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半月板由来の膝関節痛に対する評価アプローチ

割引あり

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炎症の基礎

膝関節痛に限らず、リハビリ介入をする以前に炎症所見やその程度を評価することはリスク管理の面からとても大切です。

例えば、膝蓋下脂肪体に圧痛があり滑走性も低下しているからといって即座にマッサージなどの徒手的な操作にうつるのは危険です。炎症を伴う場合には、アプローチによって疼痛を増強させるリスクを考慮しておく必要があります。

炎症の5兆候としては、発赤熱感腫脹疼痛機能障害が一般に知られています。

実際の臨床では、問診や視診/触診によって以下の炎症所見を評価しましょう。

【炎症所見の評価】
・安静時痛や夜間痛の有無
・刺激に対する持続した疼痛の有無
・視診/触診による腫脹および熱感、発赤の有無と程度

また、以下のような疼痛の発生要因を鑑別しましょう。

【疼痛の発生要因】¹⁾
①化学的ストレスによる疼痛(炎症性)
②メカニカルストレスによる疼痛(拘縮性)
・炎症とメカニカルストレスの混合性

①炎症性疼痛
炎症性の疼痛は、いわゆる鈍痛と言われる「鈍い痛み」や「後に残る痛み」を自覚症状として訴える場合が多いです。また、疼痛範囲は特定の部位というよりは「膝の周り全体」といった広範囲で表されます。

炎症がある場合は運動療法の適応は低いとされており、患部保護が必要です。実際の臨床でも特に夜間痛のあるようなケースでは、疼痛組織が関与する関節運動をすると疼痛が増悪してしまう場合があります。

②拘縮性疼痛
拘縮性の疼痛は、制限因子となる組織の伸長性や滑走性、関節のモビリティ、静的・動的アライメントの改善などによって疼痛が減弱したり消失することが多くみられます。安静時痛や夜間痛はなく、動作時痛に限局するのが特徴です。

③混合性疼痛
炎症とメカニカルストレスによる疼痛が混在(混合性)している場合も少なくありません。この場合は、関節への適切な負荷刺激量の調整他関節へのアプローチが大切になります。

疼痛がどの要因によるのかを評価の中から判断し、適切なアプローチ方法や運動負荷量を設定することが大事です。

急性外傷発生後(急性炎症)の処置としては、アイシング(icing)、圧迫(compression)、挙上(elevation)、安静(rest)、患部保護(protection)の応急処置が広く知られています。

しかしこれらの処置に対するエビデンスは少なく、患部あるいは全身の運動制限に伴う不活動が、慢性疼痛二次的な運動機能障害(可動域低下や筋力低下)などのさまざまな問題に波及する²⁾³⁾と指摘されています(図1)。

図1 急性痛から波及する様々な問題
3)より画像引用

さらに昨今では、安静(不動、固定)は回復を阻害する一方、力学的負荷を段階的にかける治療が最も効果的である⁴⁾と一貫して報告されています。

組織損傷直後であっても医学的処置としての安静や固定が不要な場合は、痛みを誘発しないような強度・頻度で可能な限り運動を行い、不活動を回避する必要がある²⁾と言われています。

半月板の解剖学と役割

半月板およびその周囲組織の基礎的な解剖学について整理します(図2)。

図2 半月板周囲の解剖図イラスト

膝関節の半月板は、C字型の内側半月板O字型の外側半月板が存在します。

半月板の内側2/3は繊維軟骨で構成され、外側1/3は密性結合組織で構成されます⁵⁾。

半月板の両端は前角および後角と呼びます。さらに3区域に分けられて、前方から順に前節中節後節と呼ばれます。

膝関節の構造上、内側半月板よりも外側半月板の方が移動量が大きいことがわかっています(後述参照)。

また、半月板には以下のような役割があります。

【半月板の役割】⁶⁾⁷⁾
・関節適合性の良好化
・緩衝作用
・関節内圧の均等化
・滑液の分散
・潤滑作用
・固有感覚の提供

・可動性の適正化

膝関節のクッション材としてだけではなく、円滑な膝関節運動を行うためにも半月板は重要な役割を果たしているといえます。

半月板に付着する軟部組織

半月板と結合する軟部組織が何かしらのトラブルを抱えると、半月板の運動を制限することに繋がり、結果として膝関節痛を引き起こす要因となります。

そのため、半月板が何の組織と繋がっているのかを知っておくことは大切です。

半月板に付着する軟部組織には以下が挙げられます(図3)。

【内側半月板に付着する組織】
・半膜様筋
・大腿四頭筋
・内側側副靱帯
・内側半月大腿靱帯
・冠状靱帯
・膝横靱帯

【外側半月板に付着する組織】
・膝窩筋
・半膜様筋
・膝横靱帯
・外側半月大腿靱帯
・前半月大腿靱帯
・後半月大腿靱帯

図3 半月板に付着する軟部組織
8)より画像引用一部改変

前半月大腿靱帯および後半月大腿靱帯は外側半月板の後節と連結しています⁴⁾⁹⁾¹⁰⁾。

膝横靱帯によって内側半月板と外側半月板の前節は連結されています⁴⁾⁹⁾。

内側半月膝蓋靱帯および外側半月膝蓋靱帯はそれぞれ、内側半月板前節外側半月板前節と膝蓋骨を繋ぎます⁴⁾¹¹⁾。

冠状靱帯は、半月板の外縁と付着し固定する役割があります⁹⁾。半月板の外縁は、関節包に付着します⁶⁾。

内側側副靱帯の深層は、内側半月板の中節に付着します⁴⁾¹⁰⁾。一方で外側側副靱帯は外側半月板に付着しません。

膝窩筋の少なくとも1か所は外側半月板に付着します⁴⁾⁷⁾¹⁰⁾¹²⁾¹³⁾。

半膜様筋の一部は、後斜靱帯後方関節包を介して内側半月板(後角)に付着します⁴⁾⁶⁾⁸⁾¹¹⁾¹²⁾。また、43.2%の膝では外側半月板にも付着する¹²⁾ことが報告されています。

MEMO 膝関節周囲で疼痛を感じやすい組織
Scottの研究¹⁴⁾によって、膝関節の周囲で疼痛を感じやすい組織に関する報告がされています。その研究では、膝蓋上嚢膝蓋下脂肪体半月板ACLは疼痛レベルが高いとされています。実際の臨床では、膝蓋下脂肪体半月板の圧痛所見膝蓋上嚢の滑走不全を伴う拘縮由来の膝関節痛は多くみられます。

半月板の血行

半月板はその血行動態により、外側1/3をred-red領域、中間部をred-white領域、内側部をwhite-white領域に分けられます¹⁵⁾(図4)。

図4 半月板の血行
15)より画像引用

red-red領域には、血行と神経繊維および神経終末、また機械受容器であるルフィニ小体、パチニ小体、ゴルジ腱器官が存在します¹⁵⁾¹⁶⁾。

red-white領域は、red-red領域とwhite-white領域の移行部になります。

white-white領域には、血行および自由神経終末はなく、関節液からの栄養に依存しています。

半月板由来の疼痛は、半月板自体の損傷による疼痛だけではなく、半月板の引っ掛かりによる損傷茎部の関節包の引っ張りも原因⁴⁾として考えられています。

半月板の運動学

【膝関節屈伸時の半月板の移動量】
半月板は膝関節屈曲0〜90°の範囲で、非荷重下より荷重下の方が移動量が大きい¹⁷⁾ことがわかっています(図5)。

内側半月板の移動量¹⁷⁾
【荷重下】
前節部:後方へ7.1mm
中節部:外側へ3.6mm
後節部:後方へ3.9mm
【非荷重下】
前節部:後方へ5.4mm
中節部:外側へ3.3mm
後節部:後方へ3.8mm

外側半月板の移動量¹⁷⁾
【荷重下】
前節部:後方へ9.5mm
中節部:外側へ3.7mm
後節部:後方へ5.6mm
【非荷重下】
前節部:後方へ6.3mm
中節部:外側へ3.4mm
後節部:後方へ4.0mm

図5 半月板の膝関節屈曲0〜90°までの移動量
左:荷重下 右:非荷重下
(Medial:内側半月板、Lateral:外側半月板)
17)より画像引用

半月板は、膝関節伸展運動では前方移動し、屈曲運動では後方へ移動することを覚えておきましょう。

【下腿回旋時の半月板の移動方向】
脛骨の回旋運動方向に対して、半月板は逆方向へ移動します。これは、大腿骨によって引っ張られる他動的なものと能動的因子が存在する¹⁸⁾とされています(図6)。

【下腿回旋時の半月板の移動方向】¹⁸⁾
下腿内旋時、内側半月板は前方へ、外側半月板は後方へ移動します。
下腿外旋時、内側半月板は後方へ、外側半月板は前方へ移動します。

図6 下腿回旋時の半月板の移動方向(右膝水平面)
左:外旋 中央:ニュートラル 右:内旋
18)より画像引用

半月板インピンジメント由来の膝関節痛は、上述した半月板の運動が制限を受けることで、大腿骨顆と関節窩の間に挟み込まれて生じるとされています(図7)。

図7 半月板インピンジメント
https://www.capetownorthopaedic.co.za/clinical-and-arthroscopic-diagnosis-of-meniscal-lesions.phpより画像引用

そのため、まずは膝関節運動に伴い半月板がどう動くのが正常なのかを把握しておきましょう。

MEMO 前十字靭帯と半月板の関係
半月板は膝関節の前後方向の安定性に寄与しています。前十字靭帯損傷による不安定性が見られるケースでは、内側半月板への負荷が1.5〜3.0倍まで増加する¹²⁾とされています。

半月板の前方・後方移動のメカニズム

半月板の運動は膝関節運動や連結する組織の牽引によって引き起こされます。

半月板の前方移動メカニズム⁹⁾¹⁸⁾

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