ルーマン『リスクの社会学』10章メモ


1 組織という社会システムと決定


全体社会(システム)と比較したとき、組織を扱うことは「固有の形式のシステム形成をともなった、より小さなタイプの世界」を問題とすることであり、ここでは「別な形式で裁断されたノーマル性」が見いだされる(214)。
「公式的に組織化された社会システム」は機能システムと異なり 、「その再生産の様式を、メンバーと非メンバーとを区別することによってマークしている」(215)。

組織システムは、「その要素となる作動が決定であり、組織が決定によって接するすべてのものを、決定に変える」(216)。決定のネットワークにおいては非決定も後から決定と見なされることとなり、決定も非決定もリスクから逃れられず、このような状況においては「リスク管理」という課題が分出される。したがって、組織においてはリスク回避のためのさまざまな戦略 が取られるが、「組織にとって典型的なリスク対処の戦略は、組織とつきあうことのリスクとして、その環境へと転化される」(221)。



2 決定と時間


ある決定が損害をもたらしたと考えられる場合、その決定にかかわるさまざまな要素、契機を事後的に歪めた上でその決定は再構成される。組織(官僚制)にとっては、決定のためのプログラムの変更を避けたい一方で、結果次第で判断を行って過去にさかのぼって評価を修正すべきであるとの期待がかけられる。

このような状況において、組織は、学習(決定プログラムの変更)を避けるために「儀式的な生贄」を出すことがある(224)。しかしながら、世論の圧力や政治的な配慮のもとに強く置かれている組織では、このような学習が行われ、[環境からの刺激が]「長期的にいるとプログラム化された用心」へと転換される。つまり、組織は「みずからにとっては耐えられないリスクを、その環境のほうへと転嫁」し、その環境における被影響者にとっての危険へと変える(225)。


3 リーダーの役割


古典的なリーダー論においては目的/手段図式に重点が置かれた上で、リーダーの課題規定は非対称的でヒエラルヒーに合わせて推論されてきた。しかしながら、このような課題規定はヒエラルヒーへの依拠の基盤 が失われているなかでは疑わしくなっている。

このような状況において、リーダーの課題は「組織内部の観点から見れば、チャンスをリスクとつきあわせつつよく吟味し、[みずからが決定するのではなく]その吟味の結果を当該組織の諸機構において考慮されるべき決定前提へと変換すること」と考えられる(228)。

部下にとっての[部下に固有の]リスク認知はリーダーの人事についての決定権限に集中している。リーダーはこのことにより部下がリスク回避的に労働する諸条件を設定できるが、逆に従業員の選抜という固有のリスクとかかわりあう。

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