ファル子の部屋/ゲスト・グランシュヴァリエ/第一二六九回放送分より抜粋

るーるる🎵るるる🎵
るーるる🎵るるる🎵
るーるーるー🎵
るーるるー🎵

─中略─

ららら🎵らーらーらーらー🎵
らーらー🎵
らーらららー🎵

みなさんいかがお過ごしでしょう?こんにちは。スマートファルコン、ファル子でございます。

さ、今日はですね、現役時代には高知総大将として全国を駆け巡り、日本に高知あり、高知にグランシュヴァリエありと、その名を大きく轟かせました、グランシュヴァリエさんに起こしいただいてます。はい。ようこそ起こしくださいました。いらっしゃいませー。

どうもこんにちはー。ご無沙汰しておりましたー。

うふふ。

うふふ。

中山のマスターズ大会以来ですよね。何年前でしたっけ?

あれ、え、3年経ちましたっけ?

あはは......もうそこら辺があやふやだもんね。お互いね。

そうですねえ。

あれ?あなた去年で還暦?

いえいえ、もう一昨年ですよ。ファル子さんだってそうでしょ?同い年でしょ?あれ?違う?

(笑)確かに。それじゃもう、とっくに2人揃って大台に乗ってたってことなのね(笑)

あはは(笑)

乗っちゃったら、こうなるのよね(笑)

そうそう。もう今朝のご飯のことも思い出せないの(笑)

あらやだ私もそうなのよ。だから、知らない間に同じメニュー2回も食べてたりするの。信じられる?(笑)

何それ聞いたことない。外で食べて、また家で同じの作って、っていう?(笑)

それを食べてる途中で気付くんだから、やんなっちゃうわよね。ホント(笑)

あなたはどうでもいいわよ。やんなっちゃうのは旦那さんの方でしょ。あなたは覚えてなくても旦那は絶対覚えてるわよ(笑)

ああ、そうか(笑)

もう、納得してんじゃないわよ(笑)

─中略─


さて、このファル子の部屋ではですね、毎回、お越しいただいているお客様に因んだレースを紹介しているんですが。今回はですね、第23回マイルチャンピオンシップ南部杯。こちらをご覧いただきます。

なんか、すっごい恥ずかしいんですが(笑)

若い時の映像ってそうですよね(笑)

うわぁ、シワがない。信じられない(笑)

(笑)それでは当時を振り返りながら、お話をいただきたいと思います。皆様もどうぞお楽しみください。VTRスタート。


"スタートしました。12名揃った飛び出しを見せました──"

スタート綺麗ですよね。

ええ、この日の馬場発表は稍重だったんですが、流石というか、全員綺麗に決めてきましたよね。あ、慣れてるんだな、重い砂の上をバシバシ飛ばしていくんだなっていう、そんな感じのことを思って。それでここで気が引き締まった瞬間でもありましたね。


"──この集団には、グランシュヴァリエも加わりました"

この先行策は最初から?

それについてはいろいろあって......最初から先行しようかな、という気持ちがなかったわけじゃないんですけども。

うんうん。

始まってみたら、びっくりするくらいノーマークだったんですよ。私が(笑)

あー(苦笑)

めっちゃ混んでる電車の中で、そこだけシートが空いている、みたいな。

そんな感じになるかー。

ファル子さんにはわかんないでしょ、この感じ。逃げ脚速いから。

かもね。確かにね。

なんだろこの人たち?甘い走りしてんなぁって思ったところで、あ、私は舐められてるんだ、って思って。ぱっと見大外ではありますけど、私の感覚からしたらそう悪くはない位置でしたから。それで先行したってのが、ホントのところですかね。

そうだったんだ。

やっぱりわかんないでしょ、逃げてると(笑)

うん、わかんない(笑)

後続はねぇ、一生懸命考えて走ってんのよ(笑)

なんかすみません、速くて(笑)

うわムカつくわー(笑)

"第三コーナ回りまして残り600を切りました。依然前の各馬は固まった状態──"

ここですけど、位置的にはどう?

結局この距離まで大きく外を回らされてきましたけど、みんなが内に入って行ったんで、視界は悪くなかったんです。それは私にとって大きなプラスでしたね。ゴール前までは外に出ようとも思ってましたし。ここもベストではないですけど、この位置から行ってやろうっていう気持ちにはなれましたね。

そうなんだ。

それで4コーナーに入って──ここまでくるともう、狙い通りなんじゃない?

そうですね。やることはやったんで。あとは走るだけ、っていう。

そして──ここからが見どころです。

"外から追ってくるグランシュヴァリエ!オーロマイスター!オーロマイスター!リードは2馬身から3馬身!二番手にエスポワールシチー!オーロマイスターゴールイン!"


ここがねぇ......本当に凄い競り合いでしたよね。

そうですねぇ。ここで私が一瞬前に出るんですけど、この2人がグイグイ伸びてくるじゃないですか?まあ、スタミナを計算して内に入ったんでしょうから、向こうとしてはここからが勝負どころですよね。

ですねぇ。

多分ねぇ、『誰だコイツ?』って思ったんだと思いますよ。

えー?何それ?(笑)

こんな訳のわからんやつに負けるわけにはいかん、と(笑)

いやいや、訳はわかるでしょ(笑)

まあ......なんでしょうね。中央の意地ってところなんでしょうね。この差し返しはねぇ......私も凄いなって思いましたもん。

特にこのエスポワールシチーさんの、この伸び方はねぇ。確かにこう......『やらせはせんぞ!』っていう感じ、しますよ。確かにね。

エスポワールシチーさんもね、当日1番人気だった訳じゃないですか。でも、オーロマイスターさんがもうこの位置でしょ?おまけに私が追い上げて来てるから......

なるほど。それが......中央の意地かぁ。

とは言ってもね、なんか変だと思いません?変じゃないですか?何としてでも中央だけで1-2-3フィニッシュせにゃならん、みたいな?そんな気持ちで地方に来る方がどうかしてるんですよ。そんなにライブを独占したかったら、ソシャゲでもやってなよって話ですよ。バーディーバーディーなんかもう何処走ってんだか。

おおお、辛辣ぅ(笑)

でも、そんなんばっかだったじゃないですか。当時の地方重賞なんて。中央の人たちが小銭が足りないからって地方にわざわざ稼ぎに来てる、みたいな。

ああもうこの人止まんないわ(笑)

エントリーフィー払ってまで人ん家の庭に入って来てるくせに、「胸ぇ貸してやるからいいレースしましょうねコラ」みたいな?走る前からドヤ顔で。

いやいやいや(笑)

このレースもね、地方の私が3着に入ったところで中央に一矢報いたみたいな感じに取られることが多いんですけども、その矢はがっつり肩甲骨辺りを貫いてますからね。そりゃ心中お察しいたしますってなもんですよ(笑)

言う言う(笑)

そんなんだからもう、ライブの楽屋が大変で大変で。

そうだったの?

だって、中央の3人でやる歌と振り付けしか仕込んできてないって言うんですもん。そんなに中央が偉いのかよって話になるじゃないですか。

うわあ。

『じゃあアレか?中央が来たら、うちら地方は道を開けなきゃいけないのか?土下座してお出迎えせにゃならんのか?』って。当時そこまで言いましたもん。楽屋で。

言ったの?

言いました。

そしたら?

気持ちを切り替えるところまでいったかどうかは分かりませんけども、その後は打ち合わせも纏まりましたよ。向こうも一応はプロだったってことじゃないですかね。

そんなに大変だったのねー。

大変も何も......だってね、そんな調子だから私が仕切るんですよ?選曲も振り付けもパート分けも。こっちだってね、デビューこそ中央ですけど、この時はもう高知背負って来てますから。半端なことはやってられませんよ。格好つかないじゃないですか。

そこら辺がホント、シュヴァリエさんらしいわね(笑)

もうね、3位入着の実感なんて全然なかったですよ。翌日の朝刊見てようやくですもん(笑)


─中略─


引退するまでの間、1番印象に残ってる選手って誰かいる?

うーん、それはね......レースの相手じゃないんだけど、ハルウララちゃん。

え?走ってないのに?

はい──あのね、走ってはいるんです。いろんな経緯があって、一緒に練習したことがあるんですよ。

中央で?高知で?

高知。でも高知トレセンじゃなくて。あの、知ってるかな?ビゼンニシキさんの所。

あ、皇帝塾か。今じゃお嬢さんが跡を継がれて。超名門だよね。

そうそう。そこで会ったんですよ。ほんとに偶然。その時のウララちゃんは、もう中央に行ってましたね。

どんな印象でした?

彼女はねぇ......なんでしょう、こう......一言では言えないんですが、本当に不思議な娘でしたねぇ。

確かに。

ファル子さんは彼女と走ってましたっけ?

いや、私も相手したことはないの。だってホラ、あの娘芝に行ったでしょう?

それだよねぇ。

ダートを走って、その後しばらく芝に行って。で、またダートは走るけど、それでも一回か二回じゃない?おまけに大井には来てくれなかったし。まあ、私の方が先に引退したってのもあるけど。

まあ、ウララちゃんのトレーナーもね。管理厳しそうでしたからね?

それで?皇帝塾では何が?

その時はウララちゃん以外にも3人、中央から来てて。そのメンバーに更にトレーナーたちまで加わって、一日中ゼロヨンをやったんです。

一日中?バカじゃないの?

あはは(笑)

脚壊すわよそんなに走ったら。

若さって怖いわよねー(笑)

でも、出来ちゃうんだ。

そうなんです。それが出来ちゃうのが、ウララちゃんの不思議なところでもあるんですよね。気持ちがブーストするっていうか、一緒に走ってると、どんどん楽しくなってきて。それこそランナーズハイみたいな状態になるんです。

へぇー。

私を交えて6人いたんですね、その時に。で、その6人で総当たりを3回だったから、一人あたり15回走ることになるんですよ。

簡単に言って地獄だわよね。

しかもウララちゃんは、その日までにゼロヨンの経験がなかったの。

そうなの?

そう。でもね、彼女の凄いのは、その場でガンガン成長していくんですよ。回数を重ねていくうちに、それが傍目からもわかるくらい、レベルが上がっていくんです。

それは凄いね。

うん。それでね......1回目が終わって、総当たり3回だから、次の2回目の時に彼女とまた当たるじゃないですか。そうすると、もう隣に立っててわかるんですよ。その時点でもうオーラが違うんです。「あれ?」っていう違和感が既に出来上がってる。その後また別の人との走りが続いていくでしょ?で、それをまた見ていくうちに、今度はその違和感の正体に気づくんですよ。彼女は、単にその場で急成長したんじゃなくて、そもそもが強いんですよ。そういうウマ娘の新しい引き出しがどんどん開いていくから、急成長したように見えるんであって、ウララちゃんはそもそも強かったんです。3回目には、それが確信に変わるくらいに思い知らされましたね。

あー、当時に走りで関わってた人は、今皆んなそう言ってるよね。あなたもそう思ってたんだ。

そうです。でも、こう......当時からそれを言う人は、不思議と少なかったですね。選手の側でそれを堂々と口に出してたのは、当時はタキオンさんと会長さんくらいだったんじゃないですか?トレーナー陣の目線からしたらもっと明確だったとは思いますが、それもまた、自分とこの選手の手前、それをそのまま口には出せないっていう気持ちがあったんじゃないかと思いますよ。

まあそうか。そりゃそうだよねぇ。

私、今でも覚えているのはね。その日、彼女に言われたんです。「私、シュヴァリエさんの走り方が好き。シュヴァリエさんは走るのが大好きなんだってのが伝わってくるから」って。

まるでトレーナーみたいね。じゃなきゃ親でしょ(笑)

そうね(笑)。私は親にもトレーナーにも言われたことなかったですけどね。そんなことは(笑)

え?じゃあもしかして、あなたが高知に行ったのって、その言葉がきっかけだったりするの?

実はそうなんです。私ね、その後中央に復学するんですけど、いくらもしないうちに屈腱炎になって。中央にはいられなくなっちゃって。

そうよね。

でもね、私はまだまだ走りたかったの。だって、私が一度中央から離れたのは、もっと走るのが大好きなウマ娘たちと勝負したかったからなんだもの。

えーと、それはどういう気持ちなの?

そうですねぇ......当時の私の気持ちを今の私の言葉で整理するとしたら、自分の内面とばかり向き合っているような人たちとは、もう走っていたくなかった、ってことんですよ。レースって、相手があって初めて成立するものじゃないですか。それなのに、中央にいるレーサーは、まるで対戦相手を無視して走っているような、そんな気がしたんです。

そこを具体的に言うとしたら?例え話でもいいんだけど。

あー、なんだろう......その、レースっていうものを、それまでやってきたトレーニングの答え合わせの場所としか思ってない、みたいな?

あぁ、そうきましたか。

そんなの後ろ向きじゃないですか。気持ち的に。そういう人たちをね、走るのが好きか嫌いかっていう天秤にかけるとしたら、少なくとも絶対に『走るのが好き』な方の皿には乗ってないんですよ。伝わるかなコレ。

大丈夫。わかるよ。

別の言い方するんだとしたら、あの人たちは常に『正解の走り』を探しているんですよ。レースの中で。その為に苦労と努力を重ねている。それはそれで凄いことなんだけど、でも、正解と勝ち負け、そして相手と自分との力関係って、そこまでストレートに結びつかないと思うんですよ。不安定というか。不確定要素が多いじゃないですか。馬場とか天気とか風とかがみんなに平等に影響を与えて、そんなみんながまたお互いに影響を与え合って......っていう。そこまで厳密じゃないですよ。『勝負は水物』って言葉がありますけど、結局は、何が起こるかわからないのが、レースなわけでしょ?

うんうん。

にもかかわらずですね、それを今までにやってきたトレーニングの答え合わせだとしか思ってないんだとしたら、それはもうレースじゃないんですよ。私に言わせれば。あの人たちはね、負けるっていうことが心底恐ろしくてたまらないんですよ。だからトレーニングするんでしょうけど、レースの最中となるとそれ以外のことを考えてないんですよ。

それっていうのは、答え合わせ?

そう。レースの最中の、ほんの僅かな時間の中で見つけられる可能性に、まるで気づいてないんです。まるで空白。からっぽなんですよ、あの人たちのレースは。私にはついていけなかった。だから休学したんです。

なるほどねぇ。

もう一つありますよ。勝つか負けるかの話だけをするんだったら、誰にだって5割は分があるのに、そこを無視して走ってる。負ける確率が50パーあるんですよ?2回に1回は負けるんですよ?統計学的にも避けられないんですよ、それはもう絶対に。だったら負けも受け入れないと。

珍しく難しいこと言うね(笑)

ははは(笑)

うん。それで?

別に私はね、「あなたたちはどうせ走るのが嫌いなんでしょ。我慢して走ってるんでしょ」とは言ってませんよ。そんなウマ娘はいませんからね。でもね、そんなにも勝ちたいんなら、負けて泣くほど悔しいと思うんだったら、尚更負けることも辞さない気持ちでいないと、自分の気持ちと釣り合わないですよ。負けることを怖がっているようじゃ、自分の気持ちに押しつぶされちゃいますよ。そんなんだったら、走るのが好きだとは言えないんじゃないかな。

その目線で見ると、ウララちゃんは──

ええ強いです。本当に強いですよ、彼女は。

で、話を戻すようですけど......そのウララちゃんにああ言われたことが、高知に行ったきっかけなんですね?

はい。ウララちゃんがあれだけ走れた理由の一つには、そこが高知だったっていうことも大きいと思うんです。高知って、当時は走れなくなったウマ娘の流刑地とか、酷いこと言われてましたよね。でも裏を返せば、今まで通りに走れなくてもまだ走りたいっていう人たちがたどり着く場所なんだとも思うんですよ。行ってみたらよく分かりました。ファル子さんは、高知で走ったことありました?

いや、ないのよ。佐賀と名古屋は行ったけど、そこまでかな。

行けばよかったのに。

そうなの?そんなに居心地が良かったんだ?

あそこにいる人はね、負けることを怖がってない。レースの中の数分、数十秒の中で起こるほんの僅かな可能性をみんなが信じてる。誰も後ろを向いてない。それだけ走りたいし、勝ちたいと思ってる。私にああ言ってくれたウララちゃんがいたところなんだから、きっとそうなんじゃないかなと思って移籍したんですが、もう、その通りでしたね。みんな物凄くピュアで、物凄くタフなんです。

なるほどね。貴重なお話ありがとうございます。

いえいえ。ちょっと長く喋りすぎたかな?(笑)

さっきからディレクターがカンペ出してるんだけどね、もうスタジオの使用許可時間がいっぱいいっぱいなんだって(笑)

えー?ダメじゃん私(笑)ごめんなさい。あはは(笑)


るーるる🎵るるる🎵
るーるる🎵るるる🎵
るーるーるー🎵
るーるるー🎵

─中略─

さて、名残惜しい限りですが、この通りお別れの音楽も鳴ってしまいました。最後に、グランシュヴァリエさんのもう一つのメモリアル映像、こちらは優勝レースですね。第43回高知県知事賞の様子を皆さんにお楽しみ頂きながら、お別れしたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

ららら🎵らーらーらーらー🎵
らーらー🎵
らーらららー🎵


グランシュヴァリエ
〇〇年デビュー ◎◎年引退

生涯成績74戦17勝[17-10-6-41]

主な勝利レース
高知県知事賞
二十四万石賞
ファイナルグランプリ

中央でデビュー戦を勝利するも、その後屈腱炎を発症。主戦場を高知へと移した後は、各地の交流重賞に積極的に参加。第23回マイルチャンピオンシップ南部杯3着など、数々の名勝負を繰り広げる。高知競馬場では「赤い彗星」「高知総大将」の二つ名で知られ、高知競馬場の象徴となって一時代を築き上げた。

現役引退以降は自身の経験を活かし、屈腱炎のままレースへと挑むウマ娘達への支援団体を設立。その代表を務める傍ら、ウマ娘マスターズ競技の常連として、数々のレコードを保持している。

好きな食べ物
コロッケ。肉うどん。


次週のファル子の部屋
お客様:スモモモモモモモモさん
どうぞお楽しみに

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?