           親友がうつ病になった。  僕はとても心配している。  生きづらさの根源は自分じゃどうしようもないずっと遠くにあると気づいた彼女が、それと穏やかに折り合いをつけて生きることではなくて、積極的に悲劇のヒロインとして生きることを選んでしまわないか、とても心配している。  僕の周囲にはなぜか、そうやって自分の首を絞めたがる人が多い気がして。 ◆  僕はわりと、お酒に耐性のある先輩たちに育てられたと思う。強くて酔わないのではなく、弱いのに延々と飲むタイプの先輩たち。そして僕

          生きづらさの酔いから醒める

          傘をさしあう ―「サシ飲みと贖罪」後日談―

           突然の電話で、第一声、恩師が言った。 「来年度から、うちの制服が男女兼用に変わることになったよ」 「ぐょゑ!?」  今世紀最高の報告を、今世紀最高に解読不可能な返事で迎え撃ってしまった。ごめん先生。 ◆  うちの中学校の制服を変えようとしてるんだ、という話を聞いたのは、今年の3月末のことだ。1年半ぶりに再会した先生は、僕が全く知らないうちに10年前の僕への「贖罪」を果たすべく制服変更に奔走していて、その日も大変そうな充実していそうな、そんな顔でノンアルコールビール

          傘をさしあう ―「サシ飲みと贖罪」後日談―

          カミングアウトと夢見た世界

          「この研究テーマへの関心って、どこから来たものなんですか? 発表聞きながら、僕それがずっと気になってて」  同期のケンタが投げてきた質問に、0.1秒未満でこう思った。  詰んだ~~~~~~~!! ◆  今日、大学院に来て初めて僕が発表者になるゼミがあった。本来なら研究の進捗を報告して、先生やゼミ生から意見をもらう場だ。でも、外部からノコノコやって来た僕は「そもそもどんな卒論書いてたの?」という地点からスタートするので、早いうちにその話をするよう指示を受けていた。  

          カミングアウトと夢見た世界

          「何言ってんの?」の快楽

           大学院に入学して、半月が過ぎた。この生活ぶりを端的に表すなら「毎日が異文化交流会」といったところ、マジで。  まず、僕が在籍する研究者養成課程、通称「基礎コース」には、日本人の修士1年生が圧倒的に少ない。片手にも満たない。それ以外の10人少々は中国からの留学生だ。彼らも日本人院生には日本語で話してくれるのだけれど、留学生同士での雑談が始まると中国語しか聞こえてこない。あれはもはやテレポーテーション。  それから、うちの研究室の暗黙の了解がエグい。研究室ごとに集まり個々に

          「何言ってんの?」の快楽

          サシ飲みと贖罪

          「これは、教師人生をかけた贖罪なんだ。10年前の俺が、真琴を殺したかもしれないから」  先生が僕の目を見て言った。ちょっと待て、まだ1杯目の、しかもノンアルビールでそんなパワーワードを出すんじゃない。 ◆  進学で引越す前にサシ飲みがしたい、と誘ったのは僕だった。相手は、中学校時代の担任。もうかれこれ10年の付き合いになる。13歳の僕にバカデカい好影響を及ぼし、僕の哲学の基盤を形成してくれた先生だ。  高校2年の冬に、彼にもカミングアウトした。自分を女性だと思えないこ

          サシ飲みと贖罪

          「お前クズだな」って思うからな。

           教育学部への進学が決まった数週間後、教師になるのは無理だと悟った。  それまで大事に温めてきた「教師になりたい」という思いは純度100%で、一滴の嘘も混じっていなかった。地元の教員採用試験を受けて、22歳で教壇に立ったら、支援を必要とする子どもたちに生涯を捧げるはずだと信じていた。  それでも、もう僕には無理だと思った。  そんな風に思い始めたのは、合格発表を終えた3月半ばのことだ。僕はその時期、学生支援センターの先生と面談を重ねていた。訪ねる部屋は「障がい学生支援室

          「お前クズだな」って思うからな。

          案外嫌いな自分でもない

           4年前、大学の合格発表の日、こんなツイートをした。 《ゴーカクハッピョータウン》 ▼あっ! 真琴の 受験番号が あらわれた! ▼真琴は どうする?  ▶大学生に なる   受験生を つづける   就職先を さがす ▼やったー!人生とむきあう1461日を つかまえた!  軽い気持ちでツイートした気もするし、えも言われぬ覚悟をもってツイートした気もする。どちらにせよ、大学生活は僕にとって本当に「人生とむきあう1461日」だった。親友と出会い、専門知識を蓄え、思想をこねくり回

          案外嫌いな自分でもない

          貴族の修論、学部4年の公爵

           人間、20年少々も生きれば、さして欲しくなかった能力の一つや二つは出てくると思う。「探し物の発見力に長けすぎて、結局永遠に部屋が汚い」みたいな、そういうの。  僕にもある。異常なほどに校閲が得意。  これは高校3年間に及ぶ訓練で身についた。「山ほど文章を書く部」で、毎月毎月部員10人で苛烈な校閲バトルをした賜物だ。当時の同級生も同じ能力を備えていて、同じく嫌がっている(僕の見立てでは、僕も同級生もその校閲能力に一定のアイデンティティを感じているけれど)。  世に校閲の

          貴族の修論、学部4年の公爵

          30日越しの答え合わせ

           この大量の写真、無駄にならん?  特別支援学校での教育実習初日、何よりも強烈な感想がそれだった。口には出さなかったけれど。  僕が配属されたのは、知的障害児が通う特別支援学校だった。中学部のとあるクラスで、絵の具と紙粘土を用いた美術の授業をした。  明日からさっそく初回の授業、という緊張の走る初日の放課後、美術担当の先生に呼び出されてこう言われた。 「じゃあ真琴先生、今から退勤までの3時間がいちばん大変だと思ってください」  そんな微笑みをたたえて何をおっしゃる。

          30日越しの答え合わせ

          ただ肯定したいだけなのだけれど

           「自分がそう認識している」ということと、「他人にそう認識されている」ということは、必ずしも一致しない。  当然のことをしているだけだと思っていたのに「優しいね」と言われるとか。あまり自信のない絵だったのにすごく褒められたとか。あと、男子なのに女子枠へ放り込まれるとか。  22年間本当に一度も言わずにいた、とっておきの「一生のお願い」をここで使いたい。いっちゃん最後のやつだけ、どうにかならんか。 ◆  冒頭の1行目は、実際にゼミの指導教員に言われたことだ。  「配慮

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          世界一嫌いな食べ物に心を救われた件

           僕は、他人と食事ができない。お酒を飲み始めたのがきっかけでうっすら克服したけれど、それでも家族以外の誰かと「楽しくおいしく食べる」の域に達するまでには、まあまあな数の段階を踏む必要がある。誰かとの食事では「残してしまったらどうしよう」で頭がいっぱいになって、喉が塞がって、水しか飲み込めない。  原因は明白。小学校の完食指導だ。  完食指導とは、いわゆる「給食は残さず食べなさい」という指導のことだ。小さい頃から偏食で少食で、さらに食べるスピードがぶっちぎりで遅い僕には、こ

          世界一嫌いな食べ物に心を救われた件