ルーマン『リスクの社会学』第12章メモ

【第12章 セカンド・オーダーの観察】

1 これまでの分析の総括


全体社会そのものがセカンド・オーダーの観察をすでに実践している。「これは何を意味するのだろうか。またそれが近代社会の理論に対してもたらす帰結はいかなるものだろうか」(247)。
本書では「リスク概念をリスクと危険の区別を介して定義し、それによってこの概念を[決定への]帰属の問題に帰着させた」(248)。このようなリスク概念は、誰がその帰属について決定するのかという問題や、帰属についての決定そのものの帰属の可能性についての問いを生み、セカンド・オーダーの観察の水準への移行を促す[個々の論点については割愛]。


2 セカンド・オーダーの観察について

セカンド・オーダーの観察についての議論において顧慮される作動はきわめて多様である。本書では観察を形式的に「作動的な区別の使用」とし、セカンド・オーダーの観察は区別の区別ないしは観察者の観察を意味する。システムにおいてこれは、[観察の客体ではなく]「観察するという作動をみずから実行しているシステムを観察する」ということである(254)。そのようなシステムは「それ自体をその環境から区別し、それによって固有値を生産し、そのシステム固有の区別を用いて、何かあるものをそのシステム自体の中に、また何かあるものはその環境の中にあるものとして観察できているシステム」である(255)。


3 リスク・コミュニケーションとセカンド・オーダーの観察

セカンド・オーダーの観察が確立しそれが期待されうるようになったとき、どのようなコミュニケーションの問題が生じるのか。とりわけ重要なのはセカンド・オーダーの観察の水準では「いかなるヒエラルヒーの形成ももはや不可能であり」、そのために「システムのトップ層の観察の仕方について観察することでそのシステムについての判断を獲得する、といった可能性は消失する」ということである(257)。したがって、代わりに、ヘテラルキーに適合した複雑性の縮減の方法が必要となる。
「セカンド・オーダーの観察の実践によって不透明にされ精確な意味で観察不能になっている世界の中で透明性の筆致(Lineatur)を確保する必要がある」(260)。全体社会はそのための諸形式=「了解」を発展させてきた。ここでは「セカンド・オーダーの観察をファースト・オーダーの観察の水準に復帰させる」ことが問題となっており、このような手法は「他の観察者についての直接的な観察に対する代替案」を提供する(258-260)。
直接的な観察は「より多くの複雑性とより細部にわたる了解の可能性」を付加することが可能である一方で、「システム状態の一致という意味での合意にまで行き着くわけではない」(260)。それゆえ、直接的な観察とは明確に区別でき、独立に機能できる了解の方法を吟味すべきである。

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