見出し画像

高断熱だけでは省エネは決まらない ~パッシブデザインとエアコン運転スケジュール~

こんにちは。1985理事の木村です。
夏が近づいてきました。建築物省エネ法も改正されることが閣議決定し、これから益々高断熱化が進んでいくものと期待しています。ただし、省エネは高断熱だけでは決まりません。パッシブデザインの設計手法を基にした、南の窓を主に多く配置を行う冬の太陽熱利用(日射取得)と太陽熱をルーバーなどの外付け付属物や庇などの設置により夏の太陽熱を遮る(日射遮蔽)によっても省エネ性能は大きく変わってきます。下記は高断熱によって省エネは決まらないという私が作成した資料です。

 使用ソフト:エネルギー消費性能計算プログラム
省エネ地域区分:6地域の場合  

ただ単に高断熱にしたり、全館空調や連続暖冷房で快適にし、太陽光発電をつけて省エネという大味な家が増えないかと危惧しています。モノで省エネにするのはある意味簡単な事です。それも大事ですが、パッシブデザインの設計手法を利用して、一定レベルの断熱を確保した上で、日射取得と日射遮蔽を行うことが設計者としてはとても価値のある事だと考えています。

今回、事例にするのは、当社の女性設計の自宅です。(愛知県北名古屋市)

1階

2階

UA値は0.39W/㎡k ηAC0.8 ηAH2.5というバランスの取れた住宅です。
1階はLDKを中心とした主たる居室の床面積の20%以上を窓にしています。1階和室の前は、サンルームとして冬の昼間の太陽熱を集め、夜LDK空間に分配。2階は、ご夫婦が一番長く住む主寝室を南に配置し、その隣にはインナーバルコニーを配置。蓄熱床にして冬の太陽の日射熱を集めて、寝室や子供室に昼間貯めた熱を夜に分配する設計をしています。

このお宅をホームズ君と呼ばれる省エネ計算ソフトに入力して、計算してみました。
目標室温と評価時間は下記の通りです。

以下が結果です。

暖房時はLDKでは18℃未満が3%、寝室でも18℃未満が2%となりました。

注目すべきは、2階のトイレです。

16℃未満が何と0%となりました。
これは、プランの部屋配置によっても室温が大きく変わる事を意味しています。如何に、暖冷房室に水廻りを近づけるかは、ヒートショック対策として有効な事が分かります。

この設定での年間暖冷房負荷の結果です。

暖房負荷が887kwhで、注目すべきは昼間の窓からの日射熱が4913kwhに対して、窓からの熱損失が2083kwhという点です。実に2830kwhの熱を窓で貯金しているのです。いかに日射熱取得が大切なのかが分かります。

次に冷房期です。

冷房負荷が2181kwhとなりました。南に窓が多い為、増えてしまうので、ルーバーなどの日射遮蔽をすることがとても重要になります。

一次エネルギー消費量は、

という結果。夏の方がエアコンの効率が良いので、一次エネルギー消費量は冷房の方が少なくなります。

光熱費も下記のようになりました。


という事で、バランスの良いパッシブデザインの設計をすることがとても重要なのです。さらに、エアコンの運転スケジュールを適切にアドバイスするためのシミュレーションもとても重要で、建物と設計のパフォーマンスを最大限に引き出すことができます。

今現在この住宅はHEMSにより、実際の冷暖房スケジュールとエネルギー消費量を測定しています。シミュレーションと実測を検証しさらにいい家を提供していきたいと思います。
 








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?