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#16生命表「完全」「標準」「簡易」の違い

平均寿命でニュースになる厚生労働省が公開する生命表だが、生命表には、厚生労働省の「完全生命表」「簡易生命表」と日本アクチュアリー会が公開する「標準生命表」がある。

これらの違いについて紹介する。

1 「完全」と「簡易」の違い

簡単に言えば、「完全」は確定版、「簡易」は速報版である。完全生命表は、国勢調査による人口と人口動態統計による死亡数、出生数をもとに5年毎に作成されるが、簡易生命表は、人口推計による人口と人口動態統計月報年計(概数)による死亡数、出生数をもとに毎年作成する。

完全生命表は、2017(平成29)年3月1日に公開されたが、2015(平成27)年のデータを基に作成されている。

2 「標準」生命表とは

標準生命表は日本アクチュアリー会が算出している生命表で、生命保険の死亡率に使用されている生命表である。

最新の「標準生命表2018」は、2008年、2009年、2011年のデータをもとに作成されており、2018年4月から適用されている。

3 保険会社の利益

保険会社には、死差益、利差益、費差益がある。

死差益:予定している死亡率より実際の死亡率が低いと、保険金を支払う件数が減るため、差額が利益となる。

利差益:予定している運用利率より一切の利率が高いと、収益が増えるため、差額が利益となる。

費差益:予定している経費より実際の経費が少ないと、収益が増えるため、差額が利益となる。

死差益の計算元となる標準生命表は各保険会社が共通して使用しているため、保険料の違いは、経費の違いと考えられる。

4 完全生命表と標準生命表の差

グラフは、20歳から50歳までの死亡率で、50歳時点の死亡率は0.266%である。ちなみに、人口10万人当たりの人数で50歳時点の生存数は96,651人なので、50歳までの死亡率は0.03349%となる。

この確率に対して保険料を支払っている。もちろん万一のことであり、亡くなった場合は金銭的負担も増えるため心配な気持ちはわかるが、退職後の生活資金をいかに貯めるかという大きな課題を抱えているなか、死亡保障に多くの保険料をかけてもいいのか、という疑問がある。万一のときには今の生活を無理して維持しようとせず、支出規模を縮小させることを考えておけば、保険会社が提案する死亡保障額通りに加入しなくてもいいのでないだろうか(もちろん、保険料の支払いが負担ではない家庭は心配の度合いに応じて支払ってもよい)。

話を戻すと、完全生命表(グラフ・青)と同じ推移で保険金を支払えば、死差益は発生しないことになる。しかし、もともと完全生命表より高い死亡率を設定している標準生命表を基準にしているため、保険金の支払いが標準生命表と同じでも死差益を得ることができる

(参考):公益社団法人日本アクチュアリー会「標準生命表」


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