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頭頸部の理解と臨床評価・アプローチ

割引あり

はじめに

このnoteは、誰にでもお役に立てるわけではありません。
ですが、以下に一つでも当てはまる理学療法士の方は、読んでみてください。

✅頭頸部の関節構造と運動と1からしっかりと理解したい
✅めまいや頭痛と頭頸部構造との関連性を理解したい
✅頸部の運動連鎖を臨床評価に活かしたい
✅頸部痛に対する評価アプローチを学びたい

臨床力を高めるいちきっかけとなれば幸いです。

Rui

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頸椎の骨・関節構造

頸椎は7個存在し、第1〜2頸椎を上位頸椎、第3〜第7頸椎を下位頸椎と呼びます(図1、2)。

図1 頸椎の骨構造①

図2 頸椎の骨構造②

上位頸椎(環軸関節)の構造

上位頸椎である環椎と軸椎によって環軸関節が構成されます(図3)。

図3 環軸関節

環軸関節には椎間板はなく、滑膜関節と靱帯により連結¹⁾されます。正中環軸関節外側環軸関節があります。

正中環軸関節²⁾は、環椎の歯突起窩軸椎の歯突起前面の間、環椎横靭帯軸椎の歯突起後面の間で構成されます(図4)。

図4 正中環軸関節

外側環軸関節²⁾は、環椎の下関節面軸椎の上関節面で構成されます(図5)。

図5 外側環軸関節

環軸関節のおおむねの可動域³⁾は、屈曲5°、伸展10°、側屈ごく小範囲、回旋35〜40°とされています。また、頚椎回旋運動において可動域の6割を分担する¹⁾とされています(図6)。

図6 頸椎の各椎間関節間の可動域
(一部日本語改変)
4)より画像引用

環軸関節(外側環軸関節)の関節面は、平坦かつ水平面に近い向きであり、軸回旋の範囲を最大にする設計³⁾となっています(図7)。

図7 外側環軸関節の関節面

下位頸椎の構造

下位頸椎には鉤状突起があるのが特徴(胸椎や腰椎にはない)として挙げられます(図8)。

図8 頸椎の鉤状突起
(前方より観察)

これにより下位頸椎には、左右の椎間関節だけでなく、鉤状椎体関節(Luschka 関節,ルシュカ関節)が存在します(図9)。

図9鉤状椎体関節
(前方より観察)

鉤状椎体関節は、椎間の回旋側屈の安定性に寄与している¹⁾とされています。

下位頸椎椎間関節の関節面は、水平面に対して45°〜60°の傾斜がある¹⁾³⁾⁵⁾⁶⁾と報告されています(図10)。この角度は各椎体で異なり、C5椎体で最小、C7椎体で最大¹⁾⁷⁾とされています。

図10 下位頸椎椎間関節関節面の傾斜角度

頸椎の運動学

頸椎のカップルドモーション

カップルドモーションとは、ある運動に随伴して生じる異なる方向への運動のこと¹⁾⁸⁾です。脊柱の運動(カップルドモーション)では、側屈時に回旋を、回旋時に側屈を伴います。

頸椎の運動では、側屈時に上位頸椎は反対側へ回旋し、下位頸椎は同側へ回旋します(図11)。回旋時に上位頸椎は反対側へ側屈し、下位頸椎は同側へ側屈します(図12)

図11 頸椎の左側屈時のカップルドモーション
1)より画像引用

図12 頸椎の左回旋時のカップルドモーション
1)より画像引用

上位頸椎の反対側への側屈や回旋は、翼状靱帯の牽引⁹⁾によって引き起こされるとされています。

頸椎椎間関節の関節包内運動³⁾

頭頸部屈曲時の関節包内運動では、環椎後頭関節(頭部)前方に転がり、上位椎体の下関節面は下位椎体の上関節面に対して上方および前方に滑ります(図13)。

図13 頭頸部屈曲時の関節包内運動
3)より画像引用

頭頸部伸展時の関節包内運動では、環椎後頭関節(頭部)後方に転がり、上位椎体の下関節面は下位椎体の上関節面に対して、下方および後方に滑ります(図14)。

図14 頭頸部伸展時の関節包内運動
3)より画像引用

頭頸部回旋時の関節包内運動では、環椎後頭関節(頭部)はわずかに同側へ転がります。椎体の下関節面は、同側では後方かつわずかに下方に滑り、対側では前方かつわずかに上方に滑ります(図15)。

図15 頭頸部回旋時の関節包内運動
3)より画像引用

頭頸部側屈時の関節包内運動では、環軸関節は同側が後方に、対側が前方に滑ります。椎体の下関節面は、同側では下方およびわずかに後方に滑り、対側では上方およびわずかに前方に滑ります(図16)。

図16 頭頸部側屈時の関節包内運動
3)より画像引用

頭頸部の安定性⁵⁾

環椎後頭関節の安定性は、「第1のてこ」によって供給されます。
頭部の重心は、外耳孔の前上方に位置します。頭部重心から環椎後頭関節まで垂直延長した位置が荷重点となり、頭部伸筋群の付着部である力点となります(図17)。

図17 頭頸部の安定性
5)を参考に作成

抗重力位では、頭頸部に常に屈曲の外的モーメントが加わるため、頸部伸筋群の筋活動による内的モーメントを発生させて頭頸部の安定性を保っています。

椎骨動脈の血流と頸椎アライメントの関係性

椎骨動脈は、鎖骨下動脈から分岐後に第6頸椎横突孔から入り上行し環椎の横突孔を出て大後頭孔を通り頭蓋内に入ります(図18)。

図18 椎骨動脈の走行

椎骨脳底動脈循環不全(Vertebrobasilar Insuffi- ciency:VBI)の患者では、健常者よりも頸椎の対側回旋によって頭蓋内の椎骨動脈血流速度が低下する¹⁰⁾と報告されています。

健常者において、頸椎中間位に比べて最大回旋位で対側椎骨動脈の血流速度が低下した¹¹⁾との報告があります。同研究において頸部最大右回旋で右椎骨動脈の血流増加を認めたとされています。

椎骨動脈とめまいの関連について、めまい時は椎骨動脈血流速度の左右差が大きく、めまいが改善するとその左右差は是正される¹²⁾と報告されています。

🎥【模型解説】椎骨動脈の血流と頸椎アライメントの関係

椎骨動脈の循環評価(リスク管理)

【Barre Leiou Sign(バレ・リーウー徴候)】¹³

検査方法
 対象者は端座位となります。頸部を左右に回旋させて15秒から30秒保持します。検査者は、その間に対象者の意識レベルや眼球の動きを注視します。
判断基準
 椎骨動脈不全症状(めまい、複視、眼振、言語障害、嚥下障害、意識障害、吐き気、むかつき、頭重感・頭痛、 蒼白・冷や汗など)がみられたら陽性です。
結果の解釈
環軸椎部の回旋方向と反対側の椎骨動脈の血流が減るため、虚血性症状が誘発されます。

【Maigne’s Test(マイグネテスト)】¹³

検査方法
 対象者は端座位となります。頭頸部を伸展・回旋させて15秒から45秒保持します。検査者は、その間に対象者の意識レベルや眼球の動きを注視します。回旋は左右両方向で実施します。
判断基準
 椎骨動脈不全症状(めまい、複視、眼振、言語障害、嚥下障害、意識障害、吐き気、むかつき、頭重感・頭痛、 蒼白・冷や汗など)がみられたら陽性です。
結果の解釈
環軸椎部の回旋方向と反対側の椎骨動脈の血流が減るため、虚血性症状が誘発されます。

頭部前方位姿勢と障害

頭部のアライメントで最も評価する機会が多い一つに、頭部前方位姿勢Forward head posture(FHP)が挙げられます。

頭部前方位姿勢は、18歳以上の成人および高齢者において頸部痛との関連性¹⁴⁾が示されています。また、片頭痛痛¹⁵⁾や顎関節痛³⁾との関連性を報告する文献や書籍も見られます。

頭部前方位姿勢の特徴

頭部の前方突出は、上位頸椎が伸展し下位頸椎が屈曲する³⁾動きになります(図19)。

図19 頭部の前方突出に伴う頸椎運動

つまり、頭部前方位姿勢では上位頸椎は伸展位、下位頸椎は屈曲位となります。

頭部前方位姿勢で上位頸椎が伸展位で維持されることで、後頭下筋群(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)(図20)は短縮¹⁶⁾しやすく、大後頭神経の絞扼によって頭痛を誘発する⁵⁾と考えられています。

図20 後頭下筋群の解剖
17)18)より画像引用

頭部前方位姿勢のマッスルインバランス(上位交差性症候群)

頭部前方位姿勢は、ヤンダ(Janda)の提唱により上位交差性症候群¹⁹⁾²⁰⁾と呼ばれます。

上位交差性症候群は、後上方の僧帽筋上部繊維と前下方の大胸筋の緊張前上方の頸最長筋などの頸屈筋群(深層)と後下方にある肩甲骨下部を安定化させる僧帽筋中部・下部繊維、前鋸筋の筋力低下により生じる¹⁹⁾とされています(図21)。

図21 上部交差性症候群のマッスルインバランス

頸部痛のサブグループ化(分類)に基づく介入

近年、疼痛などの症状に対して、患者をサブグループ化(分類)して特異的に介入を行うことが重要視されています。

頸部痛にする分類法のひとつTreatment Based Classification(以下,TBC)をご紹介します。

TBCは、評価によって1.Mobility、2.Exercise and conditioning、3.Centralization、4.Headache、5.Pain control の5つに患者を分類²¹⁾²²⁾します。

実際の分類方法は、TBCのアルゴリズムに則り行います(図22、図23)。

図22 TBCのアルゴリズム
21)より引用

図23 TBCの各分類の特徴
21)より引用

アルゴリズムに含まれるNDIスコアは、国際的に最も多く使用されている頸部痛用の自己記入式の質問票日本語版の信頼性や妥当性も報告²³⁾されています。

これらの分類法を活用したり、red flagsyellow flagsの理解が治療方針を決めていく上で重要となります。

頸部の臨床評価

頸部の触診

【頸椎棘突起の触診】

頸椎棘突起の触診では、まずは隆起が最もわかりやすい第2頸椎棘突起および第7頸椎棘突起の位置を確認します(図24)。

図24 第2頸椎棘突起および第7頸椎棘突起

第2頸椎棘突起は、外後頭隆起から軽く圧迫をしながら下方になぞるように進めるとはじめに触れられる骨隆起になります(図25)。頸椎上部の中では最も後方に突出しているため触知しやすいです。

図25 第2頸椎棘突起の触診方法

第7頸椎棘突起は、頸部屈曲位で多くの場合に最も後方に隆起します(図26)。
ただし、骨形状の個人差により第6頸椎および第1胸椎との鑑別が難しい場合もあります。

図26 頸椎屈曲位のレントゲン画像(第7頸椎棘突起)

第3〜6頸椎棘突起は、第2頸椎棘突起から下方へ、または第7頸椎棘突起から上方へひとつずつ骨隆起を辿っていくことで位置を確認することができます。
項靭帯の緊張を避けられるため、頸部軽度伸展位の方が触れやすくなります。

🎥頸椎棘突起の触診

【乳様突起の触診】

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