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金本位制≒高齢者本位制

(ちなみにサムネは兌換紙幣である。具体的には明治時代の十円札だ。)
(例の如く有料記事ではありますが、最後まで読めます。もしよろしければお投げください。)

20世紀辺りの国際社会において、社会の発展と、貧困の撲滅を最も邪魔していたものとして、「金本位制」が挙げられるだろう。(少なくとも私はそう思う。)
「金本位制」とは、政府の発行できる通貨量が金の保有量に制限されるという制度であるが、それによって、例えば世界恐慌の時にブロック政策が行われ、「不況の輸出」(すなわち通貨の切り下げによる輸出促進政策)が行われた。(なぜか、それは各国の政府が、政府が保有する金の量によって制限された支出しか行えず、需要刺激を財政政策という形では十分に行えなかったためである。)その「不況の輸出」により「持たざる国たち」は「持つこと」を求めるようになり、国境拡大政策の必要性に駆られ、結局それは世界中を巻き込む大戦争を起こさせた。もしその時世界が管理通貨制度を導入していたなら、通貨の切り下げはほぼ行われず(少なくともブロック政策レベルでは行われなかっただろう。)公共事業などによって、内需刺激策が粛々と行われていたはずだ。また「リーマンショック」の時、世界は凄まじい影響を受けた。需要は萎み、金融システムも大打撃を受けた。しかし、各国の協力、公共事業などの内需刺激策によって、世界はブロック政策を必要とせずに「リーマンショック」を終わらせることが出来た。そしてこれを読んでいる方も当然ご存じのように、「リーマンショック」は戦争なくして終わった。もちろん世界恐慌と「リーマンショック」では規模が全然違うが、少なくとも「リーマンショック」程度のショックなら管理通貨制度によって戦争を必要とせずに乗りきれる訳である。
前述の理由から、仮にあの時管理通貨制度が世界的に導入されていたなら、少なくとも「リーマンショック」分くらいのショック、及び景気下降を抑えられるはずである。つまり正史よりは間違いなく傷は浅かったはずだということが言える。つまり、20世紀において人類に損害を与えたものは、「金本位制」であるということも確かだろう。

では、21世紀において我々人類が損害を加えられているものとはなにか、それは「高齢者福祉」なのではないか。(まあそもそも高齢者率がさほど高くない国もあるので、正確に言えば「先進国が損害を加えられているもの」程度ではあろうと思うが。)

これは私がだいぶ前に書いたnoteであるが、要は『福祉産業は反景気循環的産業で、だから福祉産業に人を集めるためにはデフレ誘導が必要になってしまう』という内容である。これを言い換えれば、『政府の発行できる通貨量が、維持できる福祉産業の就業者数に制限されてしまう』ということになる。(政府が福祉産業を維持させる必要に駆られている限りにおいては。)

前述のように、「金本位制」の問題点とは、とどのつまり政府の発行できる通貨量が保有する金の量に制限されていたところである。
「高齢者福祉」の問題点も「金本位制」のそれとだいぶ似ている。『政府の発行できる通貨量が、維持することのできる福祉産業の就業者数に制限されてしまう』からだ。であるならば、もはや現代の先進国は「金本位制」ならぬ、「高齢者本位制」を導入してしまっているのではないか。

「高齢者本位制」による被害として、例えば拡大していく高齢者福祉の財政的負担など、先進国共通のものもあるし、日本特有のものもある。日本特有のもので言うと、やはり『失われた30年』と拡大していく高齢者福祉の実質的負担であろう。前述のとおり、福祉産業を維持していくためにはデフレ誘導が必要であり、それが実際に行われてきたのがバブル以降の『失われた30年』の原因である。デフレ誘導の結果企業は投資をやめ、家計も消費を抑え、文字通り30年もの歳月が『失われて』しまったのである。

引用元→ https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf27/documents/shiryou10_1.pdf
P.19

また拡大していく高齢者福祉の実質的負担とは、つまり福祉産業に人的リソースを吸われてしまうことである。福祉産業は、他の産業が人手不足になっている中でぐんぐん就業者数を伸ばし、少子高齢化によってさらに貴重になっていく人的リソースをどんどん吸い込んでいる。前述のように他の産業が人手不足になっている中でである。これは間違いなく社会に異常をもたらす。

例えば、既に今現在において、『インフラ人材』は不足し、直したくても直せない橋や道路などが多発している。今後もこのような事例はいくらでも出てくるだろう。これも高齢者福祉の、そして「高齢者本位制」による被害である。

あの時の国際社会においては、「金本位制」から脱出し、しっかりと政府の財政における裁量を取り戻した国ほど恐慌から立ち直るのは早かった。例えば日本である。「高齢者本位制」においてもそれは同じであろう。「高齢者本位制」からどれだけ早く抜け出せるかが復活のカギである。
ヨーロッパの国々のほとんどは、『看取り』を進めていくなど、「高齢者本位制」から抜け出すための策を早くから取っている。しかし日本はコロナ禍しかり、社会保険料関連の議論しかり、そうした策をしっかり取れているとは、お世辞にも言えないだろう。「高齢者本位制」については、日本が先陣を切ることができていない。
いまや「金本位制」を取っている国はほぼない。ヨーロッパの例を見れば分かるように、「高齢者本位制」も、いずれ時代の遺物となり、この世から消え失せる運命にあるのだ。往生際悪くそれを生きながらえさせようとしても無駄であるし、だれも幸福にすることはできない。

いわば、『健全に諦める』必要がある。

我々は、日本を長らく停滞の闇に陥らせてきた諸悪の根源たる「高齢者本位制」から、一刻も早く脱却せねばならない。高齢者を一秒でも生きながらえさせるためにわざわざデフレ誘導をするような愚行には、終止符を打つべきなのだ。

ここまで読んでくれた方に「高齢者本位制」から抜け出さなければならないことが、またそもそも今の先進国(というかほぼ日本についてしか話してないですが。)がもはや「高齢者本位制」と呼ぶべき宿痾に侵されていることが理解していただけたなら幸いである。



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